9 Road to 討伐者 part2
ーシャッ、シャッ、ギコギコ…ー
「ま、こんなモンかの?」
大工のゲンガがゴメリに訊ねる
ーブンッ‼ー
「ん、ありがとな。ゲンガ爺ちゃん」
ここは村人の大工、ゲンガの家
日向子に合う武器選びが試作品制作教室に変わった迄は良かったのだが木工スキルが二人になかった為
大工のゲンガに木で加工して貰っていたのだった
「へぇ~、何か私の知ってるトンファーと少し違うみたい?」
ゴメリが作らせたトンファーは日向子の知るモノと少し違い
先端は杭の様に尖り棒の部分は角材を三角に切った様な形をしている
「オラぁが見たのはここが刃になってただ。」
ゴメリは角材の鋭角部分を指でなぞる
「成る程ね、あんまり薄くないのは折れない様にする為だろうけど…切れないんじゃないかな?」
「んだ。斬ると言うより千切る感じだった気がするだよ」
「それと…これはグローブに近いわね…」
日向子はもう1つの試作品、手甲を手に嵌めてみる
「こっちは武器というより防具に近かったな、ここで魔物の攻撃をこう受けてただよ」
そう言うとゴメリはトンファーを手甲の腕部分にコツンと当てた
「んでここで魔物をぶん殴って倒してただよ」
ゴメリは甲の部分の突端を自分の顎に当ててやられたフリをする
「成る程ね、攻防一体な感じなのね」
「んだ。これならヒナちゃんの腕力にも折れたりはしねぇんでねぇかなぁ?」
「ん?何じゃ?ゴメリ、お前ぇが使うんでないんかい?」
「あはは、オラぁ太刀は得意たまけんどこんな近接戦闘は苦手だぁ。これはこのヒナちゃん用だぁよ」
「何とまぁ…こんな別嬪さんが討伐者になるんかぃ?」
「えっ⁉やだぁ…ゲンガさんったら…「別嬪さん」だなんて…」
日向子は誉められてクネクネしている
「んじゃヒナちゃん、早速試し振りしてみるか‼」
「はぁ~い☆」
ゲンガに誉められた日向子はちょっとぶりっ子しつつ村の外れに向かう
「よし、んじゃあの木を敵に見立てて試し振りしてみっか」
「…はい‼」
日向子は格闘技の経験はないが適当に構えて木の前に立つ
ーダンッ‼キュッ‼シュッッ‼ー
日向子は跳んで一瞬で間合いを詰めるとトンファーを振って木の幹で寸止めして見せる
「どうだ?」
「あー、何か良い感じです‼」
「んじゃ次は手甲だ‼」
「はい‼」
日向子はトンファーを置いて手甲を付け、今度はゴメリと対峙する
「んじゃいくぜ‼」
ゴメリは木の枝を剣に見立てて日向子に斬りつける
ーカンカン‼カカカンッ‼ー
「…どうだ?」
「こっちも中々良い感じですよ。敵の攻撃を防げる安心感があります」
「よっしゃ!んじゃコレをベースにフォン爺さんに依頼を頼もう」
「あのー」
「ん?」
「作って貰うお礼と言うか報酬を持ち合わせていないんですけど…」
「あはは、そんな事ぁ気にしなくて良いだぁよ。村の中じゃあんまり金のやり取りはねぇんだ」
「え?」
「受けた恩は恩で返す、まぁ商売なら金は取るだがな。あはは」
日向子は体験した事のない古き良き日本の原風景をこの異世界で見た様な気がした
「さ、どっちにするだ?」
「んー、そうですねぇ…2つとも良いんですがもうちょっとって感じなのでここをこうして貰って…」
日向子は試作品を見本に絵を描いて改良点を描き足した
「ん、なるほどな。んじゃこの絵と試作品を持ってフォン爺さんの所に行くか」
「はい!」
二人はゲンガに深く感謝するとフォン爺さんの所に向かうのであった
ー1週間後ー
ガキィィン‼ガッ‼ドゴォーン‼
「うんっ‼これなら動き易いわっ‼」
日向子はあちこちを飛んだり跳ねたりして特注した武器と「防具」を試している
実は武器を作って貰う際、どうせならと軽装備の防具も頼んでいたのだ
内容は大したモノではない、ベルト留めのレッグガードと胸当て、肩当ての三点だ
「…しかしその武器が凄いのかヒナちゃんが凄いのか分からんな…」
日向子がデザインした手甲は中世ヨーロッパの鎧で使われたガントレットに近い
革手袋に留められた前腕プレート、甲のプレート、指部分は強度を重視してミトンタイプにした
日向子の力を考慮して厚い鉄板で作った為かなりの重量になったが動きには支障がない様だ
前腕のプレートには刺突用の広刃の手甲剣がスライドして飛び出る様になっている
「立てよド三流!」
「?」(⬅ゴメリ)
日向子は某アニメの豆粒ドチビのセリフを叫んでいた
ガントレットを選択したのも実はオ○トメイルにちょっと憧れていたのだ
まさかこんな形で実現するとは思わなかったが日向子は満足げだった
「…最後の言葉は良く分かんねぇが攻撃力は抜群だな」
後は服装だがこれはカント婆さんが日向子の意見を聞いて動き易いモノを手縫いしてくれた
服・防具・武器と全て揃いいよいよ次は実践だ
「まぁこればっかりは魔物が出て来ねぇとどうにもなんねぇけんどな」
討伐の依頼が来るまで日向子はゴメリの指導で近接戦闘のイロハを教えて貰う事にしたのだ