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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
さまよえるガム

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513/727

513 ダブルクロス35

 ハルカナの街で補給を終えたトビオと少年は、マップヘッドを目指しグラスホッパー号を走らせる。

「それで? どうするつもりだ」

 グラスホッパー号の助手席に座った少年が背もたれに深くもたれかかる。少年が乗っていた単車型のクルマの姿は――無い。ハルカナの街での戦いで大破してしまったのか、それとも借りていた人間に返却したのか、少年が単車型のクルマに乗っていたこと自体が幻だったかのように消えてしまっていた。


「どうする? どうする、か。アクシードのヤツらの拠点になっているマップヘッドに向かう。それだけさ」

 トビオの言葉を聞き、少年は頭の後ろで手を組み、荷台に乗ったチェーンガンを横目で見る。

「この改造された? 機銃だけでなんとかなるとでも? ずいぶんと無謀なことをするつもりだな」

「無謀? おいおいおい、俺が正面から突っ込むような無謀なヤツに見えるか? 見えないだろ? だから、任せてくれ。上手くやるさ」

 そんなトビオの言葉に少年は、頭の後ろに組んでいた手をほどき、肩を竦めていた。


 トビオにも分かっていた。わざわざハルカナの街まで行き、やっと手に入れたチェーンガンだったが――いくら改造され強化されたものだったとしても、バンディットの連中を撃ち殺すならまだしも、アクシードの拠点へと乗り込んで戦えるような代物ではない。だが、トビオにはこれで充分だった。


 何処までも続く砂漠。砂に足を取られそうな悪路をグラスホッパー号が走り続ける。やがて、大きな防壁が見えてくる。

「マップヘッドか」

「ああ。無事に辿り着いた。道に迷わなくて良かったぜ」


 遠目に防壁を見ながら、それに沿ってグラスホッパー号を走らせる。

「探しているのは門、か。そこから突っ込むつもりか?」

「そんな無謀なことはしないぜ」

 門が見えてくる。トビオはその門へとグラスホッパー号を進ませる。


 防壁の上にあるトーチカから伸びた砲身が動く。トビオたちの存在に気付いたのだろう。


 トビオはこちらを狙うトーチカを無視し、そのまま進む。


「うっ、うっ、うっ、うぇーるかあむ。ここは砂漠のぱあらあいそー。ごおおおよよようぅけんうぉどおうぞー」

 門に備え付けられた巨大なスピーカーから、ご機嫌な声が流れ出す。聞くだけで、まるで夢の世界に旅行(トリップ)したのかのように錯覚してしまう、そんな享楽的で狂った雰囲気を持つ声だった。


「俺たちは旅の商人だ。仕事を探している」

「しょ、しょ、商人? 商人はものを売るのが、し、し、し、仕事、しごとぉぉぉ! さ、さがすぅぅ?」

 門に備え付けられた巨大なスピーカーから、トビオたちを疑うような声が返ってくる。


俺たち(・・・)という戦力(・・)売る(・・)ぜ。必要なんだろ?」

 トビオがニヤリと笑う。


 門に備え付けられた巨大なスピーカーが、にゅうっと配線を伸ばし、グラスホッパー号の前へと動く。そのまま(せわ)しなく、グラスホッパー号を調べるように動く。どうやらスピーカーに取り付けられてカメラで、グラスホッパー号とトビオたちを確認しているようだった。


「せ、戦力ぅぅぅ! たたかうしごとおぉぉぉー! 売る、合ってる、あってるうぅぅぅ! た、確かに、商人だ、売るしご、しご、しごとぉぉぉ」

 巨大なスピーカーからそんな声が聞こえてくる。

「ああ。あんたらは、今、忙しいんだろ? 戦う力を必要としている、違うか?」

「ち、違わない。ひつよう、ひ、ひひ、必要だぁぁぁ! ご、合格! ごうかく! クルマ、武器、合格! とおってよぉぉぉっしっ!」

 巨大なスピーカーからの声を聞き、トビオが得意気な顔で少年を見る。少年が参ったという感じで肩を竦める。


 ……。


 だが、開かない。


 門は開かない。


 巨大なスピーカーからは通って良いという言葉が発せられていた。だが、どれだけ待っても一向に門が開かない。


「おいおいおい、通って良いんじゃあないのか? ここを開けてくれ」

 待ちきれなくなったトビオが呼びかける。


 ……。


 ……。


 ……。


「そのクルマ……見覚えがあるぞ。アクシードと敵対しているだろう?」

 巨大なスピーカーから先ほどまでとは違い、流暢な女の声が聞こえてくる。


 トビオが思わず息を飲む。


 ……。


 トビオは、ゆっくりと息を吐きだし、冷静を装う。

「……誤解だぜ。襲われたから、反撃した。問題があるか? そして、だ。あんたらの攻撃を受けながらも、俺たちは生き延びているんだぜ? 生き延びているってことは、それだけ戦えるってことだろ? アクシードは強いヤツを求めているんじゃあなかったのか?」

 トビオは巨大なスピーカーを睨みながら、そう告げる。


「なるほど。よかろう、通れ」

 巨大なスピーカーから、そんな声が聞こえ、門が左右に分かれ、開いていく。


「ふぅ、俺らのことを知られていたのは予想外だったが、なんとかマップヘッドに入れそうだぜ」

「やれやれ」

 大きな声でそう呟き、額の汗を拭うトビオを、少年は肩を竦めながら何処か呆れた顔で見ていた。

イカれた世界にウェルカム!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作戦勝ちだ! [一言] ブラフに使うための武器だったのか。なるほど、上手いな商人。 やれやれだけど、まずは前哨戦の突破だぜー。 スピーカー健在なのかよ……同一人物なのか、同一の何かなのか…
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