47 ただいま
エレモス国武闘大会が終わった翌日、日向子達は村へと戻った
「シロ、ニル、皆ただいまー‼」
!?「ヒヒーン」「クゥン」
日向子の声を聞き付けたシロ達ブルピットは一斉に日向子に駆け寄りもみくちゃにした
スレイプニルのニルやユニコーンのハク達はその巨躯のために日向子に近付けず遠巻きに嘶いている
「あはは♪分かったからやめてぇ~☆」
「シロ達は日向子に会いたくて毎晩遠吠えしとったからのぅ」
日向子達の騒ぎに気付いたウシャ爺とカント婆さんが表に出てきた
「…俺には全く寄って来ないのだが?」
日向子達の隣でゴメリが絶賛傷心中だ
「ニルもハク達もただいま♪」
日向子はニル達にも近付いて全員撫でる
「ヒヒン♪」「ブルル♪」
「ほら、来るなら今だぞ?」
ゴメリはシロ達に向かって両手を広げる
「ウォン‼」
シロが一声吠えると他のブルピット達を引き連れて檻に戻って行った
「…何故だっ⁉最近は討伐であれだけ組んでいたと言うのに…」
ゴメリは膝をつき心底落ち込んでいた
「今日は帰ったばかりだから仕事は明日からにしようね」
日向子はニル達に告げるとヒヒンと嘶いて厩舎に戻っていく
「ほっほっ、ヒナちゃんはニル達にも人気者じゃな」
ウシャ爺は日向子達のじゃれあいを見て微笑んでいる
「あ、そうだ‼ウシャさんに王様から言伝てがあるんです」
「ん?何かの?」
「途中で送って貰った薬あるじゃないですか?アレを軍で正式に常備薬として採用したいから一度顔を見せてくれって」
「何っ⁉アレはそう量産出来んぞ?」
「えっ?そうなんですか?」
「ほれ、前に採って来た薬草があるじゃろ?アレがないと効果が半減してしまうんじゃよ」
「あ~、なるほど。じゃあ何百とは作れないですよね…」
「そもそも多少ワシの軟膏よりも効果が高い程度なのに何故そこまで嘱望されとるんじゃ?」
「そっか、ウシャさんは聞いてないか…実はアレを飲ませた人が物凄く回復したんですよ」
「どういう意味じゃ?」
「体が真っ二つになった人がいて飲ませたり塗ったりしたらくっついちゃったんですよ。知らなかったんですか?」
「…何と‼そこまでの効果があるとはの…」
「あ、知らなかったんだ?」
「当たり前じゃ。薬効を調べる為に真っ二つの実験体なぞ用意せんわ‼」
「ですよねぇ…」
「となると配合を変えれば更なる効能も期待出来そうじゃな、こうしちゃおれん‼」
ウシャ爺は踵を返すと自分の家に猛ダッシュして行った
「あはは…」
その場にいた三人はウシャ爺の行動に苦笑いで見送っていた
ー翌日ー
「さぁ、ニル‼お仕事頑張ろう‼」
「ヒヒーン‼」
「シロ、俺達も討伐に行くぞ」
「…クゥン…」
「ん?どうした?」
シロはゴメリの言葉に乗り気ではなさそうな返事をしている
「あはは、もしかするとシロ達はヒナちゃんと行きたいんでないだべか?」
カント婆さんのドストレート発言を受けてゴメリは再び膝をついた
「何故だ…」
「こら!シロ?ゴメリさんを困らせるんじゃありません‼」
「クゥン…オンッ‼」
シロ達は「仕方ないな」的な鳴き声を発してゴメリの下に集う
「フフフ…魔物にまで慰められるとは堕ちたモノだなで」
「ホレホレ、折角シロ達が来てくれたんじゃ。ウジウジしとらんでさっさと討伐に行ってくるだ‼」
カント婆さんはゴメリの尻をひっぱたいて起こし討伐に出掛けさせた
「…ところでゴメリはいつから訛り言葉を止めたんだべ?」
「あぁ、何か今までは意識して使ってたみたいですよ?」
「…彼奴は彼奴なりに村に馴染もうとしとったのかもな」
カント婆さんはゴメリの背中を見送りつつしみじみと溢した
「さ、じゃあ私達も行こう‼」
日向子はニルに鞍を着けると跨がって首筋を撫でた
「ヒヒヒーンッ‼」
ニルはいつも以上に張り切って出発したのである
「今日は王様の親書を隣国のサルバに届ける依頼と…一旦村に戻ってハク達と海産物の輸送依頼ね」
日向子は馬上で今日のスケジュールを確認する
ーパカラッパカラッパカラッ‼ー
日向子がエレモス城下に到着すると道行く人々から歓声が上がる
「あの娘、確か大会で優勝した娘じゃないか?」
「そうだ‼って何ちゅう馬に乗ってるんだ⁉」
「あれは伝説のスレイプニルじゃねぇか…どうやって捕まえたんだ⁉」
日向子は改めて注目を浴びている事に照れつつ宣伝を忘れない
「神獣運輸を宜しく~‼」
大会出場の当初の目的であった宣伝効果は抜群だった様だ
ーエレモス城ー
「おぉ、日向子か。大会も終わったばかりだと言うのに元気だな」
国王は日向子を諸手で出迎えた
「あはは、あんまり動いてなかったですし全然疲れてませんよ」
「…うーむ…達人達を下しておいて「動いてない」とはな。やはりワシに仕えんか?」
国王の再度のラブコールを日向子はサラリと躱す
「あはは、今は運輸業を軌道に乗せるので手一杯でーす。じゃあ親書、お預りしますね」
そそくさと立ち去る日向子を見送る国王の目は謎の闘志に燃えていた




