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ゾンビーナ!  作者: とれさん
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97 ドラゴン退治 part9


シルグ達が空き家に仮住まいしてから数日、日向子は村の周辺に洞穴を探していた


『ワシ達は洞穴の様な囲まれた空間が落ち着くのだよ』


防衛本能の表れか何かは知らないが確かにサルバ国でもシルグ達は洞穴に住んでいた


「うーん、意識的に探すとなるとなかなか丁度良いのがないわねぇ…」


キメの背中で乗り飛び回る日向子はなかなか見つからない事に苛立ちを覚えていた


《シルグ様達が住まうとなるとそれ相応の広さを持つ洞穴を、となるだろうが…難しいな…》


キメも半ば諦め気味に呟く


「…いっその事私達で作っちゃおうか?」


《…洞穴をか?》


「うん。一旦山を作って掘れば平地にも出来るしそれこそ村の近くに作れるでしょ?」


日向子は事も無げに言い放つがそれの労力は想像を遥かに越える事をキメは予感していた


《しかし…シルグ様達に満足させられる洞穴となると…》


「よーし、じゃあガッツリ掘りまくるわよ~!」


…聞いてなかった


次の瞬間キメは自分の不安が杞憂に終わる衝撃の光景を目の当たりにしたのだ


ザッシュザッシュザッシュザッシュザッシュザッシュザッシュ!


《…えぇ?》


日向子は手甲剣を出しザクザクと地面を掘り進めていったのだがその速度が半端ではなかった


数秒で地面から日向子の姿が消え排出された土が見る間に山を形成していく


20分程休まず土を掘り出し日向子が地表へ戻って来た


「取り敢えずこんなモンで良いかな?キメちゃん、中をチェックしてくれる?」


《分かった》


キメは日向子が掘った穴に入って行く


《こ、これは…》


たった20分で日向子が掘り進めた広さはエレモス城がすっぽり入る位の空間を生んでいた


「まだ補強とかしないと崩れ落ちるかも知れないけどさ、広さはこの位で良いと思う?」


《十分だと思うが…シルグ様達に確認を取って貰おうか》


「あ、そうね‼本人達に聞くのが手っ取り早いわね」


キメは日向子に頼まれてシルグ達を呼びに行く事になった


《シルグ様、主が洞穴を掘りましたので広さ等をご確認下さいますか?》


『そうか、世話を掛けるな…ところでワシとお主は同じ主の下にいる同格だ。敬語はいらぬぞ』


《…はぁ…でも流石に難しいです》


『ワハハ、まぁ良い。では早速拝見するとしよう』


シルグ達はキメの案内で村の脇に向かった


<…む?確かこの様な山はここになかった筈だが?>


バハムートは突然出現した小高い山に警戒心を露にした


《これは…主が先程掘り出した土で作られた山です》


<何と…主様は何日も掛けて我等の住み処を作って下さったのか?>


《いえ…20分程で…》


<ハハハッ‼そんな馬鹿な?>


バハムートが信じられない程の山がソコに在ったのだ


《論より証拠、中にお進み下さい》


キメはシルグ達を洞穴の中に案内する


《!?こ、これは??》


先に驚いたのは案内きたキメだった


先程見た時はただ掘り出しただけの空間だったが入り口から奥迄全ての壁や地面は平滑に整備されていた


『…この壁といい床といい…これは主殿が踏み固めたのか?』


キメはシルグの言葉にハッとする


キメがシルグ達を呼びに行った直後から日向子は壁や天井、床を手動で固めたのだ


そんな時間が何処にあったのだ?

キメの胸中に疑問が渦巻いていた


…ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ‼


洞穴の奥から地響きがしている


《主よ、シルグ様達をお連れしました》


「あ、こっちこっち‼」


日向子は一度手を止めてシルグ達を誘導すると再び地響きが鳴り響いた


ドドドドドドドドドドドドッ‼


<そんな馬鹿な…>


バハムート達、シルグの目の前で日向子は掘り進めながら同時に壁を殴って固めている


「よし、こんなモンかな?」


漸く日向子が手を止めた時、頑強そうな地下空間が出来上がっていた


…スッ…コンコン…


<ただ踏み固め殴り固めただけでこんな硬質な壁面が出来るモノなのか?>


バハムートは床や壁を叩いて驚いている


「あ、これ?掘ってたら丁度貝塚が出てきたんでモルタル作ってみたんだ♪」


『<《モルタル?》>』


「うん。焼いた貝殻を細かく砕いたモノと砂と水を混ぜると固くなるの」


『それは異邦の技術か?』


「そうそう。これで人は高層の建物や色んな建築物を作ってたのよ」


日向子がモルタルの作り方を知っていたのには理由がある

当時流行っていたDIY女子ブームに乗っかり拗らせた黒歴史が今此処で開花したのだ


『うーむ、人間の叡知は時として神々を凌駕するな…』


シルグは日向子の説明にひどく感心していた


『住み処の建設が終わったらワシと知識の交換をせぬか?』


「え?それは面白そうね…でも私それほど情報持ってないわよ?」


『主殿は見知ったモノ等を教えてくれれば良い。ワシは竜族の知識を授けよう』


「竜族の…何か魅惑的な響きね」


《お、俺にも教えて下さい‼》


『良いがお主は竜族を取り込めばある程度は吸収出来るのでは?』


《きちんと学んでみたいのです》


「よーし、じゃあ決まりね‼急いで作っちゃうからシルちゃんも皆も手伝って‼」


こうして出来上がったシルグ達の住み処は後世竜神迷宮と呼ばれる事はこの時誰も予測しなかった

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