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131 首輪付き18――「五百……だと」

 何処までも続く砂漠。砂に足を取られそうな悪路をグラスホッパー号と商団のトラックが走り続ける。


 そこで俺は何かの気配を察知する。

「カスミ!」

 俺の叫び声とあわせたかのように目の前の砂が盛り上がる。カスミが慌ててハンドルを切り、グラスホッパー号を滑らせ盛り上がった砂を避ける。俺は体に負荷を感じながらも狙撃銃を握り、盛り上がった砂を撃ち抜く。


「ん?」

 狙撃銃による一撃で盛り上がった砂は弾け飛んだ。だが、俺の手に敵を倒したという感触が無い。

「まだ来ます!」

 次々と砂が盛り上がっていく。盛り上がった砂と砂の合間をトラックとグラスホッパー号が抜けていく。

「来るぞ」

 盛り上がった砂がこちらへと飛びかかってくる。グラスホッパー号に備え付けられた機銃が自動的に動き、飛んでくる砂を撃ち落としていく。

 俺自身も狙撃銃で盛り上がった砂を撃ち抜いていく。だが、撃ち抜いた側から砂が盛り上がる。


『こいつらはなんなんだ? 敵ではないのか?』

 右目には何も表示されていない。セラフがサボっているので無ければ何かあるはずだ。

『はぁ? 私を馬鹿にしているの?』

『してない』

 飛んでくる砂弾を撃ち落とす。こいつらは敵だ。赤い光点が表示されていなくても敵なのは間違いない。いつの間にかセラフの力をアテにしていたようだ。少し気を引き締めた方が良いだろう。

『はぁ!? 地形に隠れていなければいくらでも探知出来るから。お前ごときが私の能力を馬鹿にして!』


 飛んでくる砂弾をグラスホッパー号の機銃と狙撃銃で撃ち落としていく。いくつかの砂弾がこちらの弾幕をすり抜ける。だが、その砂弾はグラスホッパー号のシールドに防がれ、弾け飛んでいた。威力としてはたいしたことがないのか殆どパンドラは減っていない。

『砂に隠れただけで探知出来なくなるのか。セラフ(おまえ)の能力もたいしたことがないようだ』

『はぁ? 地形の下まで探知すると不要なものまで感知してしまうから範囲を狭めているだけだから』

『はいはい、それは大変だ』


 砂弾のいくつかが商団のトラックに命中し、その車体を揺らす。トラックはパンドラを使用していないのかシールドが張られていないようだ。


 グラスホッパー号の機銃と狙撃銃で砂弾を狙い撃ち落としているが数が多すぎて追いつかない。砂弾を浴びたトラックの車体が大きく揺れ、転倒しそうになっている。シールドに守られているグラスホッパー号にはたいして脅威となる威力ではないが、トラックにとっては大きな一撃のようだ。


[大丈夫か]

 通信機を介してルリリに呼びかける。

[こちらの心配は無用ですわ]


 商団のトラックの側面が窓のように開く。そして、そこからいくつもの銃口が現れる。トラックに乗り込んでいた荒くれたちだろう。

 銃口が火を噴き、砂の山を打ち砕いていく。だが、砕いた側から新しい山が盛り上がっている。

「お嬢! 効いてません!」

 荒くれが大きな声で叫ぶ。


 盛り上がる砂を避け、トラックとグラスホッパー号が走る。


 埒が明かない。


 銃弾と砂が舞い上がる中をグラスホッパー号が走る。その一瞬――砂の中に光る何かがあった。


 光?

 何かに反射した?


「任せた」

 俺はグラスホッパー号の助手席から飛び降りる。

「ガムさん!」

 叫びグラスホッパー号を止めようとするカスミに手を振る。


 グラスホッパー号から飛び降りた俺を飲み込むように足元の砂が盛り上がる。


 大きく膨れ上がり口を開いた砂。


 俺はそこに手を突っ込む。獣のような力で、狼のような速さで、機械のような精確さで、それを掴む。


 それは小さな、ピンポン球サイズの機械だった。小さなレンズ球体と四本の足を持った機械。


機械(マシーン)か!』

 これが砂を操っている正体だろう。

『ふふん。お前が、それを捕まえたから、解析が出来たから』

 右目に無数の赤い光点が灯る。


 俺は捕まえた小型のマシーンを握りつぶす。


 Uターンしてこちらへと戻ってきたグラスホッパー号に飛び乗る。

「追いついてくれ」

「はい」

 グラスホッパー号が砂から逃げているトラックを追いかける。


 俺は狙撃銃の弾を入れ替え、構える。


 右目に表示された赤い光点。そこにマシーンどもは隠れている。


 引き金を引く。


 放たれた銃弾が砂の山を抜け、赤い光点を貫く。


 トラックを追いかけながら赤い光点を潰して行く。やがて赤い光点はこちらから逃げるように離れていった。


 これでトラックは安全になっただろう。


「ガムさん!」

 カスミが叫ぶ。

「なんだ?」

「今、オフィスから連絡が入りました。朗報です。昨日のビーストに千コイルの値がついたようです。お金(コイル)はすぐにガムさんの口座へ振り込まれます」

「そ、そうか。それは良かった」

「それと間違いなく赤字ですね」

「ああ。ところでこれは一発何コイルなんだ?」

 俺は狙撃銃に詰めた特殊弾をつまむ。

「狙撃銃用の低ランクのコーティング弾ですが、それでも一発五百コイルですね」

「五百……だと」

 今、何発撃った?

「特殊弾薬は機銃中心で狙撃銃用は殆ど買わなかったのは失敗でしたね。ガムさんが狙撃銃の方を優先するとは思いませんでした」

「機銃は?」

「機銃用の皮付きは一発240コイルです」

 弾薬の箱を見る。


 お金が尽きるはずだ。


 グラスホッパー号が商団のトラックに追いつく。商団のトラックがこちらを待っていたかのように動きを止める。


[ここで一度小休憩をとりますわ]

[あの砂のマシーンたちからは充分離れたと思うが、まだ危険だろう?]

[こちらはトラックの整備が必要ですの。ガムさんの優れた力を期待していますわ]

 俺は肩を竦める。


 砂弾を撃ち込まれたことで、何処かトラックの調子が悪くなったのかもしれない。


 今度は動けないトラックの護衛か。


 やれやれだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 大赤字だ! [一言] これに水と食料の代金を足すと……うわあ。 クエスト達成して借金が増えたなんてことにならないといいですねー。 ガム君とセラフって戦闘ではいいコンビだけど本人たちは認め…
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