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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
さまよえるガム

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481 ダブルクロス03

 トビオは鎖から細くなった腕を無理矢理引き抜く。


(ガム? ガムと名乗ったか? もう何年も前に全裸のガムの二つ名で呼ばれていた凄腕の少年クロウズが居た。俺がガキだった頃に会ったこともある。その時、俺もガキだったが、ガムも同じようにガキだった。ブマットの納品をしたこともある。うろ覚えな記憶だが、確かにあの時に出会った少年クロウズとよく似ている。しかも、二つ名と同じく全裸だ。いや、しかし……若すぎるだろ。俺が会った時と同じ姿だと? 変わってないじゃあないか。何年経ったと思っているんだ。だが……)


 だが、実力が確かなら名前を騙っている偽物だろうと構わない――トビオはそう考える。


 トビオは自由になった手をガムと名乗った少年へと伸ばす。

「悪い……手と肩を貸してくれ」

 トビオの言葉を聞いた少年が肩を竦め、伸ばされた手を掴む。そのまま一気に引き起こす。トビオは、骨と皮だけになり、筋肉の衰えた足でふらふらとよろめき、少年の肩を借りる。


「で、どっちに行けば良い?」

 少年がトビオを見る。少年の肩を借りたトビオは首を横に振る。

「案内する。だが……少し、待ってくれ」

 トビオが少年の肩から手を離し、ふらふらと歩く。


 トビオは、バンディットたちの死体が転がっている場所まで歩き、そこに転がっている鉄梃(かなてこ)を拾う。

 そして、思いっきり振りかぶる。

「このトビオ様に良くもやってくれやがったな! こんちきしょうが! 死ね、死ね、死ね! ああ、もう死んでいるか! ふざけやがって!」

 トビオは鉄梃(かなてこ)を何度も振り下ろし、バンディットの死体を叩き潰す。叩き、蹴る。しばらく続け、トビオは荒い息を吐き出し、久しぶりに流れ出た額からの汗を拭う。


「すまない……待たせたな」

 トビオの行動を見た少年はわずかに口角を上げ、肩を竦める。

「いいや、こちらこそ悪いな。あんたの獲物を奪ってしまったようだ」

「構わない……ぜ」

 トビオは荒い息のまま、吐き出すように喋る。


「で、何処に、どっちに行けば良い?」

 少年は再び肩を竦め、ため息を吐き、トビオに肩を貸す。

「……まずは、こっち、だ」

 トビオはゆっくりと腕を持ち上げ、洞窟の奥を指し示す。トビオもこの洞窟の全てを把握している訳では無い。だが、バンディットたちの行動から目星はつけていた。


 全裸に近いトビオと全裸の少年が洞窟を歩く。

「……聞かないのか?」

「何をだ?」

「どうして捕まっていたのか……だ」

「聞いて欲しいのか?」

「聞いて……同情して、協力して欲しいと思っている」

 トビオの言葉を聞いた少年が口笛を吹く。

「あんたの過去に興味は無いが――悪くない。俺に何をさせたい? まさか復讐を手伝えとか言わないよな?」

「……ああ、復讐、だ。だが、バンディットみたいな小物じゃあないぜ。アクシードだ」

 アクシードの言葉を聞いた少年が眉間に皺を寄せ、ピクリと反応する。


「アクシード、か。それで?」

「俺はアクシードの連中に奪われたものを……取り返したい。こんな境遇の俺に……同情して、協力してくれない、か?」

 トビオが自分の痩せ細った体をアピールする。少年が大きなため息を吐く。

「報酬は?」

「俺が……あんたを、プロデュースする……ぜ。どうだ? これでも地元では……ちょっとした顔な、んだぜ?」

 トビオがニヤリと笑う。

「それで?」

「……だけじゃあない。もうすぐクルマが手に入る……予定があるんだ。それを貸す、どう、だ?」

「クルマ、か。悪くない」

「おっと、待って……くれ。貸すだけ、貸すだけ、だ」

 少年の反応にトビオが慌てたように貸すという言葉を繰り返す。


「分かった。アクシードの連中には俺も用がある。トビオ、あんたに手を貸そう」

「助かる……ぜ」


 トビオたちが洞窟の一室に辿り着く。

「ここだぜ。連中が食べれなかった(・・・・・・)ゴミを捨ててる場所だ」

 そこはバンディットたちが殺した人間の持ち物をまとめ捨てているガラクタ置き場だった。

「なるほど。バンディットたちの頭では理解出来なかったお宝の山って訳だな」

 トビオと少年が積み上がったガラクタの山を漁る。


「少し大きいな」

 少年が適当に拾った服を着る。だが、少年にはサイズが大きく、ぶかぶかだった。その後もガラクタの山を漁るが、少年に合うようなサイズの服は見つからない。仕方なく少年はぶかぶかの服を引き千切り、折ってサイズを調整する。


「あったぜ。クソ、壊れてないよな」

 ガラクタの山で見つけた服をさっそく着たトビオが、同じようにガラクタの山で見つけたブロックタイプの携帯食料を囓り、それを手にする。

「それは?」

「演算制御装置だぜ。これが必要だったんだよ」

「なるほどな」

「物の価値が分からないバンディットで助かったぜ」

 賞味期限が切れていそうなブロックタイプの携帯食料を囓り、少し元気になったトビオが喋る。

「これからレイクタウンの俺の拠点に向かうつもりだが、あんたの力、期待して良いのか?」

 トビオの言葉に少年は肩を竦める。


「無いよりはマシか。それなりに期待してくれ」

 少年はガラクタの山から見つけたナイフを手に取り、大きくため息を吐き、それを仕舞う。


 そして二人は洞窟を出た。

ふたりはぜんら!

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― 新着の感想 ―
[良い点] お宝が山だ! [一言] 全裸と全裸で全裸がダブってしまった。 服が見つかったのでヨシ! 武器とクルマと破れない服と何よりセラフがいない旅かあ……
[良い点] あー、そっか。絶対壊れないナイフが無いですねえ
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