77 日向子のバカンス part6
「さぁて、出てらっしゃい!」
魔物を警戒するドンガ達の前で日向子は叫んだ
…キキィッ‼キキィッ‼ ガサッ…
魔物達は日向子に警戒しているのか中々姿を現さない
「…本当に襲われたの?」
「本当ですってば‼さっきはいきなり襲われて…ほらっ‼」
ドンガが差し出した腕を見ると確かに何者かに引っ掻かれた痕が残っている
「…うーん…ずっと隠れられてたら時間掛かって面倒だなぁ…」
日向子は焦れて来ていた
…バサッ、バサッ、
「姉御ぉ~‼ご無事ですかぁ~⁉」
ガンザが草を掻き分けて漸く合流する
キキィッ‼ウキャキャッ‼
「うおぉぉっ⁉何だこりゃ?」
魔物はガンザが1人だと分かるとガンザに飛び掛かる
ウキャッ‼キキッ‼
「痛ててっ‼止めろっ‼」
「…アレって倒す必要あるかな?」
日向子達の目の前で「襲われている」ガンザはどう見てもじゃれつかれている様にしか見えなかった
「痛てて⁉助け…あ、こら‼」
…スタスタスタスタ…
「こらっ!」
キキィッ⁉ウキャッ?
魔物達は日向子の一喝に驚いてガンザから離れる
「あ、姉御ぉ…助かりました…」
「ねぇ…怪我してる?」
「は?…してないっすね…」
ガンザは体のあちこちを触るがこれと言って怪我をした感覚はなかった
「えっと…おいでー」
キキッ‼キキッ‼
日向子が優しく手を差し伸べると魔物達は日向子の前に整列した
「…これって魔物なの?」
日向子は素朴な疑問をガンザ達に投げる
「はぁ、確かマーモットとか言う猿の魔物だと思うんですが…」
「…お手!」
キキッ‼ペチン
「…可愛い♪」
「「「は?」」」
マーモットは何故か日向子にだけ懐いている
「悪さしないなら討伐する必要もないわね?」
「…まあそうっすけど…襲われましたよ?」
「マーモット君、襲ったの?」
キキッ?キキィッ!
マーモット達は日向子の問いに首を横に振っている
「あはは、お利口さんじゃん。もしかして言葉が分かるの?」
キキィッ!
「そうなんだ?じゃあさ、この島で何かキラキラしたモノとか見た事ある?」
…キキッ?キキッ…ウキャッ!
マーモット達は暫くやり取りをすると(こっちこっち‼)と言わんばかりに日向子達を手招きしている
「あら、意外とすんなり見つかりそうじゃない?ラッキー♪」
手招きするマーモット達を見て日向子は既に楽勝ムードを醸し出していた
(…こんなんで良いのかな…)
ガンザ達はその疑問を心の奥底にしまい込んだのだった
ー島の北東、洞穴の前ー
キキッ、キキィッ!
マーモット達との遭遇後、別行動していた他の二人を呼び寄せ案内に付いていくとそれっぽい洞穴に案内された
「この中にキラキラしたモノがあるのね?」
キキィッ!
「…本当に楽勝だったわね。ツイてたわ♪」
ガンザは記憶の中にあるマーモットという魔物の生態をうっすら思い出していた
「…あっ‼姉御!思い出しましたぜ‼」
ガンザは漸く思い出した様で突然大声を発する
「きゃっ!何よ、急に?」
「はい、このマーモットの生態を以前旅芸人から教わっていたのを思い出したんです‼」
「へぇ、それで?」
「あのマーモットってヤツは自分より強いモノには巻かれて弱いモノには強気な魔物らしいです」
「…それじゃまるで私が鬼みたいだから懐いたみたいじゃない…」
「はっ⁉そ、そんな事は…ナインジャナイデスカネ?」
「途中からイントネーションが怪しくなってたわよ?」
!?キキィッ‼
マーモット達が日向子の気配を察して怯え出した
「ハハハッ⁉な、何を言ってるんですか?嫌だなぁ⁉」
ガンザは即死を微妙ながらも回避した、かも知れない
とにかく日向子達はマーモットに誘われ洞穴の奥へと進んで行く
キキッ、キキッ‼
「あっ‼姉御、ここに扉がありますぜ?」
「ぐぐぐ…こりゃ錆び付いてて開かねぇや」
「どれどれ?よいしょっと」
ゴゴンッ…バキッ‼
ドンガ達が三人がかりでビクともしなかった扉は日向子の手により鈍い音を立てて…もげた
皆はソレは見なかった事にして早速中を覗き込む
「「「おおお~~!!」」」
扉の向こうは入り江になっており朽ちた船が二艘停泊していた
「あの中にお宝が…」
「ふ、船もそうだが多分何処かにお宝を溜め込む場所がある筈だぜ‼」
皆の期待は一気に膨らんだ
「じゃあ手分けして探しましょう‼」
「「「おうっ‼」」」
日向子達はまた二人一組になって周囲を捜索するのだった




