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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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412/727

412 時代の風46――セラフ、それはどういう……

 このまま人型ロボットに剣を振り回されるだけでも、こちらはやられてしまうだろう。だが、それは何もしなかった場合だ。


『ふふん。それでどうするつもりかしら』

 俺はセラフの言葉に考える。


 厄介なのはフォルミがナノマシーンを扱えることだ。どれだけ大型バスを壊そうが、先ほどと同じように再生させられてしまえば全て無駄になってしまう。


 ナノマシーン、か。


 その厄介なナノマシーンが存在しない空間に誘導すればどうだろうか。


 ……。


 幸いにも俺はその場所を知っている。


『ふふん。そこまで後退する?』

 俺はセラフの言葉に首を横に振る。


 俺が閉じ込められていた場所。あそこはナノマシーンが綺麗に消えていた。大穴を開けたが、それでもナノマシーンの濃度は薄い状態だろう。ここで戦うよりも有利に戦えそうに思える。何度も死んだことで、俺の中に忘れられない場所として刻みつけられている。


 だが、だ。あそこを用意したのは誰だ?


 そう、こいつだ。


 目の前のアクシード四天王の一人、フォルミだ。こいつが用意した舞台。ナノマシーンの脅威がある中、それが存在しない空間がある? あまりにも出来過ぎている。


 つまり、だ。


 俺が取るべき行動は――


『いいや。このまま攻撃を続ける』


 そう、攻撃だ。ドラゴンベインの砲塔を動かし、狙う。150ミリ連装カノン砲が火を吹き、三連続の砲撃がふざけた人型ロボットの膝に着弾する。片足を吹き飛ばされた、ふざけた人型ロボットがぐらぐらと揺れ、そのまま膝を付く。


 膝を付いた人型ロボットは、弱点の頭を下げている。


『あらあら、狙わないの?』

 俺はセラフの言葉に肩を竦める。俺は弱点を狙うために人型ロボットの膝を狙った訳ではない。頭を下げさせなくても、ドラゴンベインの射程範囲内だ。弱点を狙いたいなら最初から普通に攻撃をすれば良い。


「そんなもの無駄さぁ! 再生工作! ナノマシンリペアッ!」

 フォルミの力によって、ドラゴンベインの150ミリ連装カノン砲によって吹き飛んだ片足が修復していく。人型ロボットがゆっくりとした動作で起き上がろうとしている。


 俺は再びドラゴンベインの150ミリ連装カノン砲で人型ロボットの膝を狙い攻撃する。


 ……。


 命中。起きる爆発。だが、こちらの砲撃を無効化するかのように破損した膝が――吹き飛んでいた片足が再生を続けている。(フォルミ)が再生を行っている時は攻撃しても無駄なようだ。再生能力の方が優先(・・)されている(・・・・・)


『セラフ、攻撃を逸らせられるか?』

『ふふん。任せなさい』


 片足が完全に再生し、起き上がった人型ロボットが剣を振るう。ドラゴンベインの無限軌道が唸りを上げて急発進する。だが、間に合わない。直撃コース――その攻撃を予測していたパニッシャーが剣を狙って砲撃し、攻撃の軌道をずらす。その隙間をぬうようにドラゴンベインを動かす。ギリギリで回避する。


 俺は再び人型ロボットの膝を狙い攻撃する。150ミリ連装カノン砲から放たれた砲弾が人型ロボットの膝を打ち砕く。再び、体勢を崩し、膝を付く人型ロボット。


「アリバトラーは何度だって甦る! 再生工作! ナノマシンリペアァァッ!」

 人型ロボットの片足がじわじわと再生していく。何度見ても不思議な光景だ。まるで魔法でも見ているかのような気になる。


 ナノマシーンの力で再生しているのは分かる。だが、どうやって再生している? あの人型ロボットがナノマシーンで造られているから? それともナノマシーンに何か修理するような命令を与えているのか?


 あの人型ロボットがナノマシーンで造られているかどうかは分からない。周囲に漂っているナノマシーンは見えるのに、それが形になってしまうと分からなくなってしまう。だから、どうやって再生しているのかが分からない。


 ……。


 さて、ここで問題だ。この再生する能力は何の代償も無く使い続けられるものなのだろうか? フォルミの力がナノマシーンへの命令の書き換えなのだとしたら、ナノマシーンがある限り、再生し続ける可能性はある。だが、その命令の書き換え自体は、そんな何度でも繰り返せるほど簡単な代物なのだろうか? ナノマシーンは人の目に見えないほど極小の機械だ。それら一個一個に命令を出しているとは思えない。ある程度、命令を簡略化し、範囲を指定して行っているのだとしても簡単なことではないだろう。


『あらあら、群体(ナノマシーン)への書き換えを繰り返させて、アレに負荷を掛けるつもり?』

 セラフが俺の考えを先読みして、そんなことを言ってくる。

『それも悪くない』

 フォルミに負荷をかけ続けるのも悪くない。

『ふふん。確かに可能ね。でも、その前にこちらのパンドラが尽きるから』

 だが、それは上手く行かないらしい。俺はセラフの言葉に大きなため息を吐く。


 なるほど。持久戦ではこちらが不利、か。


 ……。


 ……。

 ……。


 ……ん?


 待て。


『セラフ、それはどういう……』

『言っている場合?』


 再び人型ロボットの剣が迫っている。慌ててドラゴンベインを動かし、なんとか直撃だけは回避する。だが、それでもシールドを削られ、大きくパンドラを消費してしまう。次の一撃は耐えられないだろう。


 このままでは不味い。


 だが……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 削り合い! [一言] パンドラは有限だけど条件付き無限でもあるなー。 ナノマシーンはどうなのか。 ガム君の次なる一手は……!?
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