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かみ続けて味のしないガム  作者: 無為無策の雪ノ葉
湖に沈んだガム

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243 神のせんたく28――「最後はカートに乗って銃撃戦でもするのか?」

 第六の関門を突破し、次の関門へと向かう。


「とまりなさい」

 七番目の関門には、今までと同じように烏帽子の女が待ち構えていた。

「ここが次の関門か」

 烏帽子の女が頷く。俺は抱えていたウズメを降ろす。


 そして、改めて烏帽子の女を見る。

『どの関門でも同じ顔、同じ姿で待ち構えているが、まさか同一人物――同じ個体ということはないよな?』

 人造人間ならあり得るかもしれない。

『ふふん。当然違うに決まってるでしょ』

 だが、セラフは否定する。

『そうなると……随分とスタッフが多いな。なるほど、処理落ちするのも当然か』

 各関門に最低でも一人……多分、二、三人はスタッフとして人造人間が控えているだろう。となると、今まで俺が見てきたどのオフィスよりも人造人間の数が多いのではないだろうか。


 ……と、話が逸れたな。


「それで、ここでは何をすればいい?」

「ここに五つの穴がありますよ。そのうちの一つが最後の関門へと通じていますよ」

「……また運ゲーか」

「何か言われましたか?」

 烏帽子の女が俺の呟きを拾う。

「なんでもない。それで間違ったところに入るとどうなる?」

 俺は肩を竦めながら烏帽子の女に確認する。

「長い迷路になっていますよ。迷路を抜けてここに戻ってきて、再び穴を選んでください」

「なるほどな。理解した」


 どうやら、運に任せるだけあって外れの穴に入っても減点はないようだ。しいて言えば、外れに引っ掛かって時間をかけてしまって、順位を下げてしまうことが減点に繋がるだろう。


「ウズメ、行こう」

 俺はウズメに手を伸ばす。

「はい」

 ウズメが俺の手を握る。


 さあ、後は最後の関門に挑むだけだ。


『ふふん』


 俺はセラフの笑い声を聞きながら正解の穴へと飛び込む。そのままトンネルのような通路を抜ける。


 ……そこは何も無い大きな広場になっていた。


『ただ広いな』

 トンネルを抜けた先は、野球でも余裕で出来そうな広さの何も無い広場だった。広場なのだから、広くて当然か。


「ウズメ、あなたが一番です」

 そこでも烏帽子の女が待っていた。整いすぎるぐらいに整った平たい顔の女だ。


 烏帽子の女の言葉を聞いたウズメが嬉しそうな顔で俺を見る。

「そうか」

「七つ目の関門を突破したことで得点を10加算します。一番乗りのあなたたちには、さらにボーナス得点が10加算されます」

 烏帽子の女の言葉に俺は肩を竦める。


 七つの関門を抜けて70点。さらにボーナスで10点。これで俺たちは80点を獲得したことになる。奉納の舞いとあわせれば99点だ。奉納の舞いで40点を獲得しているミセンと戦うにはまだ少し厳しい得点かもしれない。


 最後の関門の20点も取っておきたいところだ。


「最後はカートに乗って銃撃戦でもするのか?」

 俺の言葉を聞いた烏帽子の女は真顔のまま首を傾げる。

「言っている意味がわかりませんが、最後のかんもんは、こうほしゃの守人(もりびと)に戦って貰います」

「戦う?」

 烏帽子の女が頷く。

「どのこうほしゃの守人(もりびと)たちが優秀なのか、守人(もりびと)同士でたたかって決めてもらいます」

「護衛――守人(もりびと)同士で戦うのは分かった。だが、もし、守人(もりびと)が居なかった場合はどうなる?」

「参加が出来ません。つまり得点は与えられないということです」


 俺は肩を竦める。少し考えれば分かることだったな。


「それで他の連中がやって来るまで俺たちは待っていればいいのか?」

 俺の言葉に烏帽子の女が頷く。

「それは随分と待たされそうだ。食事や飲み物でも用意して欲しいくらいだな」

 俺の言葉を聞いた烏帽子の女が今度は首を横に振る。

「あなた方がここに来た時点でかんもんは終了となり、誰が早くここに到着するかを競うものになります」


 関門が終わり? つまり、その関門で得られるはずだった得点が手に入らないということか。

『急いで正解だったな』

『ふふん』


 その場でのんびりと待っているとミセンたちがやって来た。ミセンと老人、それにククルと名乗った翁面の女の姿もある。

「あなたたち、何をしているか分かっているの?」

 俺たちの存在に気付いたミセンが、強くこちらを睨みながら、そんなことを言っている。その手に持った扇は、折れそうなほど力強く握りしめられていた。


 俺は肩を竦める。


「ミセン、ここまでの得点は58です」

 烏帽子の女が告げる。


 58点?


 奉納の舞いの得点とあわせれば98点か。一応、1点だけ俺たちの方が勝っているが、いつ追い抜かされてもおかしくない得点だ。


 そして、次にあまり特徴のないサンコたちが到着する。サンコと冴えない中年の男、白粉(おしろい)で顔が塗り固められた女の三人だ。


「サンコ、ここまでの得点は37です」

 烏帽子の女が告げる。


 サンコの奉納の舞いの得点は33点だったはずだ。これで70点、か。


 次にかなり遅れてカラスガがやって来る。護衛は二メートルを越えた背丈の男だけだ。あの日焼け男は失格になっているのだから当然だな。


「カラスガ、ここまでの得点は16です」

 烏帽子の女が告げる。


 カラスガの奉納の舞いの得点は25点だったか。足して41点。もう逆転は難しいだろう。


 そして、最後に案内人に連れられてヤハスガがやって来る。護衛の姿は無い。ヤハスガは人を呪い殺しそうなほどのキツい目つきで俺たちを見ている。


 ……ヤハスガ、生きていたか。


「ヤハスガ、ここまでの得点は0です」

 烏帽子の女が告げる。


 ヤハスガの奉納の舞いの得点は22点。護衛も居なくなっている。リタイアした方が良いような状況だな。


「最初にウズメとカラスガの守人にたたかってもらいます。次にミセンとサンコの守人にたたかってもらいます。勝ち残った者同士がたたかい、勝った方が20点です。負けた方は10点となります」

 烏帽子の女の説明が続く。


『これはどういう組み合わせなんだ?』

『一着と最下位、二着と最後から二番目ってことでしょ。そんなことも分からないの? 馬鹿なの?』

 なるほど。護衛の居ないヤハスガを除外したということか。


「相手を全員、戦闘不能にすれば勝ちです。勝てないと思った時は無理せず降参してください」


 ……なるほどな。


 普通に二対一もあり得るのか。にしても、戦闘不能とは……殺しも有りということか。


 なんとも嫌な予感しかしない戦いになりそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 急に物騒になった! [一言] ここはダメ押しでポイントを稼いでおきたいところですねー。 低スぺ個体を複数同時に別行動…… そりゃセラフも同情するレベルというか、オフィスの元マスターの挙動…
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