66 ドルネの危機 part7
タルバ一行を捕縛し黒幕を吐かせた後暫くしてエレモス王より派遣された護衛兵が拉致現場に到着した
「ピール様‼国王の命にて大罪人の身柄を引き取りに参りました」
「あぁ、ご苦労様。コイツ等が犯人だ。事情は俺から説明するから同行させて貰おう」
「はっ!…隊長?ゴメリ元隊長?」
護衛兵の現在の隊長、シジルはゴメリやリースを見つけて驚いている
「隊長はお前だろうが、しゃんとしろ‼」
ゴメリはシジルに渇を入れる
「は、はい‼」
シジルは尻をひっぱたかれてキリキリと犯人達を護送車に乗せる
「私達も証言の為にご同行します」
ドルネはピール達に申し出た
「では行こうか‼」
こうしてドルネ誘拐事件は一応の決着となった
後の騒動は国家間での折衝になるだろう
日向子は王城に向かうピール達をキメと共に見送った
「さぁて、帰ろっか‼」
日向子達は村へと帰って行った
ーエレモス場内ー
「何故だ⁉何故こんな結果に?」
首枷を着けたタルバは独房でずっと叫んでいる
他の逮捕者も各々独房に監禁されているが最大の後ろ支えであるタルバも逮捕されている為
釈放される可能性もない事からすすり泣く者や沈黙する者はいても不満を漏らす者はいなかった
ジャラジャラ…ガチャリ…
「大罪人タルバ、詮議の時間だ。出て来い!」
牢番の怒声にも答えずタルバはブツブツと呪詛を紡いでいる
バシィッ!
「ぐうっ⁉」
「さっさと出んか!」
命令を無視したタルバの背に牢番の放つ鞭が食い込んだ
「…ご主人様ぁ‼お助け下さい‼」
独房の僅かに開けられた窓から配下の者がタルバに声を掛ける
だが…それすらも今のタルバの耳には届かなかった
「そこに跪けっ‼」ドンッ‼
牢番はタルバを荒々しく突き飛ばすとその場で敬礼をした
「な、何を⁉お前は…」
ビシッ!
「無礼であろう、控えよ!」
鞭打たれ首枷をされたタルバの前に現れたのはエレモス王と甥のピールだった
「答えよ、タルバよ。此度の一件は貴様とハバルの企みか?」
国王は経緯はピールから聞かされているが本人の言質を求めているのだ
「…フッ…フハハハッ‼それを答えたからと言ってワシが無事に済む法はないと言うのに話すと思っているのか⁉」
「今ならまだ己の身を救う機会もあろう。正直に話せば特赦も考慮しよう」
「騙されるか‼ワシは既に覚悟は決まっておるわっ‼さっさと処刑するが良い!」
「貴様…王の前であるぞ」
ビシッ‼ビシィッ‼
暴言を吐くタルバの背中に容赦なく鞭が食い込む
「…ふむ。その覚悟、罪人ではあるが見事であるな。だが事は急を要するのだ、許せよ」
国王は右手を挙げる
…ゴルルルルッ…
低い唸り声と共にキメと日向子が登場した
《無限の激痛の中で吐くが快楽の渦に飲まれて吐くか、選ばせてやろう》
キメはタルバに選択肢を与えた
「…はっ‼獣にまでナメられるとはな‼こりゃ傑作だ‼」
シャァァァッ…シャッ‼…ガブッ‼
タルバの自我が崩壊する前に発した最後の言葉は自らを貶めた自嘲の言葉だった
ー2日後ー
「国王様‼サルバ国国王から書簡が届いております‼」
エレモス王の下にサルバ王からの密書が届いたのはタルバが日向子達の手によって自白をした2日後の事だった
パラパラ…
「ふむ…ピールよ読んでみよ」
国王は控えていたピールに書簡を読む様勧める
「はい…サルバ国ではこの度の一件を重く見て第3位継承権を有するハバルを拘束、
資格を剥奪した上で記録を抹消し流刑地にて幽閉されるとの事です」
「…成る程。してタルバ達の処遇についてはどうだ?」
「タルバに於いては一族の資産を没収し事情を知らぬ者は国外追放に処したとあります」
「加担した者はどうした?」
「自白や証拠により加担が明らかになった者は既に斬首されたとの事です」
「…そうか、ではタルバの処遇はどうするのだ?」
「それについては国王にお任せする、とだけ。」
「…成る程な。では没収した資産の内数割を此度の一件で命を落とした者への賠償に充てよと書簡にしたためて送り返せ」
「分かりました。では叔父上、タルバの処断が決まりましたらお知らせ下さい」
「うむ。日向子に宜しくな」
「…変な虫沸いてませんよね?」
「…」
ピールは呆れ顔で国王に別れを告げた
ーピレネー村ー
「何と…キメはそんな能力があるのか…」
ウシャ爺は日向子から事の顛末を聞いて目を輝かせていた
「考えたら体が幾つかの生き物の複合体だもんね、取り込んで能力ゲット出来るならあり得ない話じゃないわ」
日向子は紅茶を啜りながら見解を述べる
「のう、キメよ。ワシにちとお主の体を調べさせてくれんかのぅ?」
ウシャ爺は指をワキワキしながらキメに近づく
《…断る!》
ブーン…チクッ‼
「あひゃっ⁉」
キメは蜂を出してマッドサイエンティストの毒牙から身を守ったのであった




