表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビーナ!  作者: とれさん
90/378

90 ドラゴン退治 part2


ーサルバ国西域ー


「あー、成る程ね。これは未開の土地にもなるわね…」


日向子は上空から西の大地を俯瞰で眺める


サルバ国から50kmほど西に行くと広大な土地が姿を現すのだが所々大地が裂けて渓谷を作っている


「飛び地じゃ開拓するのも骨折れそうだもんね」


断裂された土地の地表には森が形成されているがソコに渡る術が今の所ないのだ


「日向子殿~‼降りてお茶にしましょう」


押し掛け女房の如くついてきたピクサはのんびり屋なのかドラゴン討伐の緊張もなく気軽だった


「…あの人大丈夫かしら?」


日向子は万が一ピクサを死なせた場合を考えざるを得なかった


国王の嫡男であれば継承権第1位、次期国王である


そんな人物を失えば誰かが責を負わねば事は収まらないだろう


(そう言えば何で王様も討伐遠征を許したのかしら?)


普通に考えれば王子を死地に赴かせる事はあり得ない


武功が欲しいのであればある程度安全を確保された戦いで決して矢面に立たせず指揮させていれば事は済む筈だ


いくら本人が切望したからと言ってそれを許可するのだろうか?


日向子は着地しても尚疑問符を片付けられずにいた


「さぁさぁ、日向子殿。我が国名産の緑茶をどうぞ。」


「えっ?緑茶?」


日向子はその言葉に驚いた


今でこそ世界中で嗜まれているが緑茶を飲む習慣はアジア圏でしか聞いた事がない

しかもここは異世界だ


「…じゃあ頂きまーす」


「如何ですか?」


「…美味しい、久しぶりだわ…」


「?久しぶりとは?日向子殿は緑茶をご存知だったのですか?」


「あ。まぁ私の国でも緑茶を飲んでいたので…」


「はて、我が国以外で緑茶を産している国などあったかな?」


ピクサは首を傾げている


「それはどうでも良いんじゃないかしら?それよりもドラゴンと遭遇した際の作戦とか考えなきゃ‼」


日向子は慌てて誤魔化したが下手過ぎてバレバレだった


ピクサはそれを受けて真剣な表情になった


「通常ドラゴン討伐は大隊以上で編成されます。現状では戦力不足は否めないでしょう」


「ん?と言う事は…」


「はい、多分父上は斥候の意味合いで今回の遠征を組んでますね。だから私も出陣を許されたのでしょう」


「あー、そういう事かぁ…」


サルバ国王は日向子を王子の護衛として配備し安全に斥候任務をこなさせる為に呼んだのだ


「じゃあ今回は討伐をせず様子見するだけなのかしら?」


「日向子殿もご覧になられれば判ると思いますが随行している兵達の装備が軽装備なのです。

私も初め見た時は失望しましたよ…」


日向子が辺りに待機している兵士達を見回すと確かにドラゴン討伐をするには装備が軽すぎる印象を受ける


「でも私は討伐を諦めてはいませんよ、機があれば積極的に討ちに出ます‼」


その言葉に日向子は渋い顔を崩さなかった


将たる者機を見誤れば多大な被害を被る事もあり得るのだ


国王が討伐を望まず王子の武功を上げる為に隊を編成したとすればその士気も低いだろう


「…ピクサさん、王様が望まないのであれば無理をする必要はありませんよ」


鼻息荒く饒舌になっているピクサを日向子はやんわりと制した


「ですが…」


「大隊が全滅する程強大な敵であれば単独での討伐は不可能でしょ?

ならばきちんと情報を集め先発の生存者を回収して立て直した方が成功の可能性を上げるんじゃないかしら?」


日向子はヒーロー思考ではないので安全に討伐出来るのであれば数に頼る事は尤もだと考えている


だがピクサは若気の至りなのかまだ討伐を諦めきれていない様だ


「情報収集も生存者の救助も立派な戦略です。

現存戦力が先発隊に及ばないのであれば次に生かす事を最優先にしましょ」


日向子の説得に少し冷静になったピクサは歯噛みしながら賛同をする


「…くそっ、私が第1王子でなければ…」


「ピクサさん、出自を恨んでも意味はないですよ?適所適材、今ある手持ちの力を有効に使ってこそ一国の将ですよ」


軍師の様な正当な言葉にピクサはぐうの音も出ない


「あ…私ったら…でしゃばった事言ってすいません‼」


「いえ、本来であれば私がその境地にいなければならないのに…此方こそ申し訳ありません」


ピクサは心根が真っ直ぐで正直な青年だったのだ

普通庶民である日向子に軽々しく謝る事など王公貴族であれば失笑の的になる筈だ


「ピクサさんって良い人なんですね」


日向子の笑顔にピクサは頬を赤らめた


「日向子殿はとても素敵な方だ」


「えっ⁉」


ピクサから唐突に言われた褒め言葉に今度は日向子が動揺した


「美人ですし物怖じせず意見も言われて更に討伐可能な程の実力を持たれている…

才色兼備とは貴方の様な方を言うんでしょうね」


「え~?そんなぁ~⭐」


最近褒め言葉に滅法弱い日向子であった


30分程の休憩を挟みピクサ率いる中隊は扇状に広がり捜索体形を取った


「ではこれより先発隊の生存者捜索とドラゴンの痕跡収集に入る‼気を引き締めて行動せよ!」


ピクサの掛け声と共に中隊は移動を開始する


日向子はキメに跨がりラゴを引き連れて上空から探索を開始した

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ