72 日向子のバカンス part1
日向子は皆の好意で南の港町、サザンスに向かっている
「…いつもは仕事で見る景色だけどこうして休んでみると美しい景色ね」
日向子はキメの背でのんびりと景色を楽しんでいる
《サザンスに着いたら俺は人間の姿に変態すルぞ》
「へぇ~。。。えっ⁉」
流れで相槌を打っていた日向子にキメは突然衝撃発言をぶっ込んできた
「「変態」って…化けるって事よね?…出来るの?」
《こノ姿では目立つだろう?》
「まぁそりゃそうだけど…そんな便利能力があるなんて聞いてないわよ?」
《こレは俺達の中デも俺しか出来ナい能力だからな》
キメはサラッと爆弾発言を展開しているが日向子は冷静に対応した
「もしかしたら取り込んだ遺伝子情報の姿に変態出来るとか?」
《流石主ダ。話ガ早いな》
キメは自身の持つ特殊能力により取り込んだ生物を再生する事も可能だ
それを考えれば自分の遺伝子を組み換えて姿形を変える事も可能かも、と日向子は考えたのだ
「成る程ねぇ…私の前の世界でも「キメラ細胞」ってのはあったけどキメちゃんがいたら医学はもっと発展してたかもね」
日向子の脳裏にはIPS細胞やST◯P細胞が過ったがキメラ細胞がコントロール可能であればそれら等の比ではないと思っていた
キメのカミングアウトにより落ち込む暇もなく港町サザンスに到着した
《…少し待ってクれ…》
日向子を降ろしたキメは人間に変態する為に木陰に入った
「見てても良いかな?」
日向子は興味津々で変態風景を覗く事に
《構わないガ…吐くナよ?》
…ゴギュ…ボギリ…メシャメシャ…ゴリッ…グジュ…
「。。。うわぁ。。。」
日向子は自分の好奇心を呪った
目の前で繰り広げられた変態過程はとても言葉では形容し難い程グロテスクな光景だった
辛うじて耐えられたのは日向子の前職がオペ看だったからなのだろう
…ゴリッ…グジュ…コキッ⭐
《…ふぅ…これデどうだ?》
「…どうだも何も…凄いよ‼人と大して変わらない」
変態を終えたキメの姿は体格こそ大柄だが他は誰が見ても美丈夫な男性そのものだった
「それにしても…下迄忠実に再現する必要あったのかしら?」
日向子は仕事柄見慣れているがキメの下には立派なモノがついていた
《取り込ンだ人間の姿ガ反映されてイるのだ》
「あらら…じゃあ大分勿体ない事をしたわね(?)」
日向子はキメの姿を見て素直に感想を述べた
「ところでこんなムキムキな人を何処で取り込んだの?」
《…場所ハ忘れたが確か「勇者」トか言ってたな》
「…えっ?」
《家族デ団らんしていた時に急に襲っテ来たので補食しタのだ》
「そ、そうなんだ?」
日向子はキメの何気ない一言に引っ掛かりを覚えた
(「勇者」って…多いのかしら?)
日向子の認識(と言ってもゲームの世界だが)では勇者はその世界に1人しかいない感じだった
その認識通りならキメはその唯一無二な存在を取り込んでしまった事になる
「…でもまぁ負けちゃう位なんだから自称なんでしょ⁉」
日向子はそう思い込む事で事実を隠蔽する事にした
「じゃあ用意したゴメリさんの服を着て。そしたらサザンスに入ろう!」
《分かッた》
キメはゴメリの服を渡され着込むと日向子の前に出て来た
「…やだぁ…カッコ良いじゃない…」
日向子はキメの変態した姿をマジマジと見てため息をついた
肩迄伸びる金髪、青い瞳、端正な顔立ちにマッチョボディー
日向子の好みにドストライクな容姿だったのだ
「くっ!ここでも出会いのチャンスが1つ潰えているなんてね…」
彼とは生きている間に是非お会いしたかった、と日向子は悔やんだ
「あ、そうそう‼流石にキメちゃんじゃ不味いから名前を変えないとね。何かご希望はある?」
《名に拘っタ事はナイ》
「そっか…そうねぇ…「マイラ」でどうかしら?「キマイラ」の「マイラ」ね」
キメは少しホッとした
日向子のセンスにしてはキメよりずっとマシだったからだ
何なら今後マイラで通したい位だが…日向子は多分ソレを許さないだろう、と言う事迄読んでいた
「じゃあマイラ、行こっ‼」
日向子とキメ改めマイラは徒歩で港町サザンスに向かって歩いて行った
ー港町サザンスー
「こんにちはー」
「おやおや、あんたがヒナちゃんかい?随分とまた別嬪さんだねぇ」
「やだぁ、お上手ですねぇ」
キメ…改めマイラには何の事だか分からずキョトンとしているがこれが「社交辞令」と言うモノだと後で教わった
「まだ自己紹介してませんね、私、神獸運輸の日向子です。こっちはアシスタントのマイラさん」
「おや?こっちも良い男だねぇ」
《…ヤダァ、オジョウズデスネェ》
「!?」
「!?」
「あ、あははっ⁉マイラったら冗談が上手いんだからぁ!」
日向子は慌ててマイラの背を叩く
マイラは日向子のリアクションにキョトンとしている
「顔も良いけど冗談も上手いんだねぇ、このお兄さんは」
…ホッ…何か上手く誤解してくれたみたいね…
日向子は息を吐き出して安堵する
「おっと、私も名前言ってなかったねぇ。コロンの母親チルだよ、娘が世話になってるねぇ」
そう、ゴメリは日向子のバカンスに際してコロンの実家へのホームステイを画策していたのだ
よもやキメが人型に変態出来るとは思ってもいないゴメリ達は日向子が行く先々で1人になるのを恐れたのだ
「コロンからはヒナちゃん1人って聞いてたけどマイラ君も泊まるかい?」
「あ、何かご迷惑掛けてすいませんが…大丈夫ですか?」
「あっはは‼若い娘が遠慮するんじゃないよ‼任せておきなっ!」
チルはとてもコロンの親とは思えぬ恰幅の良い女性であった
日向子とマイラはここで1週間バカンスを楽しむ事になった




