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ゾンビーナ!  作者: とれさん
39/378

39 地力の差


キィィン、チンッ‼シュッ‼


会場に二人の剣の舞いと金属音が響く

観客は見惚れているのか全く声を発していなかった


リースとチェンは同じ双剣使いでありながら双方の剣技は成り立ちからして違う


リースの剣は所謂短めの西洋剣で柔軟性はない

剣技にしてもどちらか一方で敵の攻撃を受け空いた一方により攻撃を加えるスタイルだ


一方チェンの双剣は薄刃の中国剣で耐久性も西洋剣よりかなり劣る


だがその柔軟性は西洋剣にはない予測不能の軌道を生み出し使用者の体術と合わさり変幻自在の攻撃を繰り出せるのだ


リースは剣により絡めとる剣技、チェンは剣を己の手足の延長線上とする剣技なのだ


シャッ‼チンッ‼ビシュッ‼


二人の衣服は相手の攻撃により少しずつ切り刻まれていく


キンッキンッ‼ドムンッ‼


「ぐあっ‼」


チェンの後ろ回し蹴りによりリースは後方に吹っ飛ぶ


「リースさん、認めましょう。貴方の剣技は勝るとも劣らない程洗練されています。だが結果私の勝利は揺るぎません」


リースの剣技は少しだけチェンのそれを上回っていたがチェンの体術がその差を埋めて余りあるのだ


リースはジリジリと体力を削られていった


「そろそろ終わりにしましょう」


チェンは順手で持っていた双剣を逆手に持ち替えて低い姿勢で構える


これまでの正統な剣技は鳴りを潜め体から勁の揺らぎが見える程に高めている


「秘技‼龍打咆哮掌!」


チェンの声がリースの耳に届くか?と言う速さで間合いを一気に詰める


「くっ⁉」


ーダン、ダダン、ドガガッ‼ー


チェンの秘技はコンボ技だった


リースの振り降ろす剣を柄の縁で受け止め跳ね上げるとそのまま両手をリースの肩口に叩き込む


堪らず体が折れたリースの鳩尾に振り降ろした両手を切り返す様に叩き込む、発勁を加えて。


ズザザザザー…


リースは勁を打ち込まれ微動だにしない


「勝者、チェン!」


ウワァァァッ‼


会場は二人の死闘に惜しみ無い称賛を送った


「凄えっ!あんな闘い見た事ねぇよ」

「双剣の夜叉姫か…正にピッタリだったな」

「惜しかったなぁリースちゃん…」


「…うぐっ‼」


大歓声の中リースが意識を取り戻した

立ち上がろうとするが体に力が入らないのか中々立ち上がれないでいると


「掴まれ」


いつの間にかチェンがリースの側で手を差し伸べていた


「…ありがとう」


「良い勝負でしたよ」


「フッ…それは勝者のみが言える言葉だな」


お互いが顔を見つめ笑みを溢した


リース達が会場から去ると進行役が壇上に上がり説明する


「本来は特別招待選手のヒューイとの対戦がある筈ですが彼は大罪を犯した上に逃亡しておりますので本日の試合はこれまでとなります。

明日は準決勝と五位決定戦、明後日は決勝を行いますので皆さんこぞってご来場下さい‼」


このアナウンスを聞いて観客は三々五々に帰って行く


「いやぁ、今日は良い試合ばかりだったなぁ。ゴメス以外は。」


「明日は居合いのエモンとだぜ?流石に勝てねぇだろ?」


「幾ら剣の達人だってあの重装甲じゃ刃が通らねぇんじゃねえの?」


「じゃあ…最強は馬鹿力って事か?…夢がねぇなぁ」


ゴメスの非人気ぶりは凄まじいモノだった


ー護衛兵舎の隠し部屋ー


「…隊長…負けてしまいました」


リースはゴメリに抱き付いて泣いていた


「人は負けて強くなるんだ。負けたのが試合で幸いと思ってこれからも精進するんだな」


「…ぐすん…隊長ぉ~…」


ゴメリはリースが泣き止む迄優しく頭を撫でていた


ー護衛兵舎詰問室ー


「どれだけ詰問されようと俺から情報など得られんぞ‼」


ヒューイは叫ぶ


ーガチャー


「どう?白状した?」


「はぁ~…全くダメですね…」


日向子の問いにシジルがため息混じりで答える


「スコポラミンとかあれば直ぐなんだけどな…」


「…何です?それ?」


「あぁ、こっちの話。で、どうするつもり?」


「まぁ無駄だとは思いますがこのまま詰問を続けて待つ位しか手はないですね」


「それじゃ不確定要素が大き過ぎるわね…これ、試してみてくれる?」


「これは?」


「私の村にいるウシャさんって人に頼んで作って貰った自白剤?みたいなモノだって」


「…飲ませるんですか?」


「最悪大会が終わる迄には情報を得たいのよね…人命には影響ないみたいだからお願いね」


「日向子さんって意外とサディスティックなんですね?」


「え?そんな事ないない‼私看護師…えっと医者の助手やってたからそういうのに強いだけよ」


「綺麗な方なのに肝が座ってるのはそういう事でしたか。分かりました‼必ずご期待に添える様に頑張ります‼」


「ありがと、シジルさん」


ヒューイは引き続き護衛兵に任せて日向子は次の一手の為に動き出したのだった

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