55 社員教育します part2
「む?出掛けるのか?」
ゴメリは日向子達が鞍を付けている様を見て声を掛けた
「あれっ?ゴメリさんも何処かに出掛けるの?」
「あぁ、港町の近くで討伐依頼が入ったから行ってくる」
「えっ⁉港町の近くにですか?…どうしよう?」
「そっか、コロンは港町生まれだもんね。心配なら今から一緒に行こう‼」
「えっ⁉でも…」
「大丈夫大丈夫‼私達もシロ達も付いてるからね、遠乗りになるけど大丈夫かな?」
「私達は大丈夫です‼」
「良し‼じゃあ行こっ!」
日向子達は早速ハク達に飛び乗ると見てへと出発した
ー港町近郊の林ー
キキィッ‼キシャアッ‼
「こ、こりゃダメだ‼ゼロエイプがこんなに沢山じゃ敵わねぇ‼」
魔物討伐の為に近隣から駆り出された若者達はゼロエイプという魔物に翻弄されていた
「ゴメリ…ゴメリさんはまだか⁉」
「今こっちに向かってる所だろう、もう少し…もう少し耐えるんだ!」
ーパカラッパカラッパカラッ‼ー
「皆さーん‼大丈夫ですかー?」
「君は…日向子さん⁉ゴメリさんは?」
「今こっちに向かってます‼後は私達に任せて防御に徹して下さい‼」
「分かった、でも…大丈夫なのか?」
若者は日向子の身を案じる
容姿だけ見れば日向子はうら若き女性である。
そんな女性を矢面に立たせて自分達は防御に回る等普通であれば考えられない
「あはは、大丈夫ですよ。さぁ、あっちにユニコーン達がいますからソコまで撤退して下さいね」
若者が日向子の指し示す方向を見るとユニコーン数頭とそれに跨がった少女達が見える
「でも…」
「ユニコーン達の近くにいれば魔物は殆ど襲って来ませんから、さぁ早く‼」
日向子に強めに言われて若者達は後ろ髪引かれる思いで撤退する
「さぁ~て、最近ストレス溜まってたからチャッチャと倒しちゃうかぁ~‼」
ーブブンッ‼ジャコ、ジャコッ‼ー
日向子は手甲剣を伸ばして構える
ギギャッ‼ギャギィィッ‼
ゼロエイプ達は日向子単独になるのを見計らったかの様に波状攻撃を仕掛けて来た
ーズバッ‼ズババッ‼ー
ギャウッ⁉ギャッ‼
日向子は直線的に攻撃を仕掛けてくるゼロエイプ数頭を一瞬で真っ二つに切り裂く
キィィ…ギャッ‼ギャッ‼
ゼロエイプは互いにコミュニケーションが出来る様で直線的な攻撃を止め日向子を取り囲む様に群がる
「あら?今度は全方位から一斉に攻撃するつもりかしら…魔物にしては頭良いのねぇ」
日向子はゼロエイプの意外な賢さに感心する
「あれじゃ日向子さんが殺られちまうっ‼」
「俺達も加勢しよう!」
「皆、止めておけ!ヒナちゃんに魔物諸ともたたっ斬られてしまうぞ?」
「あ‼ゴメリさん‼」
移動速度に劣るシロ達と漸く到着したゴメリは戦況を見てそう告げる
「でも…女性1人に魔物と対峙させるなんて出来ません‼」
「…まぁ普通はそうだろうな。だが彼女なら大丈夫だ。俺など足元にも及ばん位強いからな」
「「「「…えっ!?」」」」
その場にいた若者達やシャロン達もその言葉に驚いてゴメリを二度見する
「ほら、もう次でおしまいだ」
「「「「「!?」」」」」
「えーい‼面倒だからまとめて掛かって来なさいよ!」
日向子がわざと隙を見せる様に屈む姿勢を取るとおそらくリーダー格なのであろう、
他のゼロエイプよりも一回り大きな個体が雄叫びをあげる
キィィ…キキィッ‼
その雄叫びを合図にしたかの様にゼロエイプ達は一斉に日向子に飛び掛かる
「竜巻旋風剣ーっ‼なんちゃってー‼」
日向子は屈んだ体勢から一気に立ち上がる瞬間に体に捻りを加えてコマの様に回転した
両手から伸びた手甲剣が全てのゼロエイプを文字通り切り刻む様に何度も刃で切り裂くとそのまま上空へと跳んだ
「「「「。。。」」」」
ヒュー…スタッ‼
「はい、一丁上がりっ‼」
日向子は剣に付いた血糊を一振りして払い飛ばす
「…何だありゃ?」
「凄ぇ‼」
「日向子さん…怖いっ⁉」
幾ら急遽駆り出された若者とは言え十数人がかりで手こずった魔物をあっと言う間に討伐してしまった日向子に
ゴメリ以外の全員の顎が開いたまま戻らなかった
「言った通りだろう?はっはっはっ!」
ゴメリは高笑いしつつも日向子の元に行き無事を確認する
「もうっ‼ゴメリさんったら遅いんだから…結局全部私が倒しちゃったじゃない‼」
「はっはっは‼スマンスマン、シロ達が意外と遅くてな、
来た時には既に〆の段階だったから見物してたよ」
二人の軽い会話に現実味が一切感じられず現場の全員が更に混乱する
「さ、皆さん‼全て倒しましたから処理はお願いしますね」
魔物は生きていれば恐ろしい存在だが討伐後は種族・部位に依っては貴重な収入源ともなり得る
因みにゼロエイプは牙と毛皮が高値で取引されている
「日向子さん、ゴメリさんも今回は本当にありがとうございました!」
漸く現実に戻ってきた若者達は討伐してくれた二人に深くお辞儀をする
「じゃあコロンちゃんは念の為にご両親とかの無事を確認しに行ってあげてね」
「?あっ‼コロンじゃねぇか⁉」
どうやら若者の中にコロンの知り合いがいた様である
「え?テロン兄ちゃん⁉」
唐突な兄妹の再会であった
二人は連れ立って港町に戻って丹比確認をしたいとの事で他のメンツは帰りがてらハク達の乗馬訓練を続けるのであった




