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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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444/727

444 湖に沈んだガム27――やることは一つだ

 セラフの人形がキーを叩く。

「ふふん。まずはオーキベース、次にウォーミ、そしてノア、次はマップヘッド、ビッグマウンテン、でキノクニヤ、ハルカナ、ふふん、サンライス、レイクタウン、最後にタマシズメ」


 最後のタマシズメがセラフの本体が居た島の名前なのだろう。


「ふふん。これで起動するから。行きましょう」

 セラフの人形の前にあったキーボードが開いた床に収納される。これで10のキーが承認されたようだ。

「ふふん」

 得意気に笑っているセラフの人形がこちらへと歩いてくる。

「それで?」

「ここでの用事は終わったから。ふふん、後は行くだけでしょ」

 セラフの人形は俺の横を抜け、ドラゴンベインへ向かう。俺は肩を竦め、セラフの人形と歩く。


 ドラゴンベインに乗り込み、発進させる。向かうは壁だ。この世界を覆っている巨大な壁――



 くだらない実験施設でしかなかった絶対防衛都市ノアを出て、北に向かう。


 すぐに黒光りする巨大な壁が見えてくる。この世界は壁に覆われた閉じられた世界だ。外と行き来をさせないよう巨大な壁でこの世界を覆ったのはマザーノルンなのだろうか。


 北の果て。世界の壁。


「ふふん、ここね」

 セラフに促されるまま上が見えないほど巨大な壁の前へと進む。


 雲より高い壁。何処まで続いているのか先が見えない。人の力でこの壁を乗り越えるのは無理だろう。


 ドラゴンベインが壁の前で止まる。そして、地面が大きく揺れ、動き出した。


 ドラゴンベインを乗せた黒い大地が迫り上がって行く。


「これがエレベーターか」

「ふふん。そうね」

「この先にマザーノルンが待っているのか」

「ええ」

「マザーノルンは随分と不便な場所で生活しているんだな」

「ふふん。だから端末を使っているんでしょ」

 俺はセラフの言葉に肩を竦める。


 黒い床は壁に沿ってゆっくりと上昇している。この黒い床――エレベーターには手すりも何も無いが、ちょっとした体育館ほどの広さがあり、興味本位で縁の方に行かなければ落ちることは無いだろう。


 ……。


 先は見えない。


 上に辿り着くには、まだまだ時間がかかりそうだ。


「ふふん、来るわ」

 セラフの言葉と共に右目に赤い光点が灯る。敵だ。今、俺たちが居る場所に重なるように次々と赤い光点が灯る。


「何処からだ?」

 動いていたエレベーターがガコンという大きな衝撃とともに停止する。そして、まだ先が見えない上空からそれ(・・)らが降ってくる。


 それは黒いスーツの男たちだった。ご丁寧に黒いサングラスもかけている。降ってきた黒スーツの男たちがエレベーターにヒーローのようなポーズで着地する。

「侵入者、排除する」

 黒スーツの男たちが立ち上がり、黒いサングラスをぐいっと持ち上げる。


「こいつらは敵だな?」

「当然でしょ」

 俺はドラゴンベインを動かし、こちらを取り囲もうとしている黒スーツの男たちへ砲塔を向ける。


 ドラゴンベインの150ミリ連装カノン砲が火を吹く。続けて130ミリカノン砲(デュエリスト)が発射される。巻き起こる轟音と爆発。


「排除する」

 そして、その中から赤い光が飛んでくる。

「排除する」

 赤い光がドラゴンベインのシールドを削る。


「こいつらは人造人間か」

「戦闘用に強化された人造人間ね」

 ()が造った機械の人間。数は十ほどだろうか。


 爆煙が消えた場所には、顎が外れるほど大きく口を開けた黒スーツの男たちが居た。その口元に赤い光が集まる。

「排除する」

 黒スーツの男たちは大きく口を開けたまま機械的に同じ言葉を繰り返している。


「こいつら、何処から声を出している?」

 ドラゴンベインが砲撃する。150ミリ連装カノン砲のマズルブレーキが激しく前後し、次々と砲弾を吐き出す。巻き起こる爆発。


「排除する」

 爆煙の中から赤い光が飛び、こちらのシールドを削る。ドラゴンベインは砲撃を続ける。だが、飛んでくる赤い光は減らない。


「ふふん。こいつら、非常に強力なシールドを持っているみたいね」

「人型なのに、クルマやヨロイよりも強力なシールドを持っているのか」

 今のドラゴンベインの火力を持ってすれば下手なクルマやヨロイ、機械連中ならあっさりと勝てるだろう。それが通じていない。

「ふふん。でも、その分、パンドラの消費は大きいから。搭載しているパンドラは小さいでしょうから、攻撃を続ければすぐにエネルギー切れを起こすはずよ」

 パンドラを搭載した戦闘用の人造人間。さすがはマザーノルンのお膝元だ。馬鹿みたいな代物が出てくる。

「なるほど」

 強力なシールドのようだが、デメリットもある、と。では、セラフの助言に従って、こいつらのパンドラが切れるまで攻撃を続けるべきだろうか?


 答えは否だ。


「あらあら、それならどうするつもりかしら」

 奴らのシールドを削りきるまで攻撃をしていてはこちらの消耗が増すばかりだ。ここで終わりならそれでも良いだろう。だが、本番はこの先だ。こんなものは前座ですら無いだろう。

「やることは一つだ」

 俺はエレベーターの上で固定砲台となっていたドラゴンベインを発進させる。そのまま黒スーツの連中へと突っ込む。


「排除する」

「排除する」

 ドラゴンベインで黒スーツの男たちに体当たりをぶちかます。吹き飛ぶ黒スーツの男たち。それでも無傷なのはスーツが丈夫なのか、体が丈夫なのか。それとも強力なシールドのおかげだろうか。だが、問題無い。


「は、排除する」

 ドラゴンベインにはね飛ば(・・・・)された黒スーツの男たち。そう吹き飛んでいる。奴らはそのままエレベーターの上から外れ、下へと落ちていった。まともに相手をする必要は無い。


 連中を倒したからか、再びエレベーターが動き出す。


 ……。


 どうにも都合が良いように誘われている気がする。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 掌の上!? [一言] 重力(とガム君の発想)の勝利! このエージェント連中は侵入者排除用なんだろうけど……運用の仕方が、なんかすごい試されてる感。 俺だよが言っていたノアの先って、この上…
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