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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
さまよえるガム

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555 オーガキラー27

「お嬢、突破しますよ」

「うむ」

「あ、お嬢、車内がカレー臭くなるといけないので、カレー鍋を守りながらお願いします」

「うむ。……む? ゴズ、それは違うくないか?」

「お嬢のカレーですよ。それにお嬢ならカレーを守りながらでも余裕でしょう?」

「うーむ。とりあえず、ゴズがそんな言葉でうちを誤魔化せると思っているということは分かった」

「さ、お嬢行きますよ」


 オウカとオリハを乗せ、ゴズが運転するクルマが動く。


 そのクルマがすぐに武装した集団に囲まれる。


「そこのクルマ、止まれ!」


 バイザー付きのヘルメットにゴテゴテとしたプロテクターをつけた防護服を身につけ、手に透明なシールドと警棒を持った連中だ。支給されたものなのだろう、どいつも同じ格好をしている。


「お嬢、お嬢は連中が何故、オリハを狙うか気にならないんですか?」

「うむ。どうでも良い。立ち塞がるというなら、それを噛み千切る。うちらと敵対するというなら、叩き潰す。それだけだ」

「どうして、こんな風に成長してしまったのか。誰の教育が悪かったのだろうか。きっと、アレだ、鬼灯だ、きっと奴が悪かったのだろう」

「ゴズ、うるさい」

 ゴズとオウカは取り囲んだ集団を無視して、いつものやり取りをしている。


「お、おい、何を話している! 止まれ!」

「止まれってんだよ!」

 取り囲んでいた防護服の集団が叫ぶ。


 ゴズがクルマを動かし、こちらを取り囲もうとしていた集団に機銃の雨を降らせる。防護服の集団が手に持った透明なシールドを掲げ、銃弾から身を守る。


「お嬢、お願いします」

「うむ」

 クルマの上のオウカが動く。一瞬で防護服の集団の中へと飛び込み、無骨な刀をきらめかせる。それだけで透明なシールドが真っ二つになっていく。オウカが大きく飛び退く。再び機銃の雨が降り、シールドの無くなった防護服の集団が吹き飛ぶ。

「お嬢」

「うむ。どうだ?」

「お嬢、得意気なところ申し訳ありませんが、反対側も頼みます」

「む。仕方ないなぁ。ゴズ、カレーを落とさないように気を付けて運転」

「お嬢、了解です」

 オウカが動く。反対側の防護服の集団のシールドを斬り飛ばしていく。


「な! シールドが斬られた。そんな馬鹿な!」

「武器だ! あの大女が持っている武器だ!」

「武器を狙え! あんなオンボロな見た目だが、この切れ味、旧時代の遺産に違いない! 武器を壊せば、後はなんとでもなるはずだ!」

 防護服の男が叫ぶ。だが、その何気ない言葉がオウカの魂に火を点けた。


「ふっふっふっふ」

「お嬢、挑発に乗る必要はありませんよ!」

 オウカがゴズの言葉を無視して手に持っていた無骨な刀をクルマのシャシーに叩きつけ、手放す。


「お嬢! ああ、またクルマに穴を開けて!」

 ゴズが叫び、オウカが動く。オウカが防護服の集団に飛び込む。


「奴は素手だ! 叩き潰せ!」

 防護服の集団が飛び込んできたオウカを取り囲む。オウカが手近な一人の手を取り、投げ飛ばし、その腕から警棒を奪い取る。


「ふっふっふっふ。寄らば……斬る!」

 オウカが口角を上げ、牙を見せ、笑う。


 オウカが軽い感じで警棒を振るう。それだけで防護服の男の腕が吹き飛んだ。オウカが笑いながら突き進む。


 血しぶきが舞う。


 防護服の集団の腕が、足が、体が、斬られ、飛び散り、舞う。防護服の防護など何も無いように斬られ、飛んでいく。警棒で斬られている。


 オウカの笑い声と共に防護服の集団の斬られた部位が舞い飛ぶ。


「ひ、ひぃ、化け物だ!」

「逃げろ、逃げろ」

「ルーキーを囲むだけの簡単な仕事だって聞いていたのに、洒落にならねぇ!」

「こんな化け物だなんて聞いてねぇ!」

 防護服の集団がシールドを投げ捨て、逃げだしていく。


 ……。


「お嬢!」

 ゴズがクルマのハッチから顔を覗かせ、オウカを呼ぶ。オウカが手に持っていた警棒を投げ捨て、クルマへと戻る。

「お嬢、この隙に行きましょう」

 オウカがクルマに突き刺した無骨な刀を引き抜き、ゴズの前へと突き出す。

「ゴズ、巻いてくれ」

「はぁ、仕方ないですね。お嬢、次はクルマを壊さないようにしてくださいよ」

 ゴズが無骨な刀を受け取り、布を巻いていく。

「ゴズ、あの程度を恐れる必要があるのか?」

 オウカがクルマのシャシーへと飛び乗り、砲塔に手をかけ寄りかかる。


「お嬢、お嬢は何回くらい連続して、この刀を振るうことが出来ますか?」

「ふむ。素振りをした時のことを考えれば一万回くらいか」

「お嬢、本気で言っていますか?」

「ふむ。戦場での緊張感、消耗を考えれば千回というところだな」

「さすが、お嬢。とはいえ、それくらいが限界として、それで何人殺すことが出来ますか? 一斬りで一人? 二人? 相手が千人だったらどうでしょう? 相手が銃を持っていたら? お嬢なら銃弾すら斬れるでしょう。だが、いつまでも体力が続く訳が無い。疲労は? 水も食事も必要でしょう? 睡眠だってそうでしょう。いつまでも戦い続けられるのは死ぬことの無い狂人だけですよ」

「ふむ」

「ふむじゃあないんですよ」

「うむ」

「はぁ、とりあえず、南に行きましょうか」

「うむ」

「それと、お嬢、動いてお腹が空いたのかもしれませんが、カレーを食べるのは駄目ですよ。それは明日の分です」

 オウカがカレー鍋へと伸ばしていた手を止める。

「むぅ」

「むう、じゃあありませんよ」

 ゴズが肩を竦め、大きなため息を吐く。


 ゴズは布を巻き直した無骨な刀をオウカに返し、ハッチから車内に戻る。

「オリハ? 静かだと思ったら……」

 そこで運転席に寄りかかり寝息を立てているオリハを見つけ、ゴズは肩を竦めた。

次回は2023年11月7日(火)の更新予定となります。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 鬼も煽てりゃクルマに登る! [一言] そして煽られて武器を捨てる。 教育の敗北……って警棒でも斬り飛ばせるんかい! これはまぎれもなく天才の脳筋。相手が死なない狂人でもないかぎり常勝ですな…
[良い点] クルマの中とはいえ戦闘中に寝るとは、豪気!
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