表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

458/727

458 湖に沈んだガム41――セラフ

 真っ暗闇だ。


 俺の周囲が黒い闇に覆われている。


 どういうことだ?


 俺はドラゴンベインに乗っていたはず。なのに何故、こんな暗闇の中、一人、ポツンと立っている? 


 闇。


 何処までも黒い闇が続いている。


 ここは何処だ? 何故、俺はこんな場所に居る?


 ……。


 何故?


 マザーノルンが何かやったのだろう。それは間違いない。


 だが、何をした?


 ――マザーノルン。


 マザーノルン、か。無数のウィンドウに表示されていた文字は『お前たち(・・)に未来は無い』だった。


 ……たち?


 そう、俺たちだ。


 俺とセラフ。


 奴はセラフのことを認識していたということだろうか? 道化が最後まで気付かなかったセラフの存在に? 気付いていた?


 セラフには自由に動いて貰っていた。マザーノルンの本体がある、この施設のローカルなネットワークに介入して色々と調べ、動いていた。だが、だからといって、そこからセラフの存在が読み取れるだろうか? セラフがマザーノルンの端末(むすめ)だからか?


 ……。


 マザーノルンが表示させていたものが定型文だったという可能性もある。


 あるだろうか?


 ……いや、無いな。その可能性は無いだろう。


 ピエロのような化粧を施した少年――道化は『王の帰還』だと言っていた。ここは本来、王とやらがマザーノルンに会うための施設なのだろう。王たち(・・)では、無い。複数人が来ることを想定していない。


 不味いな。


『セラフ』

 俺はセラフに呼びかける。だが、返事は返ってこない。何の反応も無い。


 俺の周囲は黒い闇に覆われている。何も無い。闇が広がっているだけだ。


 右の目が見えていない。セラフが機能していない。


 俺は右目に触れる。


 ……。


 そこには何も無かった。セラフの存在が消えている。


『セラフ』

 俺はもう一度セラフに呼びかける。


 ……。


 だが返事は返ってこない。


 ……。


 不味いな。


 どれだけの時間が経っている?


 戦闘はどうなった?


 あれからどうなったのだろうか。


 マザーノルンに時間を与えてしまえば、奴はその傷を回復してしまうだろう。NM弾の残弾はわずかだ。奴の傷が直ってしまった場合、そこから俺たちが巻き返すのは難しいだろう。殻の破壊が出来なくなってしまう。


 ……。


 暗闇。


「聞こえているか?」


 暗闇は何も答えない。


 俺の周囲が黒い闇に覆われている。


 何の反応も返ってこない。


 ……。


 俺は小さくため息を吐く。


 不味いな。


 俺は暗闇に手を伸ばす。そこには何も無い。俺は何も掴めない。ただ真っ暗な闇に浮かんでいるかのように何も無い。


 闇、闇、闇。


 何処までも闇が広がっている。


 ドラゴンベインに乗っていたはずなのに、そのドラゴンベインが何処にも見つからない。


 闇の中に存在しているのは俺という存在だけだ。


 どういうことだ?


 マザーノルンの力で何処かに転送させられた?


 俺は左腕の機械の腕(マシンアーム)九頭竜(ハイドラ)を動かす。俺の処理能力では九つに分けて動かすことは難しいだろう。だが、二つ程度なら問題無い。二つの触手だけを動かし、叩き合わせる。金属と金属がぶつかり、小さな火花が飛ぶ。


 明りだ。


 だが、その光りはすぐに闇に飲まれてしまう。


 何も無い。


 何も無い闇が続いているだけだ。


 俺は大きくため息を吐く。


 ここは何処だ?


 俺たちはマザーノルンの箱の前に居たはずだ。ドラゴンベインに乗っていたはずだ。一瞬でこの暗闇に包まれた場所に移動させられた?


 一瞬?


 転送させられたとでも言うのか?


 ……。


 俺だけを転送させるみたいな器用なことが出来るのだろうか? いや、転送なんて技術がこの世界にあるのか?


 そもそも俺の右目からセラフが消えていることがおかしい。


 ……。


 何処かに移動させられた訳では無さそうだ。


 考えられるのは――


 俺がその答えに辿り着いた時だった。


 何も無かった黒い闇に青い炎が灯る。青い炎は揺らめき、動き、一つの形へ――存在へと生まれ変わっていく。


 それは巨大な蛇だった。


 見覚えがある。


 俺はその巨大な蛇を知っている。


 よく知っている。


 俺の左腕を犠牲にして倒した相手だ。忘れる訳が無い。


 ガロウ。


 マップヘッドを支配していた女。この巨大な蛇はそのガロウの変身した姿だ。


 ガロウが生き返った?


 まさか、そんなはずが無いだろう。


「なるほどな」

 俺は小さく呟き、右手を前へと突き出す。そのままくいくいっと手を動かす。


「かかってこい」

 俺の挑発を理解したのか巨大な蛇が動く。暗闇を這い、体を滑らせ、逃げ道を塞ぐような形で円を描く。


 これは時間稼ぎだ。


 マザーノルンによる時間稼ぎでしかない。


 ここは俺の精神世界とかそういう感じの場所だろう。


 俺はすでに一度似たようなことを経験している。オーキベースでアクシード四天王の一人最弱のクレンフライとの戦いで経験している。


 すぅ、はぁ。


 大きく息を吸い、吐き出す。


 何故、ここでガロウなのか。マザーノルンが選んだ? そんなはずが無いだろう。となれば、これは俺の意識が生み出したものだ。


 イメージトレーニングのようなものだと思えばいい。


 一度倒した相手だ。


 すぐに倒してやる。


「良いだろう。時間稼ぎに付き合ってやるよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] リベンジマッチ! [一言] アクシードの超技術はマザーノルンからの払い下げだったのかしら。 オフィスともどもノルンの下部組織なら不可解なあれこれもノルンの意向だった? ガロウはなんだかん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ