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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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044 クロウズ試験11――理由

 拾った機関銃のレバーを動かす。だが、機関銃はカチ、カチッっと虚しい音を響かせるだけで動かない。


 俺は機関銃を投げ捨て、呆然と立ち尽くしているフールーとおっさんのところへ戻る。

「良いニュースと悪いニュースどちらが聞きたい?」

「お、おい、こんな時に何を……」

 また何か叫び出しそうなおっさんを無視し、ナイフをくるくると器用に回していたフールーを見る。

「悪いニュースは聞かなくても分かるんだぜ」

 悪いニュースは三体のおかわりが現れたことだ。そして、どう考えてもそれだけで終わらないということだ。

「分かった。それなら良いニュースだ。あの機関銃、一個一個に装填されている弾の数はあまり多くない」

 そう、多くない。二回ほど掃射しただけで撃ち尽くした。これは朗報だ。だが、俺が良いニュースを教えてもフールーやおっさんの表情は曇ったままだった。


「さらに良いニュースだ。あの観音像は蟹もどきから機関銃を受け取る時、一緒にエネルギーの補給を行っている。エネルギー供給を絶てば動かなくなるだろう。さらにさらに三つ目の良いニュースだ。ヤツらの弱点は手と手を合わせている場所にある連結コアだ。そこを叩けば倒せる。なんだ、三つも良いニュースがあった。良かったな」

「お、おい、それは勝てるってことか?」

 おっさんの表情がパッと明るいものに変わる。

「弾切れまで何処に逃げるんだぜ? 弾が切れたとしてもあのキャタピラで突っ込まれたらおしまいなんだぜ。エネルギー供給を絶ったところで、どれくらいで動かなくなるか分からないんだぜ。弱点が分かっても、そこを叩く武器がないんだぜ」

 フールーの言葉を聞き、おっさんの喜びの顔が一瞬にして曇る。


「それでどうするんだぜ?」

 フールーは眉間にしわを寄せた表情のまま、こちらを見る。

「あの何もしていない連中のところへ戻る」

 フードの男とドレッドへアーの女は階段の辺りまで逃げだしているようだ。ここからだと数百メートルくらいだろうか。走って戻ればすぐだ。


 まずは戻る。


「お、おい、待ってくれ。動けない、動けねぇんだよ」

 だが、ガタイの良いおっさんがそんな情けないことを言い、俺たちに待ったをかける。俺はフールーと顔を見合わせる。フールーは首を横に振り、肩を竦める。


 動けない、か。


 何か怪我をしているようには見えない。蟹もどきたちにのしかかられた時に骨でも折ったか? いや、単純に恐怖で足が竦んで動かないだけか。


 仕方ない。


 俺はおっさんに肩を貸す。おっさんの方が背が高くガタイも良いから、殆ど引き摺るような形だ。


「おい、何をやっているんだぜ」

 フールーが何処か呆れているような、それでいて真剣な表情で諭すように俺を見る。フールーは目でおっさんを見捨てろと言っている。


『ふふふん。武器も無くなった使えないゴミは捨てれば良いのに、馬鹿じゃない。この体は私のものなのに、危険に晒さないで欲しいんだけど』

 ゴミ、か。セラフは相変わらずだ。

『そういう気分だっただけだ。それに、この程度で誰かを見捨てて逃げる(・・・)ようなヤツがこの先もやっていけるとは思えない』

 そうだ。俺は逃げない。そう、この程度、だ。この程度、苦境でも、困難でもない。


「フールーは動けるようにしていてくれ」

「言われなくてもなんだぜ」

 俺がおっさんを運ぶ。あの三体の観音像とはまだ距離がある。それにまずは蟹もどきから武器を拾うように動くはずだ。あの何もしなかった二人のところまで戻る時間はあるはずだ。だが、どんな不意打ちが来るか分からない。この場で一番、腕は(・・)信用出来るフールーを自由に動けるようにしておくべきだ。


 おっさんに肩を貸し、引き摺るように進む。走ればすぐの距離が遠い。まったく機関銃の掃射に晒されて血だらけの俺が肩を貸して、怪我のないおっさんを運ぶとか間違っている。


「フールー、クロウズの試験は毎回、こんな感じなのか?」

 俺は聞きたかったことを聞く。

「んなワケないんだぜ」

「それは良かった。となると難易度が高いから保護者がついたのか?」

 フールーがペロリとナイフを舐め、肩を竦める。

「何のことを言っているか分からないんだぜ。分からないが普通は……普通以外の時も保護者なんてつかないんだぜ」

 フールーは分からないと言いながら答えを教えてくれる。なるほど。何かがあった時のために見守ってくれている訳ではないってことか。となるとアテにしすぎるのも問題がある。


「お、おい、何の話をしているんだ」

 俺たちの話を聞いていたおっさんが喚き出す。あまり耳元で騒がないで欲しい。俺の傷に響く。

「お前には関係のないことなんだぜ」

 フールーがおっさんの言葉を切り捨てる。


『ちょっと、どういうこと?』

 おっさんだけではなく、何処に興味を持ったのか珍しくセラフも聞いてくる。いや、珍しくはないか。

『フールーの腕が良すぎるって話だ』

『分かるように言いなさい』

 お前だって分かるように喋らないだろうが、と突っ込みたくなったが我慢する。

『新人のくせに腕が良すぎる。そのうえ、俺たちを試すようなふざけた態度をとり続けていた。つまり、コイツは組織側(オフィス)の人間だったってことだ』

 で、だ。

『俺は、てっきり、事故が起こらないように、何かあった時のために、そして俺たちを試すために潜入した試験官だと思っていた。だが、違っていたってだけの話だ』

 となると、だ。


 コイツ(フールー)の目的はなんだ?


 俺たちを試していた。


 何故、試す?


 試験でもないのに試す理由?


 それは誰かを探しているからか?


「……が、いるから今回のようになったようにしか見えないな。いや、こういうことが起こっているからなのか?」

「あまり口を開いて欲しくないんだぜ」

 フールーが瞳だけで俺の腕を見る。見ている。


 腕?


 そこにあるのは最初に貰った腕輪だ。


 なるほど。


 この腕輪で俺たちの動きや会話をチェックしているヤツが居るってことか。そいつがこのクロウズ試験の試験官ってことか。


 はぁ、それなら異常事態を感知しているだろう。何故、救援に来ない?


 ……。


 つまり、それはフールーがここに居る理由と関係してくるのか。


 俺たち全員を見捨ててでも、その何かを成す必要があるということか? この状況、逆にチャンスだとか思われてそうだ。


 やれやれだ。


「本当にやれやれだ」

「こっちがやれやれって言いたいんだぜ。さすがにここまでのは聞いてないんだぜ」

 フールーも泣き言を言っている。ご愁傷様だ。

なんとかBPβまでに仁王2をクリアしました。間に合って良かったぜ。

ドラガリで護符を限界まで持った状態で一度に千枚ほど交換したら、どうやっても引き出せなくなって電子の海に消えました(>_<)

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― 新着の感想 ―
[良い点] やれやれだぜ! [一言] 救援は望めない雰囲気かあ。 ハードモードだからボーナスポイントを弾んで欲しいんだぜ。 とりあえず役に立ってない連中を役に立てるしかなさそうですねー。
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