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ゾンビーナ!  作者: とれさん
70/378

70 悲しい別れ


ー東の高原付近ー


ギャンッ⁉


「ペスッ‼」


リースは魔物の牙に貫かれたペスの名を叫ぶ


ガォンッ‼…ドキャッ‼


「ぐあっ⁉」


日向子の代わりに討伐に来たリース達であったがたった一体の魔物にシロを始め4頭のブルピットとリースが苦戦をしていたのだ


巨躯に縞模様の毛並み、日向子の世界で言う「虎」に良く似た魔物だった


虎との違いはその口元に生える牙が不揃いに飛び出し体躯が数倍は大きい点だ


丸太程もある前足に弾かれたリースは地面に叩きつけられ息が詰まる


「⁉クロ…⁉」


「キャウンッ⁉」


身動きの取れないリースを庇おうと魔物に飛び掛かったクロが歯牙にかかり腹部に食い付かれた


ゴリッ…ギャンッ‼


魔物のひと噛みでクロの体がくの字に折れ血反吐を吐き絶命する


「クロ~‼」


倒れたリースの周りには既に戦闘不能な程傷ついたシロとペスがグッタリと横たわっている


「グルルル…」


ポチは既に敵わない事を承知で魔物に威嚇の唸り声を発し自分に注意を向けつつリース達から遠ざかる


「ポチッ‼ダメよー‼」


ガオッッ‼


「!?」


ブシュウッ!


次の瞬間ポチの首は魔物の鋭い爪によって刈り取られた


「ポ、ポチーーー‼」


ポチの体は首を失いグラリと揺れて地面に倒れた


ゴルルルル…クチャ…クチャ…


魔物は周囲に動ける者がいなくなったのを確認するとゆっくりと補食し始める


「うぐっ…ひっく…嫌ぁぁ…」


リースの前で咀嚼されていくポチをただ見つめる事しか出来なかった


クチャ…ゴリッ…!?


ヒューーーーン…ザンッッ‼


ゴギャアッッ!…ズズゥン‼


「食事」に夢中になっていた魔物は駆けつけた日向子の手甲剣に左の前足を斬り飛ばされていた


「シロッ‼リースさん‼。。。ポ、ポチ?」


漸く到着した日向子が見たモノは家族の変わり果てた姿だったのだ


「。。。この野郎ーーーっ!」


ダッ‼ズシャッ‼バシュッ‼


ギッッ⁉


日向子の怒りに任せた攻撃は魔物の体を文字通りみじん切りに切り刻み原型を留めない程に破壊的され絶命した


「ポチーーー‼クローーー‼」


日向子はポチとクロの遺骸に駆け寄り何とかしようと薬を掛けたり心臓マッサージをしている


「…ク、、ゥン…」


「はっ⁉シロッ⁉大丈夫?」


日向子はふと我に返り虫の息のシロに薬を与える


次いでリースとペスにも薬を与え取り敢えず応急処置を施した


「日向子さん…ゴメンね…」


リースは悲しみでずっと震えている日向子に謝った


「…ううん…シロ達とリースさんなら絶対大丈夫だと思ってた私がいけないの…

直ぐに救援に来なくてごめんなさい…」


リースに謝る日向子の声は今にも消え入りそうだった


「一刻も早くウシャさんの所に連れて行かないと」


日向子はキメに村に戻りニルに馬車を装着して迎えに来る様に指示し向かわせた


「ポチ…クロ…ゴメンねぇ…」


日向子は溢れる涙を拭う事もせず2頭を埋葬する


リースはその光景を見つめる事しか出来なかったが自身の考えの甘さによって殉職した2頭の冥福を祈っていた


ーピレネー村、ウシャ爺の家ー


ダカダッ、ダカダッ、ヒヒーン‼


「ど、どうしたんじゃ?これは」


リースを抱えて飛び込んできた日向子にウシャ爺は慌てて訊ねる


「魔物に襲われて重症なんです‼早く治療を‼」


「よ、良しっ‼では始めるぞぃ‼」


日向子はオペ看の様にウシャ爺のサポートを始めた


討伐魔物// ジオタイガー1頭

被害状況//戦闘によりブルピットのポチとクロが殉職。シロとペスは裂傷と内臓破裂で重体、リースは両上腕複雑骨折及び骨盤骨折の重症


日向子のアイデアで記録化された1ページ目にそう記載されたのだった


「シロ…ペス…」


ブルピットの檻の中、未だに意識を取り戻さないシロ達を日向子はずっと撫でている


…コツン…コツン…


「…ヒナちゃん…」


肩を震わせずっと泣きじゃくっている日向子に松葉杖をついたゴメリがそっと近付く


「…ゴメリさん…」


「済まない事をした…俺が討伐に出向いていればこんな事態には…」


「ううん、ゴメリさんは悪くないの。

怪我してたんだしリースさんだって私が急に飛び出さなかったら怪我しないで済んでいた筈だもん」


日向子は自身の考えの甘さに自責の念を込めて吐き捨てる


「クロとポチは…皆を守る為に犠牲になったのだな…」


ゴメリも幾度となく別れを経験していたがどうにも言葉が出て来ない


「今後シロ達には討伐じゃなくてハク達の護衛任務に回って貰うわ…代わりに私とキメが入る」


「そうか」


日向子のか細い声にゴメリはこう答えるのが精一杯だった


リースとシロ達が全快する迄に1週間を要した


その間に入った討伐依頼は全て日向子とキメが出向し悉くを瞬時に片付けていた


帰還した日向子には以前の様な明るさは戻らずテロンや他の従業員達も心配していたが


どう声を掛けて良いか分からずに時間だけが過ぎて行ったのであった

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