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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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391/727

391 時代の風25――『そうか。だが、命の対価としてはどうだろうな』

『さて、この光る刃で銃弾が斬れると思うか?』

『ふふん、試してみれば?』

『そうする』


 戦闘は続いている。


 だが、かなりこちらの分が悪いようだ。当たり前だ。


 こちらの武装は近距離(ショートレンジ)短機関銃(サブマシンガン)が中心だ。それに対して相手は中距離(ミドルレンジ)狙撃銃(スナイパーライフル)だ。こちらの射程外から攻撃されている。救いは向こうが連射の効かない武器だということくらいだろうか。


 こちらの使っている短機関銃(サブマシンガン)は上の商会が用意しただけあって悪い武器ではない。だが、問題は射程距離だ。近距離(ショートレンジ)だからといって、近くしか攻撃が出来ない訳ではない。弾は届いている。しかし、どうしたって威力を発揮する距離というものは覆せない。弾をばらまく特性上、飛距離による威力の減衰が大きいようだ。

 連中は前面を透明なシールドに覆われたフルフェイスのヘルメットに全身を覆うプロテクターを身につけている。射程外からの銃弾など当たっても衝撃を感じる程度でしかないようだ。それに対して、こちらは気休め程度の(ゴミクズから引き剥がしたであろう)金属板を貼り付けただけの服を着ているような連中ばかり――武器は良くても防具の性能に差がありすぎる。


 一ヶ所しかない扉の周りに陣取り、そこから出てきた相手を集中砲火で倒す方法ならなんとかなったかもしれない。


 だが、受け身に回り、敵に展開され、狙い撃たれているような状況では、もうどうしようもないだろう。


 下手に銃弾が届いているから、警備兵の連中に殆ど効果が無いと気付けていない。そりゃあ、警備兵にも間抜けは居る。無駄に突撃してきたような警備兵の数人は倒せている。それも勘違いに拍車を掛けているのだろう。

 間抜けな警備兵が死に、距離をとって戦っているまともな警備兵だけが残る。向こうはこちらの射程外から狙い撃つ――それで充分、こちらを殲滅出来るだろう。


 俺は動く。


 短機関銃(サブマシンガン)を馬鹿みたいに振り回していた男の前まで動き、その脳天へと飛んできていた銃弾を光刃で斬る。


 ジュッと焼けたような音がして銃弾が光刃に消える。


 どうやら問題無く光刃で銃弾が斬れるようだ。


 斬れる?


 消滅させるとかの方が近いかもしれない。


「お、お前、もしかして、俺を助けてくれたのか?」

 短機関銃(サブマシンガン)を持っていた男が驚いた顔で俺を見ている。別にこの男を助けたつもりはない。単純に、自分の方へと飛んできた銃弾で試して、斬れなかった時が怖かっただけだ。


 だが、これで実験は終わった。


 この光刃で問題無く銃弾は斬れる。後はエネルギーの残量に注意するだけだろう。


 俺は警備兵たちへと走る。


 走り、飛んできた銃弾を斬り、駆け抜ける。


 そして警備兵の狙撃銃(スナイパーライフル)を持つ腕を斬る。銃を持った手が、血しぶきとともに舞う。


 駆け抜ける。


 次々と武器を、その武器を持った腕を斬り落とす。


 集まっていた警備兵たちが腕を抱えうずくまる。


 悪くない。


 あのフェーを名乗る少女は、このフォトンセイバーのエネルギー残量は一時間だと言っていた。これならまだまだ戦えそうだ。


 悪くない武器だ。


「お、おおー! 反撃だ」

「殺せ」

 連中が喜び、叫び、短機関銃(サブマシンガン)を撃ちながら、こちらへと駆けてくる。


 ……俺に当てるなよ。


「た、助けてくれ」

「うう、痛ぇ。俺たちは降参する」

「畜生、俺たちは(コイル)で雇われていただけなんだ」

 うずくまった警備兵たちからそんな声が出ている。


「は! 上で良い暮らしてたような連中がよぉ!」

「今更、遅ぇ」

「お前らに仲間がやられたんだぞ!」

 うずくまっていた警備兵、武器を失った警備兵が連中によってトドメを刺される。命乞いは聞かない方針のようだ。


 ……。


 そして、声が聞こえなくなる。


 ここでの戦闘は終わりだ。


 連中が俺の方へとやって来る。

「なぁ、おい、なんでこいつらを殺さなかったんだ」

「そんな甘ちゃんでこの先の戦いについていけるのかよ」

「ええ、そうですよ。甘えは、隙を生みます」

 連中から俺に向けてそんな言葉が飛んでくる。


『助けたお礼でも言われるかと思えば面白いことを言う』

『ふふん、馬鹿なんでしょ』

『俺もそう思う』

 俺が連中の武器を狙ったのは何も殺したくないという慈悲の気持ちからでは無い。確実に無力化したかったからだ。


 この世界――この時代の連中は下手に機械(サイバー)化みたいなことが出来るおかけで首を飛ばしても、心臓のあるであろう部位を貫いても、死なない可能性がある。首を飛ばしました。でも、脳は体にくっついてました。反撃されました。それでは洒落にならない。


 特に今回は単騎駆けだ。一人で複数を相手するなら、確実に、素早く、相手を戦えないようにする必要がある。


 だから、武器を狙った。


 と、そんなことを説明しても無駄だろう。


 俺は肩を竦める。


『この警備兵、賭けのことを知っていたと思うか?』

『ふふん。知っていると思う?』

『思わないな』


 こいつらも賭けの駒の一つだったのだろう。


『あら? 上で話が出てるけど、報酬は良いみたいよ』

『そうか。だが、命の対価としてはどうだろうな』

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― 新着の感想 ―
[良い点] 高くついたな! [一言] 六文あれば足りたろうに。 とりあえず最初の難関は難なくクリアーですね。 しかしこのお荷物たちを最終局面までおんぶに抱っこするのは骨が折れそうだ。
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