60 ドルネの危機 part2
日向子達は襲撃現場を中心に螺旋状に周囲の捜索をしている
「む?ここに血溜まりと魔物の足跡があるな。痕跡を見つけたら目印を置いておけ‼」
「「はい‼」」
ゴメリは近くの木から枝を斬り落とすとその痕跡の近くに差しておいた
「隊長‼ここにも腕と足跡が‼」
「良し、目印を頼む‼」
ー30分後ー
「大体の目処はついたな、北西と南東、東南東に足跡と引き摺った跡だ。」
「隊長、どこから行きますか?」
「先ずは多くの足跡と血痕があった東南東、次いで南東、そして北西と行こう」
「はい‼」
3人は間隔を2mに縮め東南東に向かう
…ガツガツ、ゴキリ…
「…シッッ‼」シャシャッ‼
ギャッ⁉
ゴメリは前方で見つけたイールラビット数匹にナイフを投げ倒す
「…ダメだ、死んでる」
イールラビット達は2体の遺骸を啄んでいた
「服装から見るに御者か…まだ先に血痕があるから先に進もう」
3人は周囲を警戒しつつ前進する
ゴキリ…ガブガブ…
「⁉」
ゴメリは手を挙げ制止を促す
(…あれは…グレイベアだ)
ゴメリは日向子とリースを呼び集め目の前の魔物を特定した
(私が行くわ…)
日向子は一足飛びにグレイベアに近付くと首筋に手刀を当てる
グォッ⁉…ブシュゥゥゥ~
日向子の手刀によりグレイベアの頭はストンと落ち首から血飛沫が吹き上がる
「…何なんですか?彼女…手刀でグレイベアの首もぎます?普通…」
リースが呆れるがゴメリは慣れっこだ
「ゴメリさん、多分だけどこの人は護衛ね。腰に鞘があるわ」
「分かった。周囲に足跡や遺留物がないか確認して無い場合は一旦起点に戻って南東に向かおう」
3人は周囲に痕跡が無い事を確認して一旦起点である馬車の残骸迄戻る
「御者が1人、護衛が2人…と」
リースは地面に発見した遺体の数と職業を書く
「これで御者が3人、護衛が6人、小間使いが1人ですね」
「残りは御者1護衛4小間使いが2と番頭2、ドルネさんだな?」
「そうなりますね」
ピチョ…ピチョン…
「む?」
ゴメリは付近の水音を察知する
シュッ‼…ギャンッ⁉…ドサッ…
リースの短刀が木の上に投げられると猿型魔物と遺体の一部が地面に落ちて来た
「これで護衛は残り3だな。では南東に向かう」
3人はまた間隔を開けて進みだした
小一時間後足跡の全てを捜索し遺体の確認を終えた3人は起点に帰って来た
「おかしいな、番頭2人とドルネさんが見付からない」
「ねぇ…上役だけいないって変じゃない?」
「…そうだな…何らかの意図が働いてるのかも知れん」
「非武装の筈のドルネさん達が殺されていないなんてちょっと偶発的とは思えませんね…」
3人はこれまでの情報から「恣意的な襲撃」の可能性を考えていた
「もしかするとテイマーを使った誘拐なのかも知れん」
「またテイマーか…テイマーって悪い人しかいないの?」
「そうではないが…大抵は国か貴族、金持ちが抱えているからな。
命令とあらば手段を選んでいられないのだろう」
日向子は微妙な顔をしつつゴメリの話を聞いていた
「いずれにせよ魔物が関わっている以上何らかの痕跡は残っている筈だ。
もう少し範囲を広げて捜索してみよう」
「了解‼」
先程の捜索で周囲に脅威となる魔物はいないと判明したので今度は単独で付近の捜索を開始する
「隊長‼ここに大型魔物の足跡とそれを消した跡が残っています‼」
「それだ!」
リースの元にゴメリと日向子が駆け寄る
「これは…グレイベアより大型だがグリズリー系の足跡だな」
「‼ゴメリさん、こっちに馬車の車輪の跡があるわ‼」
「轍の沈み具合から言っても重量物が…つまり魔物ごと乗せて移動したって事か?」
実はゴメリ、軍に入る迄は狩人として生計を立てていた時代がありそのせいで足跡等から推理して
獲物を追跡するスキルを身に付けているのだ
「…だとしたら時間的に言ってもそう遠く迄は離れていないわよね?」
「恐らくな。魔物ごと荷台に乗せて移動していれば必然的に速度は遅くなる筈だ」
「なら私キメちゃんに乗って上空から捜索してみる、ゴメリさん達はシロ達に鼻で追わせて」
「分かった。今回は人質救出も兼ねるから安易に突っ込むなよ?」
「了解、キメちゃーん‼」
バサッ、バサッ、ゴルル…
《主よ、あっちの方向に馬の匂いと人間、ホワイトグリズリーの匂いかスル》
キメは既にドルネ達の行方を特定した様だ
「これなら捜索の手前が省ける、さっさと敵に追い付くぞ‼」
「はい!」
当初の捜索ミッションは必要なくなったがそのままのフォーメーションでドルネ達の後を追った




