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ゾンビーナ!  作者: とれさん
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71 日向子の気持ち


ポチとクロの殉職から半月が過ぎた


日向子とキメは相変わらず黙々と討伐依頼を受け淡々と殲滅して帰還する日々が続いていた


シロとリースはウシャ爺の治療によりほぼ全快に近くなったが腹部を貫かれたペスは治りが遅く

落ちた筋力を戻すのには時間が必要と思われた


「日向子さん、西に魔物が発生してます‼」


「…分かった、キメちゃん行くよ‼」


ゴルルッ‼


日向子はキメに跨がり即座に飛翔する


「…隊長…私の失策で日向子さんに辛い思いをさせてしまいました…」


全快に近いとは言え念の為に事務作業をしているリースはゴメリに心情を吐露する


半ば不可抗力とは言えリースの指揮能力があれば戦闘に入る前に一時撤退という判断も出来た筈だ


そういう後悔がリースを(さいな)んでいたのだ


作戦の失敗は個々の能力と相手の能力を推し量れなかった指揮者に責がある


この考えの下にリースもまた後悔の渦に沈んでいるのだ


「…リースよ、確かに魔物の力量を見誤ったのは失策だがこれもまた致し方ない事だ。

今のお前に出来る事は殉職したクロやペスに今後同じ被害を出さぬ様に誓う事だけだ」


軍所属時代、ゴメリも幾度となく配下を失いその度に自責の念にかられた


幾らかられても死んだ者は戻って来ないのだ


であるならばせめて今後の糧にし逝った者達を忘れない事がせめてもの供養なのだ、と諭した


「…ヒック…ゴメリ隊長~っ‼」


リースはゴメリの胸に飛び込んで号泣した


体の傷は癒えつつあったが心の傷は未だ生々しくぱっくりと開いたままであった


。。。


ドシュッ‼ズバッ‼


ギャッ、ギャンッ⁉


「キメちゃん次行くよっ‼」


《主よ、無理は良くナイ》


「私は大丈夫よ‼」


日向子の顔にはキメが心配する程悲壮感が溢れていた


《…主の気持ちハ分かる…俺モ仲間を失えばツラい…》


「…キメちゃんにまで心配させちゃってゴメンね…人の死は沢山見てきたけど身内の死は違うのを初めて知ったわ…」


日向子は前の世界で看護師をする中、沢山の死と向き合ってきた


だが身内の死は初めての経験だったのだ

寿命であればそれは納得がいかなくても仕方ないと諦められるが今回の死は避けられた死でもあった


だからこそ日向子の心に大きな傷を作ってしまった


平和な世界で生きて来た日向子にとって害されて死ぬ事など余程の不運でしかあり得なかったが

この世界ではいとも容易く殺されてしまう事実を未だ受け入れられていなかったのだ


「諸行無常、会者定離…か…」


日向子は京都を訪れた際、お坊さんの説法で聞いた言葉を思い出していた


人にしろ何にせよ永遠という言葉は存在しない

形あるモノは全て消えゆく存在なのだ、

とお坊さんは説かれたがその時の日向子にはイマイチピンと来なかった


だが今はその言葉は現実に日向子の心に刺々しく突き刺さっている


その辛さから抜け出す術も知識としてはあっても受け入れるのを心が拒否していた


ー神獸運輸事務所ー


「…ただいま…」


「お帰りなさい」


「ヒナちゃん、少し休んだ方が良いんじゃないか?」


ゴメリは日向子の様子が心配で思わず声を掛ける


「ありがと、ゴメリさん。それに皆にも心配掛けてゴメンね‼少ししたら元気になるから‼」


明るく笑ったつもりが事務所の中で空回りする


「…良し‼ヒナちゃん!今日から休め!」


「…は?どういう事?」


「気落ちしたまま仕事で埋めても元気にはなれん‼それならいっその事ガツンと休んでバカンスに行って来い!」


ゴメリはグッと拳を突き出し満点のサムズアップをかました


「えぇ~?バカンスって言ったって何処に行けば良いのか分からないし…」


「俺に任せておけ!な?コロン!」


「えっ?あ!そう言う事ですね?了解です!」


「?」


首を傾げる日向子の前でゴメリとコロンはニヤニヤと何か企んでいた


ー翌日ー


「おはよ…え?これ何?」


寝ぼけ眼で事務所上の私室から降りてきた日向子の前に謎の装備を背負ったキメが待機していた


「キメちゃん…その格好はどうしたの?」


《ゴメリに主をサザンスに連れて行けと頼まレた》


「えっ?サザンスに?」


「日向子さん、向こうで私のお父さんとお母さんが待ってますから!」


コロンは唐突に日向子に言い放つと説明もしないまま業務の為に出掛けてしまった


「え?何?どういう事?」


日向子は訳が分からず混乱する


「ゴメリさんは既にシロちゃん達と討伐に行ってますから安心して楽しんで来て下さいね‼」


テロンも取り付く島もない体で忙しく働いている


「…良く分からないけど黙って行けと言う事ね?」


日向子は皆の気持ちを察してキメに跨がった


「じゃあお言葉に甘えて出掛けて来ますね、後は宜しくお願いします」


「はーい、行ってらっしゃ~い」


テロンは明るく日向子とキメを送り出した

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