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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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274 最弱の男09――『こいつらも俺と同じ目的か』

 作業班らしい受付嬢たちが集まり、俺のグラスホッパー号に巨大な高射砲を銃座ごと連結させる。ご丁寧にもその高射砲の銃座には車輪がついていた。


「あの、あの、説明します」

 連結を行っていた受付嬢の一人が作業を終え、こちらへとやって来る。


『ふふん。私がいるのに説明なんて不要でしょ』

『いや、一応聞いておく』

 確かにセラフがいるならわざわざ情報を聞く必要はないだろう。だが、何が起こるか分からない。一応、俺も把握しておいた方が良いだろう。

『一応? 何かが起こる? 馬鹿なの? ふふん。そんなこと万が一にも起こらないから』

 俺はセラフの言葉を無視する。


「ああ、教えてくれ」

「ま、まずは重要なことからお伝えします」

 俺は頷きを返す。


「あの、こちらのS610レーヴァティンはレンタルとなります。破損または破壊された場合、べ、弁償してもらうことになります。申し訳ありません」

 S610レーヴァティンというのが、この対空高射機関砲の正式名称なのだろう。

「なるほど。言っていることは分かった。だが、俺が言うのもなんだが、オフィスのためになることなのに、それを俺が負担するのか?」

 俺の言葉にもう一人の受付嬢が反応する。

「そう言われましても、こちら(レーヴァティン)を借りたいと言われたのはガム様からでは? 壊したら弁償するのは当然でしょう」


 俺は肩を竦める。


「分かった。他に注意事項は?」

「えっと、こちらを」

 言葉をどもらせていた受付嬢が、ひょいと抱えるように先端の尖った細長い筒を持ってくる。大きい。1メートルくらいはあるだろうか。


「それは?」

「あ、はい。こ、これは、レーヴァティン用の弾となります」

 俺はグラスホッパー号と連結された高射砲を見る。砲身だけで十メートル近い。本体が大きいのだから弾も大きくなるのだろう。


 俺は弾を運んできた受付嬢からそれを受け取り、グラスホッパー号の荷台に転がす。


「この一発だけなのか?」

「あ、はい。今後のことを考えると……お渡し出来るのは、えっと、用意出来るのが、それだけになります」

 何処か申し訳なさそうに受付嬢の一人が頭を下げる。

「無償で提供出来るのはここまでです。レンタル代をとることもなく、弾も用意させていただきました。それだけでも充分では?」

 もう一人の受付嬢が少しキツめの口調でそんなことを言っている。


 おどおどした腰の低そうな同情を誘う受付嬢とハキハキとした攻撃的な受付嬢か。これはもしかしなくても、そういう役割分担なんだろうな。


お前(セラフ)がいて手の内が分かっている俺には無駄なのにな』

『だから、不要だって言ったでしょ』

 セラフの不機嫌そうな声に俺は肩を竦める。


「分かった。これ以上の説明は不要だ」

「え? あの、でも、装填方法や操作方法は……」

 おどおどした方の受付嬢が困ったように俺と高射砲を見比べている。


「まぁ、何とかなるから心配しないでくれ」

 俺はグラスホッパー号に飛び乗る。万が一も無いというセラフの言葉を信じよう。


『なんとかしてくれるんだろう?』

『ふふん。任せなさい』


 俺はグラスホッパー号を動かす。グラスホッパー号のタイヤが空転しそうになりながら唸りを上げる。

 そして、グラスホッパー号がゆっくりと走り出す。高射砲はその見た目通りかなり重いらしく、銃座に車輪がついていても引っ張るだけで一杯一杯のようだ。グラスホッパー号のパンドラを二つに拡張していなければ動かすことは出来なかっただろう。


『こんなものをオフィスの連中はどうやって運んだんだ?』

『ふふん。分からないの?』

『分からないな』

『ふふん。組み立てたんでしょ』

『ああ、なるほどな』

 俺は理解する。

『バラして保管していたのか』

 バラしていたとしてもこのサイズだ。部品一個一個がかなりのサイズになるはずだろう。そんなものを隠すとなると……もしかするとオフィスの地下にこの高射砲の部品が眠っていたのかもしれない。

『となると地下への出入り口はあのドラム缶の下だけではない、か』

『ふふん。当然でしょ』

 その辺りの情報もここ(レイクタウン)を支配下においたセラフなら把握していてもおかしくない。だが、それでもマザーノルンにバレないため調べきれない部分もあったはずだ。

『だろう?』

『ふん。そこは否定しない』


 ……。


 セラフが全て把握していると考え、それを前提に行動するのは危険だな。


 連結した高射砲は、瓦礫を蹴散らし問題なくグラスホッパー号の後をついてくる。急ブレーキや急旋回は難しそうだが、ただ走らせるだけなら大丈夫そうだ。


 そして橋を兼ねた水門が見えてくる。


『またこのパターンか』

 だが、そこには武装した集団が待ち構えていた。人が乗り込む形の作業用ロボットのようなものが三つ、車輪のついた戦車タイプのクルマも見える。ゴツい銃火器を持った奴も四人ほど。


 俺はグラスホッパー号を止める。


 バンディットたちではない。しっかりと武装した集団――クロウズだろう。


『ふふん。どうするつもり?』

『人間らしく対話を試みてみるさ』

 この数……グラスホッパー号だけで戦うのは無謀だ。


 さて、どうする?


 俺が行動するよりも早く向こうに動きがあった。


 車輪のついた戦車タイプのクルマのハッチが開き、そこから男が現れる。


「また会ったな。勘違いするな。こちらに戦うつもりはない」

 それは水門を管理していたじいさんのところで会ったばかりの片眼鏡の男だった。


『こいつらも俺と同じ目的か』

『ふふん。その可能性は高そうね』

算用数字と漢数字の混在について。

読みやすさを優先し、一部、文章作法外の用い方をしています。

ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いざ出陣! [一言] あー、取り調べとかでアメとムチに分かれるやつー。 人造人間もいろいろ心理を研究してますねえ。 さて協力態勢は築けるかな?
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