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147 首輪付き34――「どういうことだ!」

 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 迫るドリル付きの壁に追いつかれない程度に休憩を入れながらレバーを押していく。


 体力を温存するように休憩しながらレバーを押す。


 レバーを押す。


 いつまでこんなことをさせるつもりだ? 俺が力尽きるまでやらせるつもりか?


 レバーを押し、少し休憩する。迫るドリル付きの壁を確認する。


 レバーを押し、少し休憩する。一気に押しても、ただぐるぐる回るだけで意味がないのだから仕方ない。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 レバーを押し、少し休憩する。


 追いつかれない程度に……、追いつかれない程度に……。


「きーこーえーているかねー」

 謎の声が聞こえ、朦朧としていた意識が覚醒する。


 今、俺は無意識でレバーを押していたようだ。これは……少し不味いな。


「誰だ」

「頑張っている六号にご褒美なのだーよー」

 声はレバーのくっついた円柱の上からしている。もしかすると、そこにスピーカーのようなものが設置されているのかもしれない。


「壁を見たまへ」

 声に誘導されるまま部屋の壁を見る。


 そこにはいつの間にか丸いアナログ時計が設置されていた。現在の時刻は3:30――この時間になったから俺に声をかけたのだろうか?


「見えただろう。あの短い針が赤い線を越えたら、今日の仕事は終わりなのだ。うれしいだろう」

 俺は壁のアナログ時計を確認する。赤い線は四を示している。つまり、この作業は後三十分で終わりということだ。


「おっと、手が止まっているようだーねー。死にたくなければ仕事を続けるのだ。それとだね、仕事中の私語は厳禁なのだよー。次に私語が聞こえたら追いかける速度を倍にするのだ」


 俺は小さくため息を吐く。


 倍、ね。


 あのドリル付きの壁が迫る速度を倍にされると今みたいに休憩することは出来ないだろう。


 それは俺の命に関わる。


 やれやれ。


 静かにレバーを押し続けることにしよう。


 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。


 時計が設置されたことで分かったことがある。


 この円柱を一周するのにかかる時間が約三分。つまり十周もすれば作業は終わる。


 レバーを押す。

 レバーを押す。

 レバーを押す。

 レバーを押す。


 円柱に対して車輪のようにぐるっと回っている関係上、どうしても時計を背にし、見えなくなってしまう場所がある。だからこそ、レバーを押し、時計の表示が見えてきた時が嬉しくなる。


 レバーを押す。押し続ける。


 これで十周目。これで終わりだ。


 終わったのだ。


 ぐるっと回り、時計の表示が見えてくる。


 ……。


 ……。

 ……。


 時計に表示されている赤い線。その赤い線が示している位置が――五に変わっていた。


 ……。


「どういうことだ!」

 思わず声が出る。

「ほーおー、私語は禁止と言ったはずなのだーがーねー」

 声が宣言していた通り、迫ってくるドリル付きの壁の速度が上がる。休憩していればすり潰されるほどの速度。


 慌ててレバーを押す。押し続ける。


 休むことなく、前に倒れ込むようにレバーを握り、ただただ押し続ける。


 それから三十分ほどレバーを押し続けたところ、迫ってくる壁の速度が戻った。


 大きく息を吐き、少し休憩する。


 時刻は四時半。作業の終わりまで三十分。


 それで終わると思うか?


 また同じように時間が延長になるのではないだろうか?


 俺はレバーを押す。


 休憩しながらレバーを押す。


 そして、時計の針が五時になろうとした瞬間、赤い線は七まで動いていた。


 今度は二時間延長か。分かっていた。分かっていたさ。


 レバーを押す。


 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。


 黙々と同じことを、作業を続ける。


 時計の針が七時になったところで再び延長される。


 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。 レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。レバーを押す。


 無心になってレバーを押す。


 ぐるぐると回り続ける。


 結局、俺が作業から解放されたのは時計の針が十を示した時だった。


 俺を追いかけていたドリル付きの壁が止まり、床へと収納されていく。


 終わり。


 終わった。


 終わった?


 終わったのか?


 時計の針は赤い線を越えている。


 終わっている。


 終わった。


 終わって良いのか?


 レバーを握ったまま、そのレバーにもたれかかる。疲労のためか、レバーから手が離れない。


 息が荒い。


 大きく息を吸い、吐き出し、ゆっくりと呼吸を整える。


 終わったのか?


 部屋に口髭の男と仮面の巨漢がやって来る。

「六号、今日の仕事は終わりなのである。おい、これを部屋まで運ぶのだ!」

 口髭の男の言葉を聞き、仮面の巨漢が俺の方へと歩いてくる。そして、そのまま俺を担ぎ上げる。


 どうやら本当に終わったようだ。


 何時間レバーを回し続けていた?


 俺は担ぎ上げられながら口髭の男を睨む。

「安心するのであーる。次は飯の時間だからのう」

 口髭の男がご自慢の髭を撫で笑っている。


 なるほどな。


 なるほどなァ。

2021年5月5日修正

レバー → レバー

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― 新着の感想 ―
[良い点] 外から見たら完璧に意味ない仕事をさせられる奴隷ちゃんなのだー 調教されてしまう!
[良い点] 徒労の極み! [一言] 奴隷量産機だー。 心を折りに来るなあ。 さて次は普通に食事ができる……気がしないですね。
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