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012 プロローグ09

 装備を整えたが、これであのロボットを壊しに行こうと……思わない。思えない。武器は警棒とやっと撃てるようになったハンドガンだけだ。とても勝てるとは思えない。


 この後、何処に行けば良いのか。また地下に降りれば良いのだろうか。


 そんなことを考えていると体にかすかな振動を感じた。よく見ればベストのポケットの中で何かが振動しているようだ。

 ポケットの中を確認する――どうやら、例の透明な円盤が振動しているようだ。左手に持っていたトンファーのような警棒を腰に差し、取り出す。


『……持つのです。手に持つのです。エレベーターに向かいなさい』

 手に持った瞬間、声が聞こえてきた。


 ……もしかして、これは手に持たないと声が聞こえないのか? 左手にはいざという時のためにトンファーのような警棒を持っておきたかったが、仕方ない。


 にしても、エレベータールーム(・・・)ではなく、エレベーターに向かえ、か。


 エレベーター前に立つ。すると自動的にエレベーターの扉が開いた。


 乗れ、ということだろう。


 エレベーターに乗り込む。荷物の搬入が出来そうな少し大きめのエレベーターだ。何故か何処にもボタンの類いがなかった。どうやって動かすのだろうか?


 と、そこでエレベーターの扉が閉まる。閉じ込められた?


 ガクンと小さくエレベーターが揺れ、動き始める。全自動なのか? これは行き先が一つしかないから自動なのか、それとも……。


 エレベーターが動く。長い。かなりの距離を昇っているようだ。エレベーターの中で襲撃を受けるというのが、こういう時の定番だが、どうだろう。


 そして、何事もなくエレベーターは止まった。ゆっくりと静かに扉が開いていく。どうやら定番は外されたようだ。


 エレベーターの外は白壁の長い通路になっている。


 ハンドガンのスライドを引き初弾を弾倉へと送り込む。そのままハンドガンを構え、外に出る。


 ……。


 少しもぞもぞとして動きづらい。下着がなくアーマーのサイズも合っていないからだろう。一応、下には下着代わりとしてタオルを巻いて揺れないようにしているが、何とも微妙な感じだ。先ほどのロッカーの中に下着が入っていなかったのが謎だ。


『前方、距離5、サーチアイです』

 その時、端末から声が聞こえた。


 距離……5? 5メートル先に何かいるということか? だが、何も見えない。


 サーチアイ、か。端末からは名前以外の情報は無いようだ。先ほどのロボットの時は饒舌すぎるほど教えてくれたのだが、このサーチアイには教えるほどの情報が無いのかもしれない。


 ハンドガンを構え警戒したまま、ゆっくりと歩く。天井は高く、通路の幅もそこそこ取られている。荷物の搬入に使われていた通路なのだろうか。


 その天井に四角い小さな切れ目が入ったと思った次の瞬間、そこから何か円筒形の……筒のようなものが現れた。ガラス玉の目のようなものがついた円筒形。


 俺はそれを見た瞬間、構えていたハンドガンの引き金を引いていた。重なるように乾いた音が二つ響く。


 二つの銃弾が最初にガラス玉のような目を、そしてその奥を食い破る。バチバチと火花を散らしながら円筒形が動かなくなる。


 破壊……した、か?


 あれがサーチアイだったのだろうか。


 通路を進む。


『前方、距離5、ガードアイが2です』

 またも端末から声が聞こえる。今度はガードアイ? しかも、また(・・)距離が5だ。近い。この端末は5メートル内しか感知できないのだろうか。


 ハンドガンを構え、ゆっくりと歩く。


 すると、今度は床の方に四角い小さな穴が開き、そこから円筒形が二つ現れた。現れた円筒形はくるりと向きを変え、こちらを見る。先ほど天井から現れたサーチアイとよく似た姿をしている。筒の中心にガラス玉のような目がくっついた機械だ。


 目玉を狙い撃つ。


 ……?


 こちらの撃った弾がパシンという何か見えない壁にぶつかったような音とともに空中で潰れ、落ちた。


 壁?


 見えない壁が守っている?


 もう一度、撃つ。だが、結果は同じだ。ガードアイとやらの前には透明な壁があるようだ。


 ……。


 ガードアイは何もしてこない。じーっとこちらを見ている。本当に何もしてこない。


 ……。


 ハンドガンから警棒に持ち替える。そのままゆっくりと床から伸びているガードアイに近寄る。そして警棒を叩きつける。ガコン、とガードアイの表面に小さな凹みが出来る。


 ガードアイは動かない。ガラス玉のような目を動かし、キョロキョロと何かを確認している。


 警棒を叩きつける。何度も叩きつける。やがてガードアイは動かなくなった。根元から折れ曲がりバチバチとショートしたように火花を飛ばしている。もう一つのガードアイにも警棒を叩きつけ、破壊する。なかなか硬い。


 通路を進む。


『前方、距離5、ガードアイです』

 またか。


 先ほどと同じように床から円筒形が現れ、くるりとこちらに向き直る。何をするでも無くキョロキョロとガラス玉の目玉を動かしている。このガードアイは透明な壁を生み出すだけで何も出来ない機械のようだ。無視しても良かったが一応、壊していくことにする。


 近寄り、警棒で叩く。壊れるまで叩く。


 さらに歩くと下の階にあったような円形のトンネルが見えてきた。壁には透明なパネルがいくつもはめ込まれている。


 円形のトンネルを抜ける。下の階の時のように警報が鳴り響くことは無かった。ほっと息を吐き出し、胸をなで下ろす。


 トンネルの先はロッカールームになっていた。ここにエレベーターは無いようだ。


 ロッカーが自動的に開く。中に入っているのは……ん?


 ロッカーの中に入っていたのは乾電池だった。単一や単二の電池が中心で色々な乾電池が入っている。珍しい単六電池や四角い形の電池などもある。


 何故、乾電池を大切にしまっている? ここの施設は乾電池が必要なものが多いのか? 分からない。あの機械が乾電池で動いているとは思えない。今更、乾電池を使うような機械があるとは思えない。


 良く分からない。


 ロッカールームの先に通路が見える。ロッカーの中に乾電池しか入っていなかったのは残念だが、この先にまだ何かあるかもしれない。


 進んでみよう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 裸族から蛮族へ、華麗なるクラスチェンジ! [一言] 下着こそが文明の象徴だったのだ……。 いきなり銃スキルが高いなあ。やはり謎すぎるガム君であった。 にしても乾電池って。ローテクとハイテ…
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