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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
さまよえるガム

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552 オーガキラー24

「殺さないように? 殺さないようにですって! お前たちが? お前たち程度が! そこらの三下がァッ! このワルイーネを舐めて、よくもそんなことを! 今すぐ死ね!」

 ワルイーネが怒りをにじませた声を上げ、手に持った何かのスイッチを押し、そのまま大きく後方へと飛び退く。


 次の瞬間――モヒカン男の体にヒビが入り、そこから光が漏れ出す。その光はモヒカン男の体を飲み込み収束していく。大きな力を振り絞るために、その力を蓄えているようにモヒカン男を中心として光が収束していく。

地獄(ヘル)地獄(ヘル)、へるぷぅぅ」


 オウカが動く。オウカが目の前のモヒカン男へと踏み込み、その横を抜ける。オウカが突き出した形で振り抜いた無骨な刀を、ゆっくりと肩に乗せ、口角を上げてニヤリと笑う。


地獄(ヘル)地獄(ヘル)地獄(ヘル)地獄(ヘル)地獄(ヘル)地獄(ヘル)、か、体、俺が減る」

 ヘル、ヘルとうるさく騒いでいたいモヒカン男の体に線が入る。そのままその線を中心にモヒカン男の体が斜めへとずれていく。モヒカン男から漏れ出ていた光はいつの間にか消えていた。


「な! な、な、な、な!? 爆発しない? な、何をしたの!」

 ワルイーネが叫ぶ。

「ふむ。何を? 斬っただけだが?」

 オウカは真顔で答える。その答えを聞いたワルイーネはさらに顔を歪ませ、怒りに体を震わせる。

「斬った? 馬鹿にしているの! そんなのは見れば分かるでしょ!」

「む?」

 オウカはワルイーネの言っていることが分からないと首を傾げる。

「何なの? この馬鹿。図体ばかり大きくなったお馬鹿なの? 脂肪に……馬鹿なの! 私が言っているのは、どうやって爆弾を斬ったか、ということよ。接触すれば爆発するはずの爆弾が! しかも私が起動させた後なのに! もう後は爆発するだけだったのに! 斬れるはずが無い!」

「ふむ。だが、斬れたが?」

 オウカは無骨な刀を肩に乗せ、口角を上げ牙を覗かせ笑っている。

「あり得ない! あり得ない! 事前情報ではクロウズになったばかりの駆け出しだったはずじゃない! なんで、こんなことが! このワルイーネの計算が、でも……」

 ワルイーネがブツブツと呟いている。


 ゴズはそれを見て、大きなため息を吐き、肩を竦める。

「あまりお嬢を馬鹿にしない方が良い。パッと見、何も考えていないようで、実際、何も考えていないんじゃあないかと疑うことばかりだが、脳まで筋肉で出てきているんじゃあないだろうか、何処で教育を間違ったんだろうか、そう思うこともある。だが、それは凡人では理解出来ない思考でお嬢が動いているだけであって、決して馬鹿ではない」

 と、そこでゴズはオウカを見る。オウカは何も考えていないような得意気な顔で笑っていた。そのオウカがゴズの視線に気付き、ゴズを見る。ゴズが大きなため息を吐く。


「……疑わしいところもあるが、お嬢は天才だ。それは剣の道だけではなく、あらゆる分野で、だ。お前のような凡人にはお嬢という高みは理解出来ないだろう。人を見た目で判断するなど愚かの極み。つまり、お前は凡夫だということだ」

「ゴズ、今、うちを馬鹿にしたか?」

「凡夫、愚かだな!」

 ゴズがオウカを無視して、ワルイーネに告げる。

「な、な、な、なんですって! このワルイーネを、この頭脳であの方を、ゴールドマン様を支え続けている、このワルイーネを! 凡夫ぅぅ? 何という侮辱! お前は、お前たちは何を言っているのか分かっているのかしら? 私を怒らせればどうなるか分かっているのかしら!」

「お嬢は口を開けば、斬る斬る斬ると戦闘中毒者(バトルジャンキー)みたないことを言っているが、何も考えていない訳ではない。えー、お嬢、そうですよね? 少しは思慮というものを、思慮深さとか……思いつきで行動している訳ではないですよね? 考えてますよね? お嬢、理解していますよね?」

「ゴズ、うるさい」

 オウカが耳に手をあて、うんざりという顔をしている。ゴズは小さく微笑み、ワルイーネへと向き直る。


「それで?」

 ゴズがワルイーネを見る。

「それで、ですって?」

 ワルイーネは先ほどまでの怒りに震えた様子から一変し、まるでそれが演技だったかのように余裕の表情でゴズとオウカを見る。


「ああ。それで? 時間稼ぎはもう良いのか? お前の三文芝居に付き合ってやったんだ。少しはお嬢の糧になるような策なんだろうな?」

 ゴズの言葉にワルイーネはくっくっくと笑う。

「あら? 気付いていたの? お安い芝居はお前の方じゃないかしら? ふふふ、お前たちが私の思っていた以上に厄介だったから、応援を呼ばせてもらったわ。ええ、これも想定内。想定内でしかないの」

「想定内? お前の中ではそうなんだろうな」

「ふふ、分からないのかしら? では、教えてあげましょう。今、お前たちは賞金首となった。言ったでしょ、この街では私たちが法なの。賞金額は百万コイルに設定したわ。お前たちを狙い、凄腕のクロウズたちがやってくるでしょう。ふふ、それだけではないわ。ここを取り囲んでいる私兵団にも命令を出させて貰ったわ。この事実、わざわざお前たちに告げている理由がわかるかしら?」

「そうか、それで? 隠れてこそこそせずに、通信端末を見てみたらどうだ?」

 ゴズの言葉にワルイーネはやれやれという感じで肩を竦め、隠していた通信端末を取り出す。それを見ていたワルイーネの表情が変わる。人を小馬鹿にした余裕の表情から、驚きの顔、そして焦った顔へと変わる。


「お、お前、何をしたの」

 ワルイーネが通信端末から顔を上げ、ゴズを見る。


「それで?」

 ゴズはただ肩を竦める。

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― 新着の感想 ―
[良い点] また何かやっちゃいました!? [一言] 脳筋と天才は両立できるのだった。 そして有能アピールする奴はほとんど無能の法則。 まったく、なんで爆発は斬れないとか通信に干渉できないとか思ったん…
[良い点] お嬢は実は考えている天才なんだ!
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