表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビーナ!  作者: とれさん
61/378

61ドルネの危機 part3


ドカカッ、ドカカッ、ドカカッ、ドカカッ‼


「ええぃ、もっと早く走らせんか!」


荷台に堅牢な檻を載せた馬車が重そうに動いている


「旦那、こんな大きな魔物を載せて早く走るなんて無理ですぜ⁉」


御者は後ろから怒声を浴びせられても大して動揺する事もなく淡々と説明する


「さっきからホワイトグリズリーが怯えているのだ、追跡者にな」


「…そんな事あるんですかい❓」


「分からん、初めてだよこんなに怯えているのはな。だから急げっ!」


「へいっ!」


誘拐犯達は日向子達…というよりキマイラの存在に感付いて慌てて逃走を図っていた


ホワイトグリズリー、中型魔物最大の体躯と比類なき狂暴さを兼ね合わせた恐ろしい魔物である


今までテイマーに捕獲されたとも使役されたとも聞いた事がない


それほどの秘中の秘を今回テイマー達の依頼主は出して来たのだ


ドルネを誘拐する事によって得られる利益がそれに値すると踏んでの凶行である


「しかし本人だけでなく上役二人も拉致ったのは何か理由があるんですかい?」


「それは俺達には預かり知らぬ事だ。余計な詮索をするとコイツの腹の中に収まる事になるぞ?」


「おー、怖ぇ怖ぇ。精々気をつけなきゃな」


御者は軽口を叩く


グォォォッ‼ゴフッゴフッ…


「⁉」


「チッ‼どうやら追い付かれたな」


馬車の窓から顔を出しテイマーら後方を確認する


「…何だ、気のせいか?」


「だ、旦那!上からです!」


「何だとっ⁉」


…ヒューーー…ドザッ‼


「‼」


ヒヒーンッ‼バキャッ‼


突然空から降ってきた物体により御者台と馬を繋いでいる部分が折れ衝撃を食らった馬達はパニックになりそのまま走り去ってしまった


…ガガガガッ‼ザザーーー‼ー


前支えを失った馬車は前方を激しく地面に擦り付けながら土埃を上げて停車する


グルオッ‼


「チッ‼グリズリー出番だ!」


カチャカチャ…ガチャン!


グルオアアアッ‼


中型魔物最大のホワイトグリズリーが檻から放たれた


ところが敵意を向けたのが手甲剣を構える日向子にではなくその脇に控えるキメにだった


グォォォ…


ゴルル…


魔物と魔獸、双方の睨み合いが続く


《…主よ、あの熊は俺に任せロ…》


「大丈夫なの?」


《あの程度ノ小物に負けハしない》


「じゃあ任せるね‼私は犯人を捕まえて来るっ‼」


そう言うと日向子はテイマー達が走り去った方向に駆け出した


グォ‼グフッ‼グフッ‼


《思考を持たぬ木偶ガ…》


ゴルァッ‼


グルオッ‼


キメはホワイトグリズリーの機先を制し攻撃を仕掛ける


至近距離まで間を詰めると鋭い鉤爪を持つ右前足を振るう


ウガァッ‼


ホワイトグリズリーも反射神経のみでその太い前足を持ち上げる


ドキャッ‼


お互いの前足がぶつかり鈍い音が響き弾き合う


体重差がありすぎるのか飛ばされたのはキメの方だった


…クルッ、スタン‼


《…流石に力比べは負ケるか》


キメは相手の力量を冷静に判断する


グルルル…グァァッ‼


グリズリーは一撃で致命傷を与えられなかった事に憤慨したのか仁王立ちになる


中型魔物最大の体躯は二足立ちすると7m以上になる


そのまま上げた前足を振り下ろすだけで大抵の生物は沈黙せざるを得ないだろう


《…馬鹿メ、獣が二足立ちして機敏さを捨テるとは…やハり獣は獣か…》


キメは力負けしたにも関わらず勝利を確信した


…ボトッ…


グルッ⁉グルァァァッ⁉


仁王立ちでキメを待ち受けているホワイトグリズリーの左前足が突如ボトリと地面に落ちた


激しい痛みと突然の事態にホワイトグリズリーは混乱し地べたを転がり回る


《俺の攻撃ハ打撃だけじゃナかった事に気付かぬとはな…》


先刻激突した時キメの尾、つまり毒蛇はホワイトグリズリーの死角を突いて前足に噛みついていたのだ


ジュクジュクジュクジュク…


グギャァァァッ‼


キマイラの尾である毒蛇の毒は噛まれた相手に悶絶と絶望、激痛を与えながら血肉を腐敗させる


つまりホワイトグリズリーの前足が腐り落ちた時点で毒は既に全身を侵していたのだ


グルァ…グァッ⁉


ホワイトグリズリーが激痛に耐え兼ね転がる度にその体躯は崩壊し腐臭を放つ


グ…ァ…。。。ドロリ…


断末魔の声が途絶えた時、ソコに残ったのは大量の腐肉と巨大な骨だった


「キメちゃん大丈…臭っ⁉」


日向子はキメの周囲に漂う腐臭に顔をしかめる


《俺ハ大丈夫ダ。》


「えぇ…?一体何をしたらこうなるのよ…」


日向子の目の前には今尚急速に腐敗を進める腐肉と真っ白な骸骨が転がっていたのだ


「とりあえず犯人は二人捕まえたわ。後はゴメリさん達を待ちましょう」


《分かっタ》


日向子は腐臭を避ける為にそっと風上に移動したのは言うまでもなかった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ