48 新しい仲間達 part1
「じゃあ行ってきまーす」
日向子は国王の依頼を終え村に戻るとニルを休ませハク達が繋がれている馬車に乗り換えて休み無しに出て行った
「…相変わらず忙しいのぅ…」
カント婆さんの家の前で茶を啜っていたウシャ爺が呆れ顔で呟く
「そうだのぅ…もう少し人や魔物を増やさんと体が持たないべ…」
「人は雇えばそれで済むが…魔物はそうはいかんじゃろうのう…」
カント婆とウシャ爺は茶を啜り呟きあっていた
ーダカダッ‼ダカダッ‼ー
「港町かぁ…どんな所だろ?」
日向子は初めて行く未踏の土地に思いを馳せていた
ー港町、サザンスー
ミャア、ミャア
「あら?こっちにもカモメっているのね?」
日向子は港の上空を飛ぶカモメらしき鳥に関心していた
「オメが神獣運輸の日向子ちゃんけ?」
「はい、そうです。宜しくお願いします‼」
「この海産物はエレモスの国王様への献上品だでなるべく早く運んでけろ」
「分かりました‼」
「…それにしても神獣使って運ぶとはバチは当たんねぇんだか?」
「あはは、どうでしょうね?ハク、私って罰当たりかな?」
「ヒヒン‼」
日向子の問いにユニコーン達は必死で首を振る
「何か大丈夫みたいですね、アハハ」
「こんだけ懐いとるんじゃバチなんぞ当てるなんて事はしねぇべな。ワハハ‼」
日向子は荷物を積み終えると一礼してエレモス城へと出発した
ーダカダッ‼ダカダッ‼「!?」ー
ハク達が何者かの気配に気付き急に止まった
「きゃっ⁉どうしたの?」
日向子は急ブレーキをかけたハク達を心配そうに見つめる
「ん?」
ーゴルルル…ー
草むらから何かの威嚇音が聞こえる
ーゴァァァッ‼ー
「ラ、ライオン⁉」
日向子達の目の前に現れたその姿はライオンの頭と前足を持ち山羊の頭部を背負った異様な魔物だった
「シャァァァッ‼」
「えっ⁉」
日向子はその生物から別の威嚇音が聞こえて更に驚く
「えぇ⁉尻尾が蛇って…」
その威嚇音は生物の尻尾、蛇になっていてソコから発せられていた
ーゴルルル…ゴァッ‼ー
異様な魔物は一足飛びに日向子達に跳躍すると鋭い爪を持つ前足を袈裟に振るってきた
バキィィィンッ‼
ーゴルァッ⁉ー
魔物は何者をも砕く必殺の一撃を防ぐどころか跳ね返した人間に驚いて一旦距離を置く
「ふぅ、危ないじゃないの‼」
日向子は突然攻撃してきたその気持ち悪い生物にお冠である
ーゴルルル…ゴバァッ‼ー
ゴゥゥ~‼
「えっ⁉炎?」
魔物は距離を置いたかと思うと一瞬の溜めの後口から炎を吐き出した
ジュゥゥゥ~‼
「熱っつい‼」
ー…ゴルッ?ー
魔物は消し炭になったと思っていた人間が大したダメージも貰わずその場で文句を言っている事に疑問の表情を浮かべる
「何なのよ?全く!」
ーブブンッ‼ジャコジャコ‼ー
日向子は腕を振って手甲剣を伸ばす
「火を吐くとか反則じゃない‼こんなの討伐しなきゃ皆が殺されちゃう‼」
ーゴルルル…ゴバァッ‼ー
魔物は再び炎を吐き出す
…シュンッ‼ズバァッ‼
ーギィヤァァァッ⁉ー
日向子は炎をサッと避けてダッシュをかけ魔物に一撃を加える
その攻撃で魔物の前足が片方斬り飛ばされた
ーグルルル…モコモコモコ…ー
「えっ⁉再生してるの?」
日向子の目の前で魔物の前足が瞬時に生えて来ていた
ーゴルアッ!ー
ガシッ‼
魔物は日向子に覆い被さる様に襲って来て日向子はその両前足を受け止めた
ーシャァァァッ‼バクンッ‼ー
「ちょっ、危っ⁉」
攻撃を防いだと思いきや尻尾の蛇が日向子に噛みつこうと攻撃してくる
「あ~~~っ!キモいっっっ‼」
ブンッ‼
魔物は気が付くと空中に放り投げられていた
ーゴルッッッ?ー
「えーいっ!」
ドゴァッ!…ドカーーーン!
今まで投げ飛ばされるという経験がなかった魔物が一瞬戸惑った隙に日向子は宙を飛び胴体に飛び蹴りを食らわせた
…バラバラ…
予想外の蹴りを食らい地面に叩きつけられた魔物は土埃を上げながら更にめり込んでいた
ーゴ…ゴルッ…ー
「トドメッ‼」
ドキャッ!
日向子は着地体勢から体を捻ってめり込む魔物に踵落としをお見舞いする
ーギャブッ⁉ー
日向子の攻撃は魔物の頭部にクリーンヒットし頭部の半分を削ぎ落とした
…クルッ…スタン‼
「ふぅ、ここまでやれば流石に死んだでしょ…」
踵落としの反動で1回転して着地した日向子が魔物の死を確信する
ー。。。ゴルル…ー
「えっ⁉まだ生きてんの??」
今度は日向子が驚く番である
ージュゥゥゥ…ー
「えぇ?」
日向子が驚くのも無理はない、頭部の半分を失ったにも関わらずその魔物は煙を出しながら回復していたのだ
「…キモいけど…もっと攻撃しなきゃダメみたいね…」
日向子は更なる攻撃を加えようと身構える
ーゴルルル…ゴルッ?ーゴロンッ‼
「…えっ???」
今度こそ日向子は面食らった
瀕死のダメージから回復中の魔物は日向子の目の前で転がって腹を見せている
「これって…服従してるって事かしら?」
そう、目の前の魔物は日向子に対して降伏の証として犬の様に無防備な腹を見せているのだ
「…降参って事?」
ーゴルッ♪ー
「…えぇ?…どうしよう?」
良くわからないまま日向子は魔物を連れて村に戻る事にしたのだった




