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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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408/727

408 時代の風42――似たような馬鹿を見た気がするな

 アクシードの一団を撃破する。逃げだそうとしていた奴らも居たようだが、残らず殺す。生かしておいても碌なことにならないだろうから、ここで禍根を断っておく。


 盾役だった装甲車も貫通力に優れたグラスホッパー号のグラムノートと、パニッシャーの主砲による集中砲火の前では、ただの硬いだけの的でしかなく、ゴミクズ同然だ。


 俺はドラゴンベインでの攻撃を控え、パンドラの回復に努めていた。カスミがドラゴンベインをここまで運んでくれるまでに、かなりパンドラを消費していた。だが、今は幸運なことに日中だ。しばらくすれば回復するだろう。パンドラは、移動するにも、攻撃するにも、防ぐにも、全てに関わってくるクソみたいな仕様のエネルギーだが、日中であれば回復していく。回復するなんて、夢のような――まさに無限エネルギーだ。


『あらあら、褒めているのかしら、けなしているのかしら』

『全てを一つで賄うのはクソだと思ったが、パンドラが無事なら、それ一つで済むというのはメリットでもあると思い直しただけだ』

 このエネルギーが何処からやってきているのか? 本当に無限なのか? 疑問に思うところはある。無限だと? 際限なく、何も消費せず、永遠に使用し続けることが出来るエネルギーなんてある訳が無い。そして、それに近いものがあったとして、それがお綺麗(クリーン)なエネルギーであるはずが無い。


 ……。


 アクシードの連中は気になることを言っていた。ナノマシーンの濃度を上げろ? 確かにそう言っていたはずだ。連中はナノマシーンの制御が可能なのだろうか?


 ナノマシーン。要は目に見えないほど小さな機械だ。マシーンと言っているが機械らしい姿をしたものだとは限らない。それこそ、ウィルスであったり、人の細胞のようなものであったり、様々だろう。色々な種類があるはずだ。連中は言っていた。『濃度を(・・・)上げろ(・・・)』と。それは同一の規格だということではないだろうか。この世界に散布されている多くのナノマシーンと同一の規格。それをアクシードが持っている?

 そして、もう一つの疑問。ナノマシーンのエネルギーは何処から来ているのか? ナノマシーンは目に見えないほど小さな代物だ。目に見えないほど小さいからといって何のエネルギーも無く動くようなものではない。無から有は生み出せないのだ。どんなに小さかろうとエネルギー保存の法則に縛られる。


 パンドラのエネルギー、ナノマシーンのエネルギー。どうにも共通点があるようにしか思えない。何か根底にあるものが同じ……そんな気がする。


 それを扱うアクシード、か。奴らは俺が思っているよりもヤバい連中なのかもしれない。連中がこの世界を支配しているマザーノルンの実行部隊だったとしても驚かないだろう。だが、そうすると、マザーノルンの支配にある街を襲撃する理由が分からなくなる。


 自作自演?


 あり得そうだが、あり得ないだろう。それをマザーノルンの端末(むすめ)たちが知らないのはあり得ない。


 ……まぁいい。


 考えることは後回しだ。


 今はこのくそったれなおもてなしに落とし前をつけるのが先だ。


『セラフ、頼む』

『ふふん。任せなさい』

 グラスホッパー号とパニッシャーを動かし、サンライスの街を守っていた防壁に穴を開けて貰う。そこから、街の中へと侵入する。


『さすがにクルマならあっさりと破壊して侵入が出来るな』

『あらあら、何をお馬鹿なことを言っているのかしら』

 セラフのこちらを小馬鹿にしたような笑い声が頭の中に響く。

『セラフ、どういう意味だ?』

『お馬鹿さんにも分かるように言えば良いのかしら。最前線から飛んでくる流れ弾を防ぐ街が、クルマの砲撃程度でどうにかなると思っているの? と、そう言えば分かるかしら』

 セラフはわざとらしく、かしらかしらと歌っている。

『なるほど』

 この街を守っていたシールドが無くなっているということだろう。

『ふふん。理解が出来たのかしら。今のこの街の状況も分かったでしょ』

『つまり、街を守っていたシールドが無くなっているということは、流れ弾をシールドで守れないということか』

『その通りなんだけど、そういう説明だとなんだか、お馬鹿な感じね』

 サンライスは最前線に最も近い街だ。いつ、最前線から流れ弾が飛んでくるか分からない。これは、どうやら急いだ方が良さそうだ。


『進路は任せる』

『ええ、任せなさい』

 サンライスの街の中をドラゴンベインがグラスホッパー号とパニッシャーを引き連れて進む。街は徹底的に破壊されている。壊されてから日数が経っているからか、人の気配は無く、辺りは静かだ。


 アクシードの連中の姿も見えない。


『ふふん。連中が待っているのは……』

『ああ、そうだろうな』


 目的地が見えてくる。


 クルマでもそのまま侵入が出来そうなほど大きなビル――クロウズのオフィスだ。


 ノルンの端末(むすめ)が隠れていたであろう施設。


 そのオフィスの前にはアクシードの連中が居た。アクシードの連中はサンライスの街の住民だったもの(・・・・・)を囲み、楽しそうにクソみたいな宴を開いていた。


 連中がこちらに気付く。


「お、クルマだ」

「また馬鹿がやってきたぜ」

 アクシードのゴーグル兵士たちが突撃銃(アサルトライフル)を構える。

「キキー! 待て待て、ここはアクシード四天王次期候補と呼ばれた、このシカーダ様に……」

 そのゴーグル兵士たちの中から大柄な猿のような男が現れる。猿のミュータントなのだろう。


 俺はその集団に150ミリ連装カノン砲による三連撃をぶち込む。色々なものと一緒に連中が吹き飛んでいく。大見得を切って登場した馬鹿もバラバラだ。


『似たような馬鹿を見た気がするな』

『ふふん。馬鹿が多すぎてどれも同じにしか見えないから』

インチキ科学による少し不思議世界。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 三下はすっ込んでろ! [一言] そういやオーキベースにもビックマウンテンにも四天王が出張ってたんだよな。 そんで今回がサンライスか……うーん剣呑。 ガム君の目的とセラフの目的は無事かしら?…
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