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ゾンビーナ!  作者: とれさん
43/378

43 続行宣言


「皆の者!静まれっ!王よりお言葉がある!控えよ!」


憲兵の声によりざわめく観客達も一斉に静まった


「…この様な事態を引き起こした者共は全て処断するが皆の娯楽を奪う事は我は望まん。

よってこの大会の続行は我エレモス国国王が保障しよう!」


ワァァァァ‼


「流石王様だ!」

「でもゴメスはどうするんだ?」


王様はどよめく観客に手を挙げて静かにする様に促す


「罪人ゴメスは曲がりなりにも1選手として残っておる故この大会中は監視下に於て選手の身分を保障する

負けた時点でその身分は剥奪、拘束されるが優勝した暁には国外追放の特赦を与えよう‼」


観客も兵達も勿論ゴメス本人も最後の言葉に耳を疑った


「と、特赦って…じゃあ優勝したら無罪放免かよ⁉」

「悪人をむざむざ逃がすってのか?」


「はっは、皆の不安は当然だ。だが安心するが良い。この大会の覇者はゴメスではあり得んからな」


!?


会場にいる全員が口をあんぐりと開けている


「我が見初めた日向子が参加している以上ゴメスの優勝の目はないわ‼あっはっはっはっ!」


!!??


「…あ、あの…王様?「見初めた」とは一体??」


「おお、見事にフラレたが日向子の力は本物だぞ?」


「い、いや…そういう事ではなく何故観衆の面前でその様なお戯れを…」


「何⁉惚れたモノを惚れたと言って何が悪いのだ?」


。。。


慌てた憲兵が王を制止しようとしたが手遅れだった


「わははは‼王様ぁ‼面白い人だなぁ~っ‼」

「俺達も日向子ちゃんは大好きだぜー‼」

「大会を続行してくれるなら俺達は万々歳だ‼流石王様だよ‼」


王の突然の爆弾発言に面食らっていた観客達は気さくな人柄に好感情を抱いたのか大歓声で王に応えた


「どうだ?ゴメスよ。最後の機会に賭けるかこのまま拘束されるか、どちらか選べ」


「それは…勿論戦って自由を勝ち得たいと…」


ゴメスから感じられた傲慢さや覇気は既になくただ生き延びる為に足掻く醜さが滲み出ていた


「うむ。ではこのまま続行だ‼早速進めるが良い‼」


「は、はい‼では…準決勝第1試合、始めっ!」


エモンとゴメスは再び向かい合って構えた


「お前のせいで全て失った‼苦しませずにはいられんが今は我が身が惜しい、とっとと片付けさせて貰うぞ‼」


ゴメスは戦鎚を上段に構えつつ突進してくる


「居合い奥義、鼻緒斬り‼」


ギャリィィィーンッ‼


二人が中央で交錯しゴメスの鎧から火花が飛び散る


「くっ⁉固いな…」


「あっはは‼俺の鎧は金に糸目をつけず作った特注品だ‼小手先の技では傷1つ付けられんぞ‼」


ゴメスはエモンを挑発しながら戦鎚をブンブンと振り回す


ガッ‼ドンッ‼


戦鎚が地面を次々と抉りその度に爆発したかの様に地面が爆ぜるがエモンは紙一重で全ての攻撃を躱す


「手も足も出ないか⁉なら躱し損なった時お前の命は潰えるのだっ!」


ゴメスは尚も攻め続ける


エモンは一度抜いた刀を鞘に収め必殺の間合いを躱しながら待っている


ドゴッ‼ドガッ‼


「むっ?」


ゴメスは地面を掘り過ぎて舞い上がった土埃に一瞬視界を奪われた


(‼ここだっ‼)


エモンは柄に手を掛け一気に解き放つ


「秘奥義、《一閃》‼」


ゴメスが視界を奪われつつ戦鎚を上段に構え直した瞬間エモンがゴメスの後ろに駆け抜ける


ーシュガッ‼シャリィーン‼ー


「お、おい‼何が起こってるんだよ⁉土埃で見えねぇよ‼」

「何か中央で光ったぜ?」


ー…パラパラ…ー


「お?埃が収まっ…あれ?二人とも背を向けてるぜ?」

「何が起こったんだ⁉」


ゴメスは上段に戦鎚を構えたまま、エモンは刀を横に払ったままお互いが背を向けていた


「おい、どうした?続行不能か?」


微動だにしない二人に審判が声を掛ける


「…もうゴメスは動けまい。救護班を呼んでやれ」


エモンは疲労困憊と言った状態でやっと姿勢を正す


「は?どこも怪我をしている様には見えないが…」


「ギギギ…ギザマァァァ‼」


「動かぬ方が良い。胴体と足が泣き別れするぞ?」


「グガァァッ‼」


ゴメスはエモンの忠告を聞かずに振り返った


「きゃあっ!」

「な、何だありゃ?」


「フフ、フハハッ‼何が泣き別れだ‼俺は何も…はっ⁉」


ゴメスはエモンに向かい振り返った…筈だった


だが爪先は依然として背を向けていたのだ


「そ、そんなバカな⁉」


…ズルリ…


「嫌だぁ‼死ぬのは嫌だぁ~っ‼」


ゴメスの願いも虚しく上半身がズレて地面に転がった


…ドスン…


「こ、こんな死に方は…嫌だ…」


ゴメスの意識が途切れそうになる頃漸く救護班が会場に現れた


「マズイ‼罪人をこのまま死なせては償わせる事が出来なくなるぞ‼」


タンッ…シュタッ‼


「大丈夫、死なせはしないわ。」


「ひ、日向子様⁉」


救護班がどう応急処置をしようかと躊躇っている所に日向子が飛び出てきた


そして次々と止血をしていき最後にウシャ爺特製の軟膏を救護班に渡す


「五分五分だけどこれで助からなかったら彼の悪運も尽きたって事ね、急いで救護室で治療をしてあげて」


「あ、はいっ!」


救護班はゴメスの上半身の下半身を担架に乗せて運び出す


「日向子殿、(かたじけ)ない」


「何言ってんのよ、あんな悪党を斬り殺したらエモンさんも夢見が悪いでしょ?

それにアイツにはゴメリさんやリースさん、その他の人達も不幸にしたツケを払って貰わないとね」


ウォォォォォッ‼


「すげぇ‼日向子ちゃんがゴメスを助けちまったみたいだぞ?」

「あんな真っ二つになっても大丈夫なのかよ⁉」

「すぐ殺されたんじゃ苦しんだ人達の恨みは晴らせないもんね」


日向子の行動を見ていた観客は救護処置をした日向子の意図を正確に把握していた様だった


そして大会はまだまだ続いていく

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