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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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297 最弱の男32――『確認だ。確認は必要だろう?』

 人一人がやっと通れるほどの狭い通路を進む。そんな隠し通路はすぐに終わり、開けた場所が見えてくる。


 部屋だ。あまり広くない部屋だ。


 その隠し部屋には、自分の背丈と同じくらいの大きさの、砂時計の中央に丸い球体が収まった謎の機械があった。


 まさか端末か?


 端末――ノルンの娘は俺たちの目的の一つだ。生憎(あいにく)、目的のもう一つであるその端末の制御を奪った人間の姿は見えない。端末の制御を奪い返すことを考えれば逆にタイミングが良かったかもしれない。


 だが、こんなにも簡単に見つかって良いのだろうか? あまりにも簡単過ぎる。まるでここに誘導されているかのような、そんな不快感がある。


 いや、考えすぎか。俺は首を横に振る。


 この隠し通路を見つけたのはミカドだ。ミカドでなければ発見することが難しかったであろう隠し通路だ。敵の虚を衝くことが出来たのかもしれない。


『待ちなさい』

 隠し部屋に入ろうとした俺にセラフが待ったをかける。

「危ない!」

 ミカドが叫ぶ。


 俺の目の前で天井が崩れ、落下してきた。俺は短機関銃(サブマシンガン)で落下してくる天井を――瓦礫を撃ち、砕き、破壊しながら、大きく後ろへと飛び退く。


 そして隠し部屋が落ちてきた瓦礫に埋まる。掘り返すのは難しいだろう。瓦礫を取り除けたとしても、あの謎の装置自体が崩れた天井に巻き込まれ壊れているかもしれない。


「端末があったと思ったんだがな」

『ふふん。こんな場所にある訳がないでしょ。馬鹿なの?』

 俺はセラフの言葉に肩を竦める。


 こんな場所に、か。


 天井が崩れたのは偶然だろうか? もしかすると罠だったのかもしれない。端末を見つけたと喜んで部屋に入った奴を殺す罠。ミカドの制止の声がなければ危なかったかもしれない。


「ごめんよ。見つけた隠し通路がこんな風になっているなんて……」

 ミカドは自分が見つけた隠しスイッチでこうなったことに責任を感じているようだ。

「気にするな」

『あらあら。少しは気にしたらどうかしら。馬鹿なの? ねぇ、本当に馬鹿なの?』

 俺はセラフの言葉に肩を竦め、元の通路に戻る。


 隠し通路は空振りだった。俺は通路を進む。


 すると――


「ガム、あそこが怪しい気がする」

 その途中でミカドが走り出す。そしてしゃがみ込み、何かをする。


「やっぱりあったよ」

 それは床に隠されたスイッチだった。こんな瓦礫だらけの通路に隠しスイッチか。


「押してみるよ、いいよね?」

 俺は頷きを返す。


 ミカドが隠しスイッチを押すと、先ほどと同じように通路の途中の壁が動いた。


「やったね、隠し通路だよ」

 隠し通路だ。俺は隠し通路に入る。先ほどと似たような狭い通路だ。そして、すぐに小さな部屋に出る。奥には先ほど見たのとよく似た砂時計の中央に球体がくっついたような謎の装置がある。


「危ない!」

 ミカドの声。


 俺が部屋に足を踏み入れようとした瞬間、その足元が崩れる。崩落していく。俺は慌てて飛び退き、難を逃れる。ミカドの声がなければ崩落に巻き込まれていたかもしれない。ギリギリのところだった。


 あの謎の装置も崩落に巻き込まれている。何の装置かは分からないが、無事ではないだろう。


 俺はため息を吐き、元の通路に戻る。


 隠し通路を見つけたと喜んだ奴を罠にはめる。随分と悪質な仕掛けだ。


「あったよ!」

 ミカドがまたも隠しスイッチを見つける。新しい隠し通路だ。


 先ほどと同じような狭い通路。端末もどきのある部屋。今度は部屋に入った瞬間、後ろに格子が落ち、退路が塞がれる。そしてこちらを押し潰すように左右の壁が迫ってきた。


 俺は振り返り、落ちてきた格子を短機関銃(サブマシンガン)で撃ち、破壊し、蹴破る。隠し通路に戻る。その瞬間、左右の壁が閉じる。中の装置は壁と壁に押し潰されて壊れているだろう。


 つまり、この部屋もハズレだ。


「あったよ!」

 次の隠し通路では釣り天井が落ちてきた。


「あったよ!」

 その次の隠し通路には落とし穴があった。


「あったよ!」

 謎の装置に辿り着けた部屋もあるが、それはただのハリボテだった。


 そんなことが続く。


『このお馬鹿さんは、さっきから何をやっているのかしら』

 セラフの呆れた声が俺の頭の中に響く。

『確認だ。確認は必要だろう?』

『まったくさっきから同じことを繰り返して馬鹿みたいね。確認? あらあら、何か意味があるのかしら』

 俺は肩を竦める。隠し通路は罠しかないのかもしれない。だが、罠だと分かっていても、もしかしてがある。可能性がある限り確かめる必要があるだろう。


 と、俺が隠し通路に苦戦していると下から銃声が聞こえてきた。

『ふふん。お前がお馬鹿で無駄なことをしている間に、連中が再突入してきたみたいね』

 シンたちだろう。


 銃声が聞こえる。つまり、何かを見つけ、戦闘になったということだ。


 こちらは何も進展が無い。


 まるで時間稼ぎをされていたかのように、無駄な時間を過ごしている。


 いや、無駄だと分かっただけ良かったのか?


 それにしても無駄に長い通路だ。外から建物を見た時にこれだけの大きさがあっただろうか。それだけ巧妙に、外からでは分からないように、悪意を持って建てられたのか? ここが元々、何の施設だったのか分からないが、隠し通路や隠し部屋がある施設なんてろくなものではないだろう。


 悪意、か。


 俺は通路を見る。瓦礫だらけの通路はまっすぐ続いている。


 まっすぐ?


 何かがおかしい気がする。おかしい? だが、それが分からない。


 チリチリと頭の奥で焦燥を伴うような警告が聞こえる。


 俺は何かを見逃しているのか?


「ガム、どうしたんだい?」

 俺はミカドの言葉に首を横に振る。


 俺が出来ることはこの階を探索することだけだ。通路が無限に続いている訳ではない。そのうち終わりが来るだろう。


 調べ尽くせば良いだけだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 無限ループって怖くね!? [一言] これは結構苦戦してますねえ。 突破口はあるのかー。
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