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ゾンビーナ!  作者: とれさん
91/378

91 ドラゴン退治 part3


日向子達は散開して生存者の捜索を開始した


「王子、あれをご覧下さい!」


「…む?これは…」


捜索開始から小一時間、編隊の左翼から痕跡を発見したとの報を受け

移動してきたピクサが見たモノは…無残にも食い荒らされた先発隊の亡骸が散らばる草原であった


「小隊長‼右翼に展開している兵をこちらに集結させよ!此処を起点に改めて捜索編成を組み直すぞ!」


「はっ!誰か右翼側に伝令を走らせろ!」


戦闘跡を発見した事により俄に活気づく中隊の兵士達は一気に戦闘モードに突入した


バサッ、バサッ、


「どうやら魔物は西北の山の麓辺りにいそうね。遺体がそっち方面に散らばっているわ」


「そうですか…生存者は?」


「…今の所上空から動いている人は…」


「…千人からの兵士を全滅させるとは…」


ピクサは拳を強く握り締める


《…主よ、少し良いか?》


「うぉっ⁉しゃ、喋った!?」


突然キメが人語を話したのでピクサは度肝を抜かれた


「あはは、キメちゃんはバイリンガルなんですよ」


「バ、バイリ…?」


「そっか、えーと…人語も魔物の言葉も話せる有能な通訳さんなんです」


「さ、流石神獣ですね」


ピクサは「神獣」という言葉で全てを片付けようとした


「で、何?キメちゃん」


《ラゴが言っていたがどうやらドラゴンだけではない様だ》


「と言うと?」


《この食い散らかし様は多分自分達と同類が一緒に行動している筈だ、と言っている》


「…そっか、ドラゴンだけじゃここまでの人数を食い散らかすのは無理だもんね」


「ラゴと同類と言うと…ドラゴネットの様なドラゴンの眷属が共に襲った、と言う事ですか?」


「ラゴちゃんの推測だとそうみたいね」


「成る程、1個大隊では対応しきれなかったのも頷けるな…」


もしその話が真実なら師団で対応しないと二の舞になってしまうだろう


「…ピクサさん、ある程度捜索を終えたら戻ってくれます?」


「えっ?日向子殿はどうされるおつもりなんですか?」


「私は少しでも被害が少なくなる様にある程度討伐しながら撤退するわ」


「そ、そんな‼日向子殿を置いて退くなど出来ません!」


《人間よ、分からぬか?主はお前達が一緒だと足手まといだと言っているのだ》


「うぐぐ…」


ピクサの聞く日向子の武功は確かに強大で単騎であれば進むも退くもある程度自由だろう

だがピクサを含む中隊と行動を共にしていれば話は違う

護りながら攻め護りながら退く事は遥かに困難なのだ


それを知っているピクサは悔しさの余り歯軋りの音が聞こえる位であった


「別にピクサさん達が弱いと言っている訳じゃないの。

私はキメちゃんやラゴちゃんがいるからいざとなれば飛んで逃げる事も出来るわ。だから…」


「…分かりました。私の愚策で兵を悪戯に消耗するなど出来ません。

日向子殿のご提案通り一帯の捜索を終えたら兵を退かせましょう」


ピクサの言葉に日向子はホッとする


「ただし!」


「えっ?」


「私は残って日向子殿と共に戦わせて下さい!」


「それが一番の問題じゃない…」


ピクサは物分かりが良さそうで分かっていなかった


日向子から言わせれば王子であるピクサ1人の安全が確保出来れば兵が何人失われようと多分お咎めはない


逆にどれだけ兵を残そうと王子を失えばサルバ国で重罪に問われる可能性は大なのだ


「ピクサさん、ごめんね」


「日向子殿、何をっ‼ぐっ⁉」


日向子はピクサの腹に重いパンチを放ち気絶させた


「隊長さん、います?」


「はっ、ここに‼…これは⁉…王子!」


「ある程度捜索したらこの場を離れて帰城して。それまではピクサさんを拘束しておいて」


「な、何故王子を?」


「気がつけばきっとピクサさんは私と一緒に来たがるからね」


「では日向子殿は…」


「私は皆さんを見送ってからドラゴン達を追います」


「そんな…たった一人で…ですか?」


「キメちゃんとラゴちゃんもいるし皆さんがいなければ私一人なら何とか脱出も出来ますからね」


「…それほどとは…分かりました。王子は私が責任を持ってお守り致します」


「流石隊長さん、お願いしますね」


日向子は意図を汲んでくれた隊長に感謝した


「隊長‼ある程度遺体の収用が完了しました!」

「付近の捜索では生存者0です」

「回収困難者は遺品を回収しました!」


「良し、では一旦退却だ!」


隊長は一帯の捜索を終えると退却を指示した


「本当に宜しいのですか?」


「え?あぁ、危ないと思ったら直ぐに逃げちゃうからご心配なく」


隊長はこれ以上の詮索は却って邪魔になると思い日向子を置いて隊列を城に向けた


ピクサを擁護した中隊が安全な距離迄撤退したのを見届けると日向子は踵を返して柔軟体操を始めた


「さぁて、ひと暴れしますか‼あ、キメちゃんもラゴちゃんも嫌だったら村に帰って良いからね?」


《俺は主と共に。》


ギャースッ‼


《ラゴも同じだそうだ》


「そう、じゃあ無理はしないでね」


日向子達は延々と続く血痕を辿りドラゴン達の下へと向かった

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