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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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443 湖に沈んだガム26――上か

 大きな爆発が起こり、肉の塊がべちゃりと砕け散る。


 塔のような姿の機械に絡みついていた肉の塊だけがドラゴンベインの砲撃によって綺麗に吹き飛んでいる。どうやら掃除は終わったようだ。


 反撃する手段が無いのなら、それはただの的だ。相手のシールドを削りきるのに無駄な時間がかかったことに少し苛つかされもしたが、何も問題は無い。


『神は死んだ』

『ふふん、そうね』

 もし、この肉の塊に意識があったとしたら、俺たちのことをどう思っていたのだろうか? 機械に絡みつく肉の塊――ここで異形の人間を生み続ける生む機械としての一生。俺たちはそれを終わらせた。死にたくない、殺さないでくれ、と俺たちに恐怖していたのだろうか? それとも終わらせてくれた、やっと解放される、と感謝しているのだろうか?


『どうだろうな? どう思う?』

『ふふん。どちらでも良いでしょ。それより……』

 セラフはあまり興味が無いようだ。考えても無駄なことは考えないようにしているのだろう。人工知能(エーアイ)らしい割り切り方だ。感傷に浸ったところで何かが変わる訳でも無い。セラフの割り切り方は正しいのだろう。

『ああ。分かってる』

 俺はドラゴンベインのハッチを開け、そこから飛び降りる。


 俺は腕を組み、待ち構える。


 カツン、カツンと焦るような足音がこちらへと迫っている。


「ば、馬鹿な。神が死ぬ訳が、神は永遠、神は……」

 そして現れたのは、予想通り金髪碧眼の少年だ。新しいお人形を操って、急いで駆けつけてきたのだろう。

「遅かったな。それで、お前のその人形は、後、どれだけ残っている?」

「何を、言っ……」

 俺はナイフを構え、相手の答えを待たずに、その首をはね飛ばす。

『ふふん。最初の案内用と、このスペア、それと先ほどの戦闘用で終わりみたいね。ここを私が支配した以上、次が造られることは無いから』

 俺はセラフの言葉に肩を竦め、首を失い倒れている金髪碧眼の少年だったものを見る。案内用だった人形と戦闘用だった騎士鎧風の人形、その両方ともがエレクトロンライフルの一撃であっさりと消滅している。あの剣と盾を持った戦闘用の人形はまともに戦ったら強敵だったのかもしれない。だが、全ては終わったことだ。『もし』は無い。


「他は?」

「ふふん、無し」


 これで絶対防衛都市ノアは本当に終わりだ。


 ……。


 俺は、小さくため息を吐き、ドラゴンベインを見る。

『それで?』

『ふふん』

 セラフは得意気に笑っている。

『ここに来た意味があったんだろう?』

『ええ、もちろん』

 ドラゴンベインのハッチからセラフの人形が現れ、そのまま俺の方へと歩いてくる。

「何をするつもりだ」

「ふふん」

 セラフの人形は俺の横を抜け、肉の塊が絡みついていた機械の方へと歩いて行く。


 俺は肩を竦め、セラフの人形の後を追う。


「それで?」

「ここは外部から隔離されているの。だから、私が直接来る必要があったってこと。ふふん」


 セラフの人形が塔のような形の機械の前に立つ。

「ふふん。門は開かれた」

 床が開き、そこからキーボードが迫り上がってくる。どうやら操作は手入力らしい。


「さっきの一撃に巻き込まなくて良かったな」

 俺はエレクトロンライフルがえぐり取ったものを見る。空間そのものがえぐり取られている。その一撃にこの機械を巻き込んでいたら、操作どころでは無かっただろう。

「あらあら。私がそんなヘマをすると思ったの? 思ったのかしら。ホント、お馬鹿さん」

「はいはい、そうだな」

 俺は肩を竦める。エレクトロンライフルの攻撃範囲に、この機械を巻き込まなかったのも、ドラゴンベインの砲撃を調整して肉の塊だけを除去したのも、全てセラフの計算通りなのだろう。


「ふふん。これを操作するには10のキーが必要なの。分かるでしょ」

 セラフの人形がキーボードを操作する。


 10のキー。


「なるほど」


 レイクタウン。

 ウォーミ。

 マップヘッド。

 ハルカナ。

 ビッグマウンテン。

 オーキベース。

 キノクニヤ。

 サンライス。

 ノア。


 この九つ。そして……、


「ふふん。お前が考えている通りだから」

 最後の一つはセラフの本体があった、そして俺が眠っていたあの島だろう。これで10。これらがノアへと至る鍵。全ての端末。


「そのキーでどうなる?」

「ふふん。答えが必要かしら。マザーノルンへの道が開けるってこと。地図を見なさい」

 俺は右目に表示された地図を見る。


 地図の犬の尾のように伸びた先――この世界を取り囲むように広がった防壁と接触した部分が赤く光っていた。


 一瞬、水門か何かかと思ったがどうも違うようだ。


「ここは?」

「ふふん。エレベーターね」

「上か」

 マザーノルンの本体はてっきり地下にでもあるのかと思っていたが、どうやら空にあるらしい。


 そこへと至るエレベーター。ここはその制御室なのだろう。絶対防衛都市ノアは人を変異させる実験施設でありながら、マザーノルンへの最後の防壁でもあったということか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ついに開いた! [一言] やっぱり絶対防衛都市ってマザーノルンを防衛してたってことになるのかな? しかし上は予想外。確かに神様を気取るならお空の上だろうけども。 さて、どんな歓迎が待って…
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