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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
さまよえるガム

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541 オーガキラー13

 少女がオウカと一緒に居るのを嫌がるため、ゴズが少女を抱え、オウカがクマのぬいぐるみを引き摺る。


「ふむ。ユーたちはミーの扱いがベリーテリブルじゃあないかね」

「船長、これからバンディットどもの殲滅を開始する。連中が集まっている場所は分かるだろうか?」

 ゴズがオウカに引き摺られたクマのぬいぐるみを見る。

「ふむ。連中のベースかね」

「ゴズ、これを信じるのか? いくら捕まっていたからだとしても怪しすぎる」

 オウカが足を止め、無骨な刀をクマのぬいぐるみの首に当てる。

「あー、お嬢、このゴズ、敵に捕まっていたからこちらの味方に違いない、と安直に考えるほど思考停止してませんよ。確かに船長が疑わしいのは分かります。隠していることもあるようですしね」

「ユー、ミーは隠しているワケではなく、スピークしてなかっただけだ」

 クマのぬいぐるみの言葉を聞いてゴズは肩を竦め、話を続ける。


「お嬢、自分は、この船長を知っているんですよ」

「ゴズ、お前が?」

「ええ。この船長はウォーミの街で看板をしていました。ここが街の入り口ですよって、案内する係ですね。だから、てっきりバンディットどもがウォーミの街を攻めた時にでも連れ去られたのかと思っていたんですが……」

 と、ゴズはそこで言葉を止め、クマのぬいぐるみを見る。

「ユー、看板刑は一年前に刑期をフェニッシュして、ナウなミーはフリーダムだ」

 クマのぬいぐるみの言葉にゴズは肩を竦める。

「船長、良く分からないが、今は自由になっていた、ということか? では、何故、捕まっていた?」

「ふむ。それをスピークするにはロングロングなタイムを必要とするのだよ」

「ゴズ、面倒。分かった。それはゴズに任せた」

 オウカはクマのぬいぐるみが敵ではないと判断すると興味を失ったようだった。無骨な刀を退き、肩に乗せ歩き出す。ゴズは大きくため息を吐き、オウカに引き摺られているクマのぬいぐるみと並んで歩く。


「それで? 船長、ここに詳しい理由とここに捕まっていた理由はイコールなのだろう? 教えてくれ」

「う、うむ。うーむ、あ、そこをライトだよ。ユー、ここのボスは、ライトにゴーでボスルームだ」

 オウカが一瞬、眉をしかめ、それでもクマのぬいぐるみの言葉に従い通路を右に曲がって進む。

「船長、それで?」

「あー、うむ」

「それで?」

「ストップ、ストップ。ユーのプレッシャーが凄いのだが」

「それで? 船長、嘘や誤魔化しは無しだ。分かるだろう?」

「あ、あー、うむ。ここのアンダーグラウンドにレイクがある」

「アンダー……ああ、地底湖があるということか。それが?」

 ゴズの言葉に圧を感じたクマのぬいぐるみが顔を逸らす。

「あー、うむ。ここはベリーラージだろう?」

「ラージ? 大きい? ああ、ここが広いと言いたいのか。確かにかなり広い洞窟だ。だが、それが地底湖とどう繋がる? 船長、何を隠している?」

 少女を抱えたゴズがクマのぬいぐるみを強く睨み付けるように見て、さらに圧を掛ける。

「ここのレイクは、ロングロングタイムアゴーのリバーが地殻変動でアンダースルーしたものだ」

「地底湖が昔の川? 良く分からないな」

「うーむ。あー、海と繋がっている」

 クマのぬいぐるみが絞り出すような声でそう告げる。


「海と繋がっている? それが……ああ、そういうことか」

「ウォーミのミーたちのアジトは潰された。ここをネクスト、シークレットアジトにしようと下見をしていたのだよ」

 ゴズが顔に手をあて、大きなため息を吐く。

「船長、また何かしようとしていたのか? ウォーミで吊されていただけでは足りなかったのか?」

「ストップ、ストップ、スタァップ。ミーは別に何もバッドなことをしようとか、ノーだ。ミーはとてもグッドでピースなパイレーツだ。ノー、ノーパイレーツ、オーシャンガイ、そう、オーシャンガイだ」

「なるほど。海と繋がっていたここを新しい拠点にしてろくでもないことをしようと考えていた、そういうことか。船長はその下見のため潜入して捕まった、と。それは分かった。だが、船長自ら潜入するのはどうなんだ?」

「ふむ。ミーが……」

 クマのぬいぐるみが喋ろうとした言葉を止める。

「ゴズ」

「ええ、お嬢。船長、会話は終わりだ」


 ゴズとオウカもそれに気付く。ゴズとオウカが頷き合い、慎重に通路を歩く。


 そして、開けた場所に出る。


「お嬢!」

「ゴズ、分かってる」

 ゴズが少女を抱えたまま、慌てて元の通路へと戻る。クマのぬいぐるみを引き摺っていたオウカもすぐに身を翻し、通路に戻る。


 その後を追うように銃弾の雨が降り注ぐ。


 回転音を響かせ、降り注ぐ銃弾。通路を壁にしてゴズとオウカが身を隠す。


「ひゃーひゃーひゃー、お前らが来るのは分かっていたぜ! 分かっていたんだぜー。なら、待ち構えるよなぁ! 待ち構えるぜ! この俺の天才ぶりが分かるかー、天才ぶりぶりぶりぶりぶりりあーんと!」

 広間からバンディットの叫ぶような大声が聞こえる。ゴズがゆっくりと通路から顔を覗かせる。広間の中央には、設置型の大型機関銃を構えたバンディットの姿があった。その周囲には、釘の刺さった棍棒や無駄に大きくて長い工具のようなものを持った無数のバンディットたちも見える。


 顔を覗かせたゴズを狙い、銃弾が飛んでくる。ゴズがすぐに顔を引っ込める。

「お嬢、待ち伏せです。どうりで途中でバンディットたちの姿を見かけなかった訳だ」

「ゴズ、うるさい。好都合だ」

 オウカの言葉にゴズは肩を竦め、抱えていた少女をおろす。

「俺とお嬢で連中を始末するからここで待っていてくれ」

 少女が小さく頷く。


「ふむ。ミーもここで待っているよ」

「船長は戦わないのか?」

「ミーはピースをラブしているのだよ」

 クマのぬいぐるみが片目を閉じ、ニヤリと笑う。それを聞いたゴズがため息を吐き、肩を竦める。


「お嬢、行きますよ」

「ゴズ、遅れるな」


 オウカとゴズが広間へと飛び出す。


「ひゃーひゃひゃひゃ、飛んで火に入る冬虫夏草! ここでおさらば、らば、らば、らばああーず! って、へ?」

 大型機関銃を持ったバンディットが叫ぶ。そして、ゴズとオウカたちを狙い撃とうとした時だった。


 地面が揺れる。


 そして、地中を割って、それが現れた。


 巨大なミミズだ。


 大口を開けた巨大なミミズがバンディットたちを飲み込む。


 バンディットたちが巨大なミミズに食われている。


 オウカとゴズはそれをぽかんとした顔で見ていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] た、只者じゃねえな!? [一言] ミミズってのは仕事熱心なんだなー。 バンディット印の肥料も開拓する気だろうか。 第一村人は終身刑かと思ってたよ。
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