76 日向子のバカンス part5
日向子達はデンの船で島の近くまで辿り着いていた
「秘策って?」
「ちょっと待っててね♪」
日向子はキョロキョロと辺りを見回すと突然走り出した
「…一体何なんでしょうね?」
「さぁ?姉御の事だから凄い案なんだろうよ…」
ガンザ達は姉御と慕っているがまだ日向子と出会って日が浅く行動が読めていない
「お待たせ~‼」
皆の前に姿を現した日向子の手には一抱え程ある岩が担がれていた
「!?」
「姉御っ⁉」
「でけぇ…」
日向子の持ち上げている岩はどうみても人が持ち上げられる重さには見えない
「…ヒナちゃん?それどうするつもりなんだい?」
デンは皆より大人なだけに驚愕しつつも岩の意図を訊ねる
「あ、これはね…ほいっと!」
ーブンッッッ………ドパァ~ンッ‼
「「「「…は?」」」」
ガンザ達は巨大な岩をあり得ない飛距離で投げた事に驚いていたがデンはその恐ろしい事実に戦慄していた
「…まさか…投げるのか?」
「…ハッ⁉」「…ウソ⁉」
ガンザ達もデンの言葉に我に返った
「うーん、もう少し向こうに投げないと…」
「いやいやいやいや!そう言う問題じゃなくてですねっ⁉」
ガンザは自分の未来を予感し慌てて取り消そうと努力する
「えっ⁉ダメかなぁ?」
日向子は上目遣いでガンザを見つめる
「…お手柔らかにお願いします」
「ガンザ兄ぃ⁉」
「マジかよ?」
「…ダメ?」
「「…優しくお願いしやす」」
ガンザ達は日向子の上目遣いに完全に騙された
「ほ、本当に優しくお願いしますよ⁉」
「大丈夫大丈夫‼陸地付近に着水させるから後は泳いでね♪」
ガンザは体育座りの様に膝を抱えて待機する
「んっと…ほいっ‼」
ーブンッッッ!
「ぎゃぁぁ~~っ⁉」
ー…ザブーン‼
「兄ぃっ‼」
「人が飛んだ…」
…「ぷはぁっ⁉」
バシャバシャ
「大丈夫~?」
「はーい、大丈夫っすー‼」
((((。。。ホッ…))))
破天荒なプランだったが意外や意外、成功した事に他の皆はひと安心した
「じゃあ次々といくよー‼」
「お願いしやっす!」
ーポイッ‼…ザブーン‼ポイッ‼…ザブーン‼
「みんなー‼大丈夫ぅ~?」
「はーい、大丈夫っすー‼」
「じゃあデンさん行ってきまーす‼」
「え?あ、ちょっ⁉」
ーダンッ!………ズダンッ‼
デンの目の前で日向子は跳躍しガンザ達の待つ砂浜に着地した
「…べらぼうな娘だな…」
デンは日向子の並外れた力に呆れていた
「うわっぷ⁉」
「ひゃっ⁉」
「お待たせ‼」
「姉御…どんだけ飛んでんすか…」
ガンザは遥か向こうのデンがいる島を目を細めて見つめていた
「まぁまぁ、細かい事は言いっこナシよ?さぁ目的のお宝探しを始めましょ‼」
「「「「おーっ‼」」」」
「じゃあ先ずはエリアに分けて二人一組で探しましょう」
「エリ…何すか?それ?」
「あー…全員で同じ所を探すのは効率悪いでしょ?だから手分けして探すって事よ」
「成る程、姉御のお考えは深いっす‼」
「…まだその「姉御」ってのを認めた訳じゃないからね?」
「「はい‼姉御っ‼」」
「はぁ…ま、いっか⭐じゃあ適当に組んでね」
「俺は姉御と‼」「いや俺が‼」
「こらこら、このガンザ様をおいて姉御の補佐は務まらんだろ‼」
「ちぇっ、汚ぇなぁ…」
ガンザ以外は渋々二人一組になる
「じゃあ貴方達は右に、貴方達は左、私達は前に進むから何か見つかったら大声で呼んでね」
「「「「分かりました!」」」」
こうして日向子達のお宝探しはスタートしたのだった
…ギャアッ、ギャアッ、ピピッ‼
日向子とガンザは道無き道を進む
「流石に暫く人が入っていない島ですね…」
ガンザは短刀で草を払いつつ前進している
「そうねぇ…何かいそうな気配もするし…二人一組にしたのは間違いだったかしら…」
日向子は先程から誰かの視線を感じていたのだ
「まぁアイツ等なら大丈夫ですよ、ああ見えて町じゃ腕っぷしでのして来た連中ですからね」
「…なら良いんだけど…」
そんなやり取りをしつつ前進していると突然悲鳴が聞こえた
「ギャーーー‼」「逃げろーっ‼」
「ガンザさん、右手って誰が行ってるんだっけ?」
「えーっと…ドンガとザボンだったかな?」
「急ぎましょう‼」
日向子は悲鳴が聞こえた方角に一足飛びで向かった
「ちょっ⁉…あーぁ、置いてきぼりだよ…」
ガンザは仕方なく草を薙ぎ払いつつ向かった
「何だよ、あれ?」
「急に襲って来やがった」
日向子が悲鳴のする方角に向かうとドンガ達が背中合わせに立って周囲を警戒していた
ーヒュー…ズダンッ‼
「ドンガさん大丈夫⁉」
「あ⁉姉御っ⁉」
ザボンは空から現れた日向子にビックリしている
「何があったの?」
「それが…猿っぽい魔物が襲って来たんですよ‼」
ーブブンッ‼ジャッ、ジャッ‼
日向子は手甲剣を出して身構えた




