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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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398/727

398 時代の風32――『そこからすでに始まっていたのか』

 エレベーターの中に入る。物資搬入用なのか(もしかすると搬出かもしれないが)中はかなり広い。八人が入っても充分に余裕がある。全員が両手を伸ばしても問題ないくらいの広さはあるだろう。

『これはクルマでの移動も考えてなのか』

 だが、そうすると白壁に創られた入り口の狭さが気になる。あれは人が通ることしか考えていない大きさだった。


 ……。


 そもそも、ここは何のための通路なのだろう? 下町の連中とやり取りするための通路でないことは確かだ。

『こいつらとやり取りする価値はゼロだろう?』

『ふふん。確かに』

 外と物資のやり取りをするなら正面から普通にやれば良い。この裏口のような場所を使う必要が無い。何のためなのか、少し気になるところだが、それは今回の攻略とは関係が無い。ここのマスターを攻略し、支配すれば分かることだろう。


 俺はエレベーターの天井を確認する。脱出口はあった。もう一つ、

『後は……あそこか』

『ふふん。そうね』

 天井に監視カメラが設置されている。さすがにこれは壊しておくべきだろう。俺はエレベーターの壁を蹴り、飛ぶ。そのまま筒を持ち、光刃を発生させて監視カメラを叩っ切る。明確な攻撃行動だが、今更、問題無いだろう。


 エレベーターに全員が乗り込んだところでボタンを押す。このエレベーターの中には、これしかボタンが無い。上と下を行き来するだけだから、ボタン一つで充分なのだろう。


 そしてエレベーターが動き出す。周囲が金属の壁に覆われているため、外の状況は見えない。

『外が見えるよう透明な窓でもついていれば楽しかっただろうな』

『あらあら。それは外から(・・・)確認されなくて良かった思うべきでしょ』

『確かに』

 動いている箱を狙う馬鹿は居ないと思うが、セラフが言うようにこちらの動きが丸見えになっているよりは……いや、待てよ。

『上では今も見ているのか?』

『ええ、当然でしょ』

 監視カメラを壊したのに、今も中継されている? どうやって、ここを映している? それは下でもそうだった。中継用のカメラが設置されているようには見えなかった。カメラのついたドローンなども居なかったはずだ。俺が気付けないだけなのか? 気付かなかっただけなのか?


 分からない。


 分からないなら分かる奴に聞くしか無いだろう。


『セラフ、連中はどうやって中継している?』

『あらあら。気付けないのかしら』

 気付く?

『分からないから聞いている』

『ふふん。こいつらの武器は……?』

 俺はそこまで言われて気付く。

『なるほど』

 こいつらの武器を用意したのは上の連中だ。何か仕込まれていてもおかしくない。

『そこからすでに始まっていたのか』

『ふふん。そういうことね』

 だが、手に持つ銃器にカメラを仕込んだとして、見るに堪えるような映像が送れるだろうか。


 ……。


 そこは複数台から送られてきた映像を合成して処理するなどの近未来的な方法でなんとかしているのかもしれない。裏切り者が居て、そいつがカメラマンをしている可能性だってある。


 俺たちの状況を把握する手段は分かった。だが、分かったからといって何も出来ない。ここで連中に武器を捨てろと言ったところで、こいつらが素直に従うとは思えないし、上の連中に怪しまれてしまえばそこで終わりだ。それは俺の望まないことだ。


 俺は小さくため息を吐く。何処までも手のひらの上だ。不愉快だが、攻略のために必要なことだと、ここは我慢しよう。


 ……。


 ……。


 おかしい。


 俺が考え事をしていたのはエレベーターが到着するまで暇だったからだ。だが、警戒を怠ったつもりは無い。


 おかしい。


 連中も異常に気付いたのか不安そうな顔でキョロキョロと周囲を見回している。

「なぁ、よぉ、おかしくないか?」

「そ、それだけ上までの距離があるってことだろ」

「これって、こんななのか?」


 おかしい。


 エレベーターがいつまで経っても上に着かない。


 止まっているのかゆっくり動いているのか分からないが、これはおかしい。金属の壁に覆われ、外が見えないのも問題だ。どうなっているのかが分からない。


 不味いな。


「これよぉ、階段の方が良かったんじゃねえか」

「こんなに時間がかかるのかよ」

 上に辿り着かないことに連中が苛々し始めている。


 我らが軍師君は、その言葉を無視するように腕を組み何も言わない。不安が伝播しないように騒いでいる連中を落ち着かせた方が良いと思うのだが、不確かなことは言えないとか思っているのだろうか。


 体感で三十分ほど経過しただろうか。


「ん?」

「お、おい!」

「何だ、何だ、どうしたんだよ」

 足元からピンク色の煙が漂い始めていた。


『まさか毒ガスか』

『ふふん。落ち着きなさい。無害な煙だから。殺すつもりなら、こんな分かり易い色にしないでしょ』

 俺はセラフの言葉に納得する。確かに、本当に殺すつもりなら無味無臭の毒ガスをばらまくだろう。そして、気付いた時には手遅れになっていたはずだ。


『なるほど』

 俺たちが慌てる様子を見て楽しもうということか。

『ふふん。そういうことね』

 無害なことは理解した。だが、この状況は不味い気がする。


 エレベーターの中にピンクの煙が充満していく。


「おい、どういうことだよ、これ」

「アブジル、どうしたらいいんだ」

「おい、何か言ってくれよ。導いてくれよ」

 連中が混乱し始めている。


 そのうち、銃を乱射するような馬鹿が出てきてもおかしくない。


 どうする?

 どうすればいい?


 俺は天井を――脱出口を見ながら考える。

2022年10月9日修正

見て楽しそうもうということか → 見て楽しもうということか

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― 新着の感想 ―
[良い点] 密室でパニックはヤバい! [一言] ガム君が廃棄された時の落下時間を考慮しても上に着かないのは不自然ですもんね。 というか舞台に変化がなかったら何より観客が退屈してしまうー。 ガム君がも…
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