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154 首輪付き41――『俺が言っているのはツンデレのことだ』

『それで、ここからどうするつもり?』

 セラフは何処か呆れた様子だ。


 あの女が目指す場所は何処だ? 何を狙っている?


 俺は首を横に振る。


『あのオリカルクムと名乗った女が何を狙っていようが、ここのトップと話をつけた方が手っ取り早い』

『ふーん』

『お偉いさんの居る場所なんて高い場所と決まっている。この階を探索する。そのついでに通信を妨害している装置を見つけたら破壊する、それだけだ』


 俺の右目に四角い枠と赤い光点が表示される。


『これは?』

『この建物の外観、これまでのパターンから解析した構造とターゲット位置の推測』

『助かる』

『ふん、勘違いしないで。あくまで推測だから。期待値は60パーセントもないから』

『それでも助かる』


 セラフがツンデレのテンプレみたいなことを言っている。通信が妨害された状況では出来ることが少なく、俺に協力しなければ不味いと思ったのだろう。


『はぁ? ツンデレって何?』

 まずは通路にそって進む。通路の途中には個室に続くだろう扉も見えるが、とりあえず無視する。まずはセラフが予想した光点の場所へ行ってみるべきだろう。

『普段はツンツンとつれない態度、キツい態度を取るが、そういった人物がデレデレとした甘い態度を取った時に使う言葉だろ』

『突然、何を言い出すの? 狂ったのかしら?』

『俺が言っているのはツンデレのことだ』


 俺の言葉を聞いたセラフが頭の中で大きなため息を吐いている。


『突然何を言い出すかと思えば、馬鹿なの?』


 俺は肩を竦める。


 この階には円筒形たちの気配が無い。防衛装置のようなものも無いようだ。油断することは出来ないが、これならあの女よりも早く目的の場所に辿り着けるかもしれない。


 目的?


 あの女の目的は分からないが、先回り出来るだろう。


 この階に防衛装置が置かれていないのは、この下の階で防ぐつもりだからか?


 俺は首を横に振る。違うな。エレベーターは五階――この階にも止まるようになっていた。


 四階に防衛装置が集中していると考えるのはおかしい……か。


 防衛装置が無いのか、それとも動いていないのか。どちらにせよ、俺にとっては幸運だ。


 何事もなく目的の部屋の前に辿り着く。


『ここか』

 俺は取り付けられた重厚感のある木製の扉を押し開ける。


 広い部屋、そこで待っていたのは……。


「へぇ、お前が来るのか」

 何処かで見た覚えのある女と氷漬けされたかのように閉じ込められたカスミだった。


「カスミ、だと」

 オフィスに向かうと言って消えたカスミ。そのカスミが驚いた表情のまま四角い氷の中に固まっている。普通の人間なら死んでいるかもしれないが、カスミは人造人間だ。氷を砕き、中から取り出せば助けることは出来るだろう。


「ああ、これ? これならこうやって反省してもらってる。だってさァ、機械のくせに人の真似事をして! 立場を分からせる必要……あるだろ?」

 目の前の女が歪んだ笑みを浮かべている。


 あのオリカルクムといい、この目の前の女といい、俺が出会う女は狂った奴ばかりだ。


「お前は何者だ?」

「俺を忘れたのか? って、あー、名乗っていなかったかな」

 女が苦笑しながら頭を掻いている。


 俺はこの女を知っている。


 覚えている。


 あの時の俺は殆ど意識が無いような状態だった。


 それでも覚えている。


「俺はこのマップヘッドの支配者だぜ!」

「お前がガロウ、か」


 女が少し不機嫌そうに笑う。

「なァんだ、知ってるじゃないか」


 俺を助けた女。


 あのカバ頭たちに殺されたと思っていた女。


 生きていた。


 そして……。


 何故かカスミを捕らえている。

 何故か、ここの支配者をやっている。


「何がしたい? クルマを取り戻すことか?」

 グラスホッパー号は元々、この女――ガロウたち兄妹の持ち物だったらしい。そのことでウォーミで馬鹿(ターケス)に絡まれ、ここでも狂った女(オリカルクム)に絡まれた。


「今更、そんなことはァどーでもいいんだよッ!」

 女がカスミの入った氷を叩く。


「あのまま地下で奴隷らしくぐるぐる回ってればァ良かったんだよ。そうすれば生き残れたのにさァ。助けてやった命くらい大事にしたらどうなんだァ!」

 俺は肩を竦める。

「意味が無いことは嫌いなんだよ」

「あ? はは、確かに、確かにそうだよな、そうだよなァ。あれ、まったく意味が無いんだぜ。最高だよな! 奴隷の心を折るだけの、まぁったく意味が無い玩具だからさァ!」

 女が叫んでいる。


「で?」

 俺は肩を竦める。

「餓鬼が。お前は何がしたいんだよ。何をしに、ここに、ここまで来たんだよ!」

「ここに来たのは成り行きだ。目的はマップヘッドの支配権を奪うことか?」


 ガロウの顔から歪んだ笑いが消える。

「なるほどなぁ。なァるほどなァ。俺に成り代わって偉くなりたいって意味じゃなさそうだ。この機械の仲間だけはあるのかァ。お前も知っている側、知った側なのかよ」


 何を言っている?

 何を知っている?


 カスミたちが人造人間だということか?

 オフィスがマザーノルンという人類の敵の手先だったことか?


「知っているなら俺に協力してくれたらどうだ?」

「馬鹿がよぉ、お前もそっち側なんだろう!」


 ガロウがヨロヨロともつれるように歩き、それを取り出す。


 それは――。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あ、あんたの為にやったんじゃないんだからね! [一言] ツンが多くてデレが少ないことに目をつむれば確かにセラフはツンデレ枠。 しかし、そんなガバ尺度ではターケスあたりまで内包してしまうぞ、…
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