78 日向子のバカンス part7
日向子達は今海賊が残したと見られる船を捜索していた
「こ、こりゃ凄ぇ‼金貨が詰まった箱が1つ、2つ…4つもあるぜ‼」
「これは真珠や珊瑚が詰まってるぞ‼」
朽ちた船の船内から幾つかお宝が見つかり皆のテンションも爆上げになっている
「…うーん…船内に残ってるだけじゃ少ない気がするんだよなぁ…普通保管庫がある筈なんだけど…」
日向子は船の捜索をドンガ達に任せ自身はガンザと共に周囲を捜索する
「‼…姉御‼ここの岩肌は周囲と色が違いませんか?」
「あ、本当だ。じゃあここかなぁ?」
日向子は岩肌をコンコンと叩き先に空洞がないか調べる
ーゴンゴン、ゴンゴ…コンコンー
「あ、ここ音が違うわ⁉」
日向子とガンザは周囲にスイッチか何かがないか探る
「多分これですよ‼」
ジャララ…ガリガリ…ガチャン!
…ゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「な…何じゃこりゃあ?」
ガンザは開いた岩戸の中を見て愕然とする
そこにはこの世の金銀財宝を集めたかの様な量の宝が所狭しと積まれていた
「兄ぃ!やりましたね!」
「…お、おう!」
「これで一生遊んで暮らせるぜ‼」
ドンガ達は日向子より先に部屋に飛び込み金貨の海で泳いだ
「確かに凄いけど私が欲しいのはこんなモノじゃないわ」
日向子はお宝を掻き分けて目的のモノを探す
噂に聞こえた異次元から来たとされる宝である
「おい、一辺に持ち出すのは無理だ。取り敢えず持てるだけを袋に詰めて一旦戻ろう!」
ガンザ達は未だ財宝を掻き分けている日向子を置いて各々お宝を袋に詰め込んでいく
「…へへっ…へへっ…あと少し、もう少し」
ジャラジャラジャラジャラ…
「これで俺も町の英雄だ‼」
ジャラジャラジャラ…ジャラ…
「ひひっ‼笑いが止まらねぇよ‼」
ジャラ…ザラララッ‼
ガララ…ジャラジャラ…
「あっ‼…これって…」
日向子は掻き分けたお宝の下に見慣れた四角い物体を堀当てた
ースマートフォンー
前の世界では必需品となったその板はこの世界の人からしたら確かに未知の物体だったのだろう
…ブブッ‼
「あ、電源入った⁉」
この島を根城にしていた盗賊達が「消えて」から相当の時を経ている筈なのにそのスマホは電源が入ったのだ
「わぁ‼懐かしい‼」
日向子にとってはお馴染みのロゴが表示され程無く画面にアイコンが表示される
スッ、スッ…
日向子が慣れた手つきでスワイプしていくと元の持ち主と思われる男性の写真がアルバムに入っていた
「…このスマホがここにあるって事はこの人はこっちの世界に来ちゃってたのかな…」
日向子らスマホを操作して何とか情報を得ようとするが目ぼしいモノは残っていなかった
唯一気になったのはアルバムに残された多分この島の風景であろう写真数枚と…激しくピンぼけした画像数枚だ
「景色は分かるとして…こっちらは何なんだろうな?」
ピンぼけ画像には円形のリングよ様なモノや何かの魚の尻尾?みたいなモノが写っていた
ジャララララ…
「あれ?何だ、これ?」
ザボンはお宝を詰めている途中で床に何か文字彫られているのを見つけた
「姉御、これ何ですかね?」
「どれ?」
日向子らザボンの下に駆けつける
『ーGREEDー』(強欲)
ガタンッ‼ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!
…ザザー…ドドドドドドォッ!
ザボンが取っていたお宝の床が沈みこみ何かのトラップが作動した
それと同時に何処からか水が流れる音が地響きの様に聞こえて来ている
「みんな‼逃げてっ!」
夢中になって宝を詰めていた他のメンバーにとっては寝耳に水だったが此処にいては危ないと判断した日向子は撤退を叫ぶ
「そんな!まだお宝は沢山…」
「バカッ‼命と引き換えに宝集めたって意味がないでしょ!」
日向子は渋る皆に強く言って自らも入り江から外に飛び出す
…ゴゴゴゴ…ドド…ドパァーンッ‼
日向子達が洞穴から飛び出すと同時位に奥から大量の水が吹き出し洞穴を満たした
「あ…危なかった…」
ザボンとラーガはその場で膝をつく
「…はっ⁉皆どの位お宝を持ったんだ?」
ガンザは皆に訊ねる
「…急に逃げろって言われて…」
「俺もこれだけしか…」
「俺も」「俺も…」
ガンザを含めた全員は慌てて逃げた為にろくに財宝を持ち出せなかった
欲をかいて相当な量を袋に詰めたせいで咄嗟の行動に持ち出す重さではなかったのだ
「あ…あ…お宝が沈んでいく…」
「今からでも潜って…」
ドンガは未だ諦めきれずに潜ろうと入り江に向かおうとした時である
ギチュチチチチッ‼
「ギャアッ⁉」
何とも形容し難い音?声?と共にドンガは触手の様なモノに巻きつかれて海中に引きずり込まれた




