74 日向子のバカンス part3
「そりゃ災難だったねぇ」
チルは帰宅した日向子に事の顛末を聞いて呆れていた
「多分そのガキ共はこの辺の奴等だよ。後でお父さんに〆て貰うからね、怖かっただろ?」
「いえ…逆にお詫びしたい位ですから気にしないで下さい…」
日向子は絡まれたとは言え力の加減を間違い怪我をさせたのではないかと反省していた
「しかしマイラ君は男なのに見ていただけなのかい?」
《主…いや日向子に止めラれたのだ》
「へぇ、討伐に加わる位だからそこいらの男顔負けなのかねぇ」
「…あはは」
日向子は苦笑いで躱す
…ドカドカドカ…バターンッ!
「ヒナちゃんが暴漢に襲われたってのは本当かいっ!?」
デンが何処ぞで噂を聞きつけたのか凄い勢いで帰って来た
「なんだい、藪から棒に‼ヒナちゃんはここにいるし無事だよ‼」
チルはデンの慌てっぷりに呆れている
「そうか、ヒナちゃん怪我はなかったかい?」
「はい、大丈夫です」
「襲った奴等の顔とかは覚えてるかい?」
「あ、いや…襲われた訳じゃなくて…」
「多分バグジの所のボンクラ共だろう、早速ひっ捕まえて絞り上げてやる!」
ガタッ‼ドカドカ、バターンッ!
デンは日向子の説明も聞かずに家を飛び出して行った
「…何か大事になってません?」
「お父さんに任せておきなっ‼バカ共をボコボコにしてでも謝らせるからね!」
「いや、ちょっと…」
気が短い漁師町の「当たり前」を日向子は受け止められていなかった
ー数十分後ー
「おらぁっ‼キリキリ歩けぇっ‼」
ドガッ!
「痛てて⁉何するんだよぉ?」
「被害者は俺達だっての‼」
「煩いっ‼このボンクラ共がっ‼」
家の外が急に騒がしくなったと思ったらデンの怒声が聞こえてきた
「一体どう…あっ⁉」
「あっ⁉」
「ひぃぃぃっ⁉」
日向子が外の様子を窺おうと玄関から顔を出すと例のチンピラ達がボコボコにされて正座させられていた
「…デンさん…本当に〆て来ちゃったんですか?」
「おうっ!コイツらだろ?か弱いヒナちゃんを襲った奴等は?」
「か弱いってコイツがか?」
「この野郎!女性に向かって何て事ほざいてんだ!」
ドガッ!ゴキィ!
「ギャッ⁉」
「デ、デンさん⁉ちょっとお手柔らかに…」
「かぁ~っ‼ヒナちゃんは優しいなぁっ‼美人で優しくて…こんな良い人を襲うとか貴様らは鬼畜か!」
デンは勝手に解釈して大暴走している
「あ、あのっ‼皆さんお怪我は大丈夫でしたか?」
「…もうアンタにやられたのかデンさんにやられたのか分かんねぇよ…」
チンピラの1人が弱々しく答える
「これ、ウシャさんって言うお医者さんが作った薬です。痛い所に塗って下さいね」
日向子はチンピラに薬を手渡した
「あ…ありがとよ」
「ところであなた達の名前聞いてなかったわね。私は日向子、あなたは?」
「お、俺はガンザ。コイツらはドンガ、ザボン、ラーガ、ダドンだ」
「そっか、ガンザさんゴメンね」
「俺達こそ…姉御に失礼な事を…」
「…ん?姉御⁉」
「へいっ‼これからは俺達の姉御になって下さいっ!」
「えええ?」
こうして何故か慕われてしまった日向子に5人の若い衆が出来たのだった
ー翌日ー
「「お早うございます‼姉御‼」」
「ヒナちゃん‼何かバカ共が迎えに来たわよ?」
「…えぇ?困ったなぁ…」
ガチャ…
「「姉さん、お早うございます!」」
「…ガンザさん…皆さんも朝からどうしたんですか?」
「はい!姉御がデンさんの家にホームステイしてるとお聞きしまして!」
「て!って…」
「はい!折角サザンスにご逗留頂いているからにはおもてなしを…」
「えぇ?そんな気を遣わなくても良いのに…」
「こぉら、ガンザ!またヒナちゃんを困らせてんのか⁉」
「ちっ、違いますよぉ‼姉御をおもてなししようと集まったんです!」
「そうか、あんまり家の前で騒ぐんじゃねぇぞ‼」
デンは叱り飛ばして漁に出て行った
「ささ、姉御‼こちらです‼」
ガンザ達は迷惑がる日向子を連れ出し町の一角にある酒場に案内した
「えぇ?酒場になんて来た事ないわよ?」
「まぁまぁどうぞどうぞ‼」
ガンザは日向子をどんどん店内に案内していった
「へぇ、この人が…」
ガンザ達が店内に入ると既に用意されていたのが沢山の料理や酒が次々と日向子の前に並べられる
今日向子を品定めする様な発言をしたのはここの酒場のオーナー、ガンザの父バグジだ
「さぁ姉御‼俺達の驕りですからたんと食べて下さい‼」
「たんとって言われてもねぇ…」
「ガハハ‼バカだなぁ、男ならそれで釣られるかも知れんが女はなびかんぞ?」
バグジは息子を窘める
「だってよぅ、俺達女の扱いに慣れてねぇし…なあ?」
ガンザは仲間に同意を求めた
「じゃあ…折角だから頂きますね。」
日向子は出された料理に手をつける
「…わぁ、美味しい‼」
「嬉しいねぇ、どんどん食ってけれよ!」
日向子に誉められてバグジは上機嫌だ
この後ガンザ達は日向子にあるお願いをし、それが町を巻き込む騒動になるとはこの時誰も思わなかった




