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103 遺跡探索08――『ふふん。持ち帰って加工すれば良いでしょ。そんな技術が残っていればね』

 通路にはバラバラになったマシーンの残骸が散らばっている。


 ターケスが攻撃を引きつけ、こちらが一方的に攻撃出来たということもあるが――コイツらは思ったほど強くない。こんなものなのか。


 荷物のように荷台に突っ込ませた教授は、そこから顔だけ覗かせて「サンプルがー」と叫んだままだが、これは無視すれば良いだろう。武器を持ってこちらを攻撃してくる、さらに両の足で自由気ままに動き回る、そんなマシーンを壊さず捕獲するのは、今の武装では無理だ。出来ない事を無理にやろうとして、自分の命を危険に晒すのも馬鹿らしい。


 俺は転がっているマシーンたちが持っていた武器を見る。レーザーを発射する銃――扱えないだろうか。


『無理に決まっているでしょ』

『何故、無理だと言い切れる?』

 クロウズ試験の時に現れた蟹もどきが持っていた銃は俺でも扱えるものがあった。ここにはレーザーを発射する銃が何個も転がっている。この中のどれかは動く可能性が……。


『話を聞かないとか。無理だから』

『お金が無くて安物のナイフしか買えていない状況だからな。少しは使える武器が欲しいんだよ』

 俺は肩を竦める。


『ふふん。持ち帰って加工すれば良いでしょ。そんな技術が残っていればね』

 マシーンが持っている武器は、そのマシーン専用ということだろうか。


「まったく、マシーンが人に従ってルールを守っていた? 嘘くせえな。そんなバンディットみたいなことがあるとは思えない! あー、ジャンクばかりだ」

 ターケスは単車から降り、悪態をつきながらマシーンの残骸を蹴り飛ばしている。もしかすると使えそうなものがないか探しているのかもしれない。


「武器はどうだ?」

「これか。俺が欲しいのはクルマ用の武器だからなぁ。俺のクルマだと持ち運べる量が限られるだろ? わざわざ、この程度の武器をオフィスに持ち帰って加工して貰うのは手間とコイルの無駄だ」

 ターケスが再び単車に跨がる。


 ターケスが欲しているのは単車用の武器か。それを求めて、遺跡探索の依頼を受けたのかもしれないな。単車だと搭載出来る武装の数が限られるのだろう。だから少しでも強い武器を載せたいのかもしれない。


 改めてターケスの単車を見る。武装はカウルにあるドリル。荷台に光弾を発射する砲身の長い銃――これがメイン武器だろう。その砲身にくっついた連装式の小さな機銃。これだけだ。単車の機動力を活かすためにはこれ以上武器を載せるのが難しいのだろう。パンドラの容量の関係もある。単車に搭載されるようなパンドラの容量が大きいとは思えない。


 転がっているマシーンはジャンク、か。荷台のある俺のグラスホッパー号なら無理をすれば持ち帰れるだろうが、教授のサンプルとしての価値ぐらいしかないかもしれない。


『ふふん。それでどうするのぉ?』

 セラフの馬鹿にしたような声が頭の中に響く。

『前に進むさ。もしかしたら、この先に使えそうなものがあるかもしれないからな』

『ふふん。あ、そ』


 セラフの人形がグラスホッパー号を走らせる。


 その後もマシーンの襲撃を受けるが、どれも大したことがない。先ほどと変わらない手足のくっついた四角い箱に壁や天井に張り付けられた小型の砲塔(タレット)……どれも雑魚だ。


 数だけは多いのでパンドラの残量が気になってくるが、それだけだ。


「ちっ、一旦戻って休憩するか? 俺の方は後一戦が限界だ!」

 先頭を走っていたターケスが前を向いたまま、こちらに叫ぶ。俺に、ではなく、依頼主の教授に聞いているのだろう。


「こっちはどうですか?」

 教授が俺たちに聞いてくる。

「残り三割というところだ。この遺跡の玄関で銃弾の訪問販売を行ったのが響いている」

 俺の言葉を聞いた教授が頷く。ここで一旦帰還か。悪くない選択だ。マシーンどもも無限に湧き出す訳ではないだろう。倒したら倒しただけ、次は進む時は楽になるはずだ。


 だが、教授の答えは意外なものだった。


「分かりました。進みましょう」

 俺は思わず荷台に包まれた教授を見る。

「理由は?」

「簡単ですよ。戻れないからですね」

 戻れない?


 俺はそこで思い出す。


 どうやって、この階層に来た?


 あのエレベーターだ。


『セラフ、動かすことは可能か?』

『ふふん。進んだら?』

 動かせないのか、動かすつもりがないのか、どうやら進むしかないようだ。


「分かった。進もう」

「進むのかよ!」

 ターケスが叫ぶ。


「なら、戻るか? お前の単車なら壁を駆け上がって戻れるだろうよ」

 俺がそう言うとターケスは小さく舌打ちをした。

「最悪そうするからな!」


 俺たちは進む。長い一本道だ。


 クルマを走らせる。


 俺たちのもう限界が近いという思いが天に通じたのか、ついに終わりが見えてきた。


 この遺跡の入り口にあったとのと同じシャッターのような巨大な扉。そして、その扉を守るように配置された人型のマシーン。

「ヨロイ? いやマシーンか! ここでかよ!」

 ターケスが嘆くように叫んでいる。無駄に感情豊かな奴だ。


 門番の人型マシーン――ロボットを見る。大きさは4、5メートルほど。馬鹿でかいという大きさではない。近未来的な流線型のフォルムにバイザーの着いた顔。両腕は分銅のように膨らんでいる。


 こちらに気付いた人型ロボットが、分銅のような腕を持ち上げる。こちらに向けられた分銅のような腕の中にいくつもの発射口が見えた。


「散開しろ!」

 叫んだのは俺かターケスか。


 人型ロボットの腕から次々とミサイルが発射される。ターケスが逃げながら手に持った銃でミサイルを狙う。俺たちも慌ててグラスホッパー号を後退させ、機銃でミサイルを狙う。


 次々と爆発が生まれる。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 扉の前にガーディアンがいるのは常套! [一言] さすがに雑魚はジャンクドロップ品ばっかりかー。 ターケスとのやり取りもそれなりに慣れてきましたねえ。 教授が二重にお荷物にw セラフは相変…
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