414 時代の風48――届かない? 無駄? そうか。それは困ったな。ああ、困ったな
獣の咆哮。
俺は吼える。
戦意を高揚させるように、衝動を生み出すように吼える。
俺の中の深いところから湧き上がってくる破壊への衝動に身を任せ、支配しながら殴る。三台のクルマからは、俺がセラフに頼んだとおりの情け容赦無い攻撃が飛んでくる。爆煙が、爆風が、熱が、俺の獣の肌を焦す。
構わない。
俺が殴り、凹み、壊れていく人型ロボット。
俺が殴り、砕け、砲撃で千切れ飛ぶ俺の体。
再生する。
どちらも再生していく。
どちらが先に再生が出来なくなるのか。
……いや、違う。
これはどちらが上かという話ではない。これは俺が上だということを思い知らせるための戦いだ。
「再生工作ゥ! ぜーはー、ナノマシンリペアァァ!」
知力? 作戦? 策を弄する必要は無い。何かする必要は無い。
ただ俺の力でねじ伏せる。
こいつを叩き壊す。
殴る。
「さ、再生工作。無駄、無駄ァァァ、はぁはぁはぁ、いくらでも、どんなでも、再生、する。修理する! ナノマシンリペアァぁァぁ」
殴る。
獣の拳を、爪を、叩き込む。
腕が砕けようとも、砲撃に巻き込まれて半身が吹き飛ぼうとも――関係無い。
俺は甦る。
「な、ナノマシン、はぁ、はぁ、ナノマシンリペアァッ!」
殴る。
体で、全身で体当たりをするように殴る。
殴る。
「ガム! お前のやっていることは全て無駄、ふぅ、ふぅ、無駄だァ! アリバトラーは無敵! アリバトラーは不滅! 再生工作ウゥゥゥゥッ! はふはふ、ナノマシンリペアァァァ!」
殴る。
殴り続ける。
『ふふん。まるで脳まで筋肉に汚染されたかのような戦い方じゃない。死にすぎて狂ったの? 馬鹿になったの? 馬鹿なの?』
『いいや、違うさ。セラフ、これは――』
殴る。
殴る。殴る。
再生し、蘇り、殴る。
砕け、折れ、それでも殴る。
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。欧く。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。叩きつける。
そして、俺の右手が、人型ロボットの目になっている透明な壁を突き抜ける。
俺の拳は止まらない。
俺の拳はロケットだ。ロケットで突き抜ける。
透明な壁に守られていたフォルミを殴り飛ばす。
「届かない? 無駄? そうか。それは困ったな。ああ、困ったな」
俺に殴り飛ばされたフォルミが人型ロボットの顔の中で転がる。
『セラフ』
『ふふん。任せなさい』
ドラゴンベインの150ミリ連装カノン砲が火を吹く。人型のロボットを攻撃している。
俺とフォルミの再生合戦をした結果、周囲のナノマシーンの数はかなり減少している。フォルミの再生が追いつかなくなったのは、これが原因だろう。条件は俺も同じはずだ……った。だが、俺の再生には影響が出ていない。それは俺の再生の方が、フォルミのナノマシーンへの命令の書き換えよりも優先された結果だろう。理由は分からない。フォルミの方が書き換えという無理をして強制している分、ナノマシーンの反応が遅くなっていたのかもしれない。
三台のクルマの砲撃が人型ロボットを打ち砕く。
終わりだ。
もう奴には何もさせない。
俺は人型ロボットの顔面を破壊し、その中へと踏み込む。そこでは、中で吹き飛び、転がっていたフォルミがすでに体勢を立て直し、次の行動を起こそうとしていた。この動き――能力、さすがは高額賞金首といったところだろうか。
だが、させない。
「くっ、はぁはぁ、再せ――」
俺はフォルミを殴る。
「こっ、再生こ――」
俺はフォルミを殴る。
「がっ、ナノマ――」
俺はフォルミを殴る。
殴る。
獣の右手で、拳で、
殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。
殴るッ!




