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ゾンビーナ!  作者: とれさん
67/378

67 ニルの頑張り


タルバ事件より2週間が過ぎ漸く周囲も落ち着きを取り戻した


捕縛されたタルバ一味は証言を議事録に残し主犯格は処刑、残りの雇用者はサルバ国に送致された


ドルネは今回亡くなった全員の合同葬を行い遺族には見舞金を渡し謝意を示した


エレモス王は日向子の要請により神獸は日向子自身の所有であり国や商会等とは一切関係がない事を下知し

今後良からぬ事を画策する変態貴族や強欲商人から無関係な人を守る様に仕向けたのだった


「じゃあ港町に小麦を輸送してきます」


コロンはピレネー村の農民の依頼を受けて出発した


「はぁ…漸く騒ぎも収まったわね」


受付嬢のテロンはここ最近の騒動でてんてこ舞いしていた事に辟易としている


「依頼で忙しいのなら良いんだけどねぇ…神獸捕らえてどうするつもりなのかしら?」


日向子もため息をつくばかりだ


「裕福な人の気持ちは分からないものよ。

ハバルも神獸を結局は自身の格を上げる為の道具にしようとしてたみたいだしね」


リースは日向子達に変態貴族達の歪んだ趣向をかいつまんで話す


「…不潔ね…」

「イヤァァッ‼」


リースの口から出た言葉に日向子は嫌悪感を、テロンは余りの卑猥さに悲鳴をあげる


「神獸とナニしてとか変態過ぎでしょ…」


日向子は元の世界でも獸姦という信じがたい趣味を持つ人間の存在は知っていたが

流石に受け入れ難く拒絶反応を示したのである


「まぁねぇ…金と暇を持て余すと人間は堕落していくのかもね…」


リースも怪訝な表情を浮かべて口を閉ざした


「ヒナちゃん‼南のシルテ近郊で魔物発生だ‼」


事務所にゴメリが飛び込んで来た


「シロ達だけだと厳しい感じなの?」


「ああ、どうやら大型らしい」


「了解。じゃあキメを呼んでくるね‼」


日向子はキメを呼びにウシャ爺の下に駆け出す


ここ数日ウシャ爺はキメの能力を利用して新薬の開発に勤しんでいたのだ


ダダダッ‼バタン‼


「ウシャさぁん‼キメちゃん借りる…ね?」


日向子の目の前には半裸のウシャ爺がグッタリしたキメに跨がっている光景が飛び込んで来た


。。。


「イヤァァッ‼変態っ‼」


「ちっ、違うんじゃ‼」


バターーン!ドキャッ‼


日向子の全力で閉じられたドアは勢い余って室内にいたウシャ爺に直撃しキメもろとも吹き飛ばした


《グギャッ⁉》


実験の為に血液を提供し貧血(?)を起こして休んでいたキメは突然の衝撃に変な声をあげた


壁に叩きつけられ頭を上げた時には既に日向子の姿はなかったのであった


「ニル、お願い‼」


ウシャ爺宅を飛び出した日向子は厩舎に行きニルに跨がった


ヒヒーン‼ダカダッ、ダカダッ‼


ニルは喜び勇んで全速力で駆け出す

最近キメに自分のポジションを奪われつつあるのを肌で感じているニルは復権に全力を尽くしていた


ダカダッ、ダカダッ、ダカダッ


「あ!見えた!あれって…ゾウ⁉」


日向子の視界に写った魔物は毛むくじゃらのゾウの様な魔物だった


「ぐわぁっ‼刀も槍も通さんのか⁉」


ギャワンッ‼


「ペス‼大丈夫かっ⁉」


先乗りしたゴメリ達が戦闘を開始していたが魔物の厚い毛皮に阻まれ傷ひとつつけられていない

それどころか魔物が振るう足によってペスが戦闘不能に陥ってしまった


「…クソッ‼こんな所でギガマンモと出くわすとは…軍を要請せねばならぬか…」


満身創痍のゴメリは単独での討伐は無理と判断し、軍に要請する事を逡巡していた


ダカダッ、ダカダッ、ダカダッ‼


ヒヒヒーンッ‼


「あっ⁉ちょっ⁉ニル止まってぇぇぇ~っ‼」


ニルはゴメリ達を通り越して尚突進を止めず思わず日向子が叫ぶ


ダダッ、ダカダッ‼…ドォォ~ン!


グモォォォ~~ッ‼


ニルはギガマンモの前で更に加速しそのまま体当たりを食らわせた


只でさえ神速の神獸、その全力は稲妻より早いと言われている脚力でぶち当たられたギガマンモは

その胴体をニルに貫かれ咆哮を上げながら絶命した


ヒッヒヒーンッ♪


ニルは自分こそが日向子の最も役立つ相棒だと言わんばかりに背に乗せた日向子にドヤ顔で振り向く


「。。。」


ヒッ…ヒヒンッ⁉


ニルの活躍を笑顔で迎えてくれる筈の日向子はニルの背で仰け反って昏倒していた


掴んでいた手綱を離さなかった為に辛うじて落馬しなかった位の昏倒ぶりである


「ヒナちゃん!大丈夫かっ⁉」


ゴメリが日向子に駆け寄り声を掛けるが全く反応がない

それは当然だろう、ニルの体当たりはコンクリートの壁に激突する程の衝撃を日向子にもたらしたのだ


ゴメリは失神している日向子を抱えニルから降ろすと地面に横たわらせ気付け薬を飲ませる


「…う…うぅ~ん…」


「‼ヒナちゃん‼ヒナちゃん⁉」


「…あれ?ゾウの魔物は?」


日向子は頭をしこたま打ったのか手で覆いつつ体を起こす


「ギガマンモはニルの体当たりで風穴が空いてお陀仏さ」


「…風穴…ニル…あっ‼」


日向子はキョロキョロしてニルを探す


「ヒヒン…」


「ニルぅ?私、「止まって」って言ったよねぇ?」


「ヒッ⁉ブルルッ‼」


(いいえ、言ってませんよ?)と言わんばかりにニルは首を横に振る


だがそんな抵抗も空しく日向子に叱られたニルは暫く撫でて貰えなくなってしまった

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