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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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049 クロウズ試験16――爆発危険

 砂埃が舞い、天井が揺れ、パラパラと粉が落ちる。これは天井が落ちるかもしれない。急いだ方が良いだろう。

「どういうことか説明してくれ」

 下の階を目指して駆けながらフールーに話しかける。

「見たまんまなんだぜ」

 見たまま?

「この腕輪が爆弾だったということか?」

 俺は自分の腕に巻き付けたパスと呼ぶ腕輪を見る。残り時間とポイントが表示されている。

「そうなんだぜ」

 フールーはあっさりとそう言う。俺がゲンじいさんに取り付けられた首輪も元々は爆弾だった。随分とこの時代の連中は爆弾が好きらしい。


「フールーが一番に腕輪を取った理由はそれか」

「本当によく見ているんだぜ」

 フールーは他の連中が選ぶよりも早く、真っ先に腕輪を取っていた。一番に選ぶ必要があったのだろう。その理由が、これ、か。フールーの腕輪は爆発しないようになっているのだろう。もしかすると他にも特別な機能があるのかもしれない。


「最初の話ではボタンを三十秒間押し続けるだったよな? 何故、押しただけですぐに反応した?」

「そういうものだからなんだぜ」

 そういうもの、か。

「つまり、押そうとした時点でクロウズとしては要らないということか? だが、それでは周りの人間を巻き込むだろう。間違えて押したらどうなる? 周囲に居たのが有能なヤツだったら?」

 戦える人間を探しているのに、こんなものを仕込んでいる。俺には杜撰な試験にしか見えない。

「間違えて押した時は反応しないんだぜ。後、勘違いしているんだぜ。そんな状況になっている時点で有能じゃあないんだぜ。っと、ああ、もし、馬鹿がやらかしてなったとしても、有能なら今の俺らみたいに上手く逃げると思うんだぜ」

 フールーの言葉に俺は肩を竦める。なるほど、随分と便利な道具のようだ。試験官はボタンを三十秒間押すことで試験が終わる(・・・)と言っていた。フードの男はそれを助けが来ると勘違いした。本当に終わるボタンだったとは……普通は言葉通りの意味で終わるとは思わない。


 つくづく人の命が軽い時代だ。


「首輪付きがパスを地上に蹴り飛ばしたから運が良ければ連中は生きていると思うんだぜ」

「崩れてきた瓦礫に巻き込まれていなければ生きているかもな。だが、俺たちも生き埋めになるかもしれない。何故、地下に進む方を選んだ?」

「砂嵐に巻き込まれるよりは生き延びられる可能性は高いんだぜ。それに、まぁ、何とかなると思うんだぜ」


 俺とフールーは開いていた床の穴から下の階に飛び降りる。そして、それを追いかけるように先ほどまで自分たちが居た階の天井が崩れ始める。砂嵐に爆発だ。もしかすると地上部分は完全に崩れてしまったかもしれない。


「首輪付き、暗いところは?」

 俺たちが飛び降りたこの階層は明かりが無く暗闇に閉ざされている。

『ふふふん、私に頼れば見えるようにするけどぉ?』

「そこそこだ。まったく見えない訳じゃない」

 俺は頭の中に響く声を無視する。


「分かったんだぜ。それと、これだ」

 フールーが何かを投げ渡してくる。俺は慌ててそれを受け取る。


 フールーが投げ渡してきた、それは――俺が持っているサブマシンガン用の弾薬が詰まった箱と固形食料、水だった。これは俺の荷物の一部、か。

「本当にそこそこは見えている、か。急ぎだったからそれくらいしか回収できなかったんだぜ」

 荷物を投げ渡すことで暗闇で俺がどれくらい見えているか確認しようとしたのだろう、フールーが固形食料を囓りながらそんなことを言っている。


「助かる」

「いいんだぜ。それと、ここは俺が先行するんだぜ」

 フールーがナイフを構え、周囲を警戒しながら歩き出す。その動きに迷いはない。この暗闇の中でもしっかりと見えているようだ。

「分かった。だが、何処に向かうつもりだ?」

「とりあえず進んで、何処か安全に休める場所を探すんだぜ」

 フールーもこの工場跡の構造は把握していないようだ。仕方ない、探索だな。


 この階層はもともと荷物置き場だった場所のようだ。通路と良く分からない部品が転がった部屋が連続している。


 周囲を警戒しながら暗闇の中を歩き続ける。すると、変わったものが生えている場所に出た。


 竹だ。


 地下に竹が生えている。コンクリートを突き破り、竹が伸びている。


 明かりが無いからなのかあまり背は高くない。数もそれほどではない。


「爆発竹なんだぜ。もしかすると何処かに水源があるんだぜ」

「爆発竹?」

「触ると爆発するんだぜ。コイツがあるってことは、こっちにさっきのマシーンどもは居ないようなんだぜ」

 なるほど。いくらまばらと言っても竹は通行を邪魔する程度には生えている。触ったら爆発するような竹だ。大きな観音戦車や蟹もどきは動けないだろう。フールーが言うように、こちらの通路にマシーンどもは居ないと見るべきか。


 だが、マシーンどもが居ないということは……。


「来やがったんだぜ」

 フールーも予想していたようだ。


 俺たちの目の前、コンクリートの床を突き破りビーストどもが現れる。


「フールー、逆に不味いんじゃないか」

「逃げるんだぜ」

 現れたのはモグラのような姿のビーストたちだった。そして、その手には何故かタケノコ(・・・・)がある。


 触れると爆発する竹、そのタケノコ。


 俺とフールーは、慌てて来た道を戻る。走る。


 モグラたちが手に持ったタケノコをこちらへと投げる。次々と爆発が起こる。


「おい、なんだよ、あの良く分からない生き物は!」

「旧時代の連中に言って欲しいんだぜ」


 俺たちは逃げだした。

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― 新着の感想 ―
[一言] タケノコは地面を突き破る必要があるから、ある程度の衝撃には耐えられる的な?
[良い点] ピンチしかない! [一言] クロウズ試験に落伍者はいない……。 人生からも一発コースアウトとは、厳しい社会の洗礼なのだった。 しかしマシーンもビーストもツールを巧く使うよなあ。 むしろ、…
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