221 神のせんたく06――『つまり山賊か』
カウボーイハットをかぶった武器屋の男と別れ、天部鉄魔橋を横目に、ビッグマウンテンへの道を進む。
……。
武器屋の男は気になることを言っていた。ゲンじいさんの孫娘がマシーンに殺されている?
どういうことだ?
クロウズだった息子が死んでいることは聞いた。それは間違いないだろう。だが、孫娘のイリスは生きている。
どういうことだ?
色々と考えられる可能性はある。
あの武器屋の男が勘違いしている。
ゲンじいさんにはイリスの他にも孫娘がいた。亡くなったのはその子のことだった。
本当の孫娘は亡くなっていてイリスは養女だという可能性。だが、ゲンじいさんから教えて貰った話では――この可能性は低そうだ。
……。
俺は首を横に振る。
どの場合でも正直、どうでも良い話だ。ゲンじいさんとイリスが俺を助けてくれた――俺の命の恩人だということ。その事実以外どうでも良いことだろう。
俺は恩がある。それだけだ。
『あらあら、考え込んでいる場合? さっそく、お出ましでしょ』
俺はセラフの言葉を聞き、モニターを確認する。そこには、粉塵をあげ、こちらに迫る大きな蜥蜴――そしてそれに跨がった良く分からない無数の棘がくっついたボディアーマーを身につけた集団が映し出されていた。
「ひゃあ! クルマだぜぇ」
「油、油! からあげ定食! うまうま!」
「ご飯のオカズは油の数だぜ」
バンディットたちだ。相変わらず良く分からないことを喋っている。もしかするとバンディットたち自身、自分が何を言っているのか理解していないのかもしれない。何か、気合いを入れる言葉だと思っているのか、それともそういう鳴き声を持ったバンディットという生き物なのかもしれない。
『ふふん。野生の山バンディットの登場ね』
『つまり山賊か』
山に棲息するバンディットたちはマシーンではなくビーストを乗り物としているようだ。
山バンディットたちは手に棍棒のようなものを持っている。あれで殴りかかってくるつもりなのだろう。
山バンディットの一人がドラゴンベインに追いつき、棍棒を叩きつける。その叩きつけた勢いのままドラゴンベインのシールドに跳ね返され、吹き飛ぶ。大蜥蜴から吹き飛んだ、その山バンディットの一人が後続の大蜥蜴にキャッチされ、そのまま食われていた。
どうやらあまり仲良しという訳でも無いようだ。
俺はHi-FREEZERを動かし、こちらへと群がる山バンディットたちを狙う。細長い銃身から冷気が生まれる。霜が降りるほどの冷気が山バンディットたちを飲み込み、輝かせる。最初に山バンディットが乗っている大蜥蜴の動きが鈍り、次にその山バンディットたちが血と氷の粒を吐き出し、動かなくなる。
単純に凍らせるだけの武器だが生物には効果が抜群だ。
動かなくなった山バンディットたちを横目に山道へと入る。意外にも、山道には、獣道よりはマシというレベルではあるが、舗装された跡が残っていた。かつてはここに山頂まで続く大きな道が走っていたのかもしれない。
木々など自然の姿は殆ど無く、ゴツゴツとした岩肌が剥き出しになっている。
かつて道だったアスファルトの残骸を無限軌道で踏みならし、山頂へと続く道を進んでいく。
剥き出しとなった山肌は荒く、厳しいものだが、それでもその中にいくつか小さな草や花の姿を見る。自然の力強さというものだろう。登山家は挑む山に神性を感じ、敬い恐れるというが、俺も似たようなものを感じているのかもしれない。セラフなどからしたら、人らしい俗っぽい感傷に過ぎないのだろうが。
しばらく走り続けると、ドラゴンベインよりも大きな牡鹿が現れた。牡鹿の角は大きく戦車なんて軽くひっくり返せそうなほど立派だ。
牡鹿はこちらを馬鹿にするような歪んだ笑顔を浮かべ、ドラゴンベインと並走する。物珍しくて着いてきているのか、それとも獲物が隙を見せるのを待っているのか。
枯れた大地にこれほど大きく力強い野生の生き物が棲息している。生物の力強さ、神秘を感じる。
『ふふん。格の違いを思い知らせたら?』
『いや、不要だろう。襲いかかってこないなら無理に戦う必要はない。もしかしたら神の使いかもしれないだろう?』
『ふふん。神とか』
セラフの俺を馬鹿にしたような笑い声が頭の中に響く。人工知能からしたら神なんて信じるに値しない、人が見る妄想……程度のものなのかもしれない。
それとも自分たちこそ、神だと思っているのか。
この世界を支配しているマシーンの親玉であるマザーノルンは神と言っても過言ではない存在だろう。
こいつらにとってみれば、神秘的で雄大な自然も、力強い生物も、ただ支配が終わった大地と管理している生き物でしかない。
しばらく並走を続けた牡鹿だったか、こちらが何もしないことに飽きたのか、ぶるると荒い息を吐き出し、岩と岩の間に消えていった。
周囲を警戒しながらドラゴンベインを走らせ、空が赤く染まりだしたところでいくつかの建物が見えてきた。この時代で初めて見る藁葺き屋根の建物――その近くには段になった田んぼの姿も見える。米を育てているのだろうか。
……こんな岩しかないような場所で?
よく見れば田んぼまでの用水路が作られている。何処からか水を引っ張ってきているようだ。
何故、こんな岩しかないような場所に水田を作る? 無茶があるだろう。
……。
気にしたら負けか。
とりあえず何処か休める場所を探すべきか。それともまずはオフィスに向かうべきだろうか。
とにかく御山に在る集落に到着か。
そういえば、この集落の名前を聞いていなかったな。
ENDER LILIESをCクリアしました。アーリーアクセスでは隠していた牙を剥く歯ごたえが凄い。すごい! 隠しの隠し方がちょっと頭がおかしい。浮く攻撃を活用するとか、空中ダッシュで柱の下を抜けて二段ジャンプで逆方向に張り付くとか、昔の高難易度アクションゲームを思い出すレベルでびっくりだよ! 次はHadesかなぁ。




