378 救った世界(その後)
いよいよラストです!
北半球を救った日向子
この事実は始祖達バンパイア一族と四竜達ドラゴン達以外北半球で知る者はいない
日向子の行いは認められる為に起こした訳ではなくあくまでも日向子の願いによって叶えられた奇跡であった
南半球に戻った日向子は彼女の使徒であるシルグ・キメ・デバと共に元ドラール王国の跡地に居を構えラクル達南半球に残ったバンパイアの識者達と生活を共にする事となった
アイン王達南半球の各国は日向子達の功績を踏まえ共存を提唱し、不可侵条約を結んだ
この条約を以て南半球の一角に新たな国が誕生した
「ドラクル王国」
バンパイアの王、ラクルが興したこの国は魔物が治める国としては異例の法治がなされた
ー人と知恵を持つ魔物の共生を目指すー
旧ドラール王国と旧アースベイカー国の遺した高い技術力を礎に強国となったこの国は他国を侵す事を法で禁じ
知恵を持たない魔物達を率先して根絶した
初めはその存在意義すら怪しまれたドラクル王国は次第に人族に受け入れられ理想とされた共生を現実のモノにしていく
圧倒的な力を有していた初代ドラクル王、ラクル・ド・ドラクルの傍らには日向子という神にも等しいとされる更に上位の存在が常にいた、と後世の書物には記されているが
ー二千年後ー
…スッ…
「おやヒナちゃんいらっしゃい」
いつもの神域でいつもの様に出迎えたカズヤに日向子は軽く会釈をする
「…そっか、ラクル君が…」
バンパイアとして人の世に生き、王として魔物を率いたラクルは寿命を迎えその生を終えた
以前カズヤ自身も味わった様に日向子も親い人の半生を見送って此処(神域)にやって来たのだった
「おや?そう言えば使徒の皆は?」
「シルちゃんは最後は四竜の皆の下に帰って余生を共に過ごしたいって言われて北半球に、
デバちゃんは知識の渦に興味を持ったらしくて見送ったわ
今残っているのはキメちゃんだけよ」
「そっか、ヒナちゃんも出会いと別れを沢山経験したんだね」
「えぇ」
カズヤは何処からか具現化したお茶を日向子に差し出す
「で、ヒナちゃんはこれからどうするつもりだい?あぁ、この聞き方じゃ曖昧過ぎるか
「これからどうなりたい?」」
「…そうね…直ぐには思いつかないから暫くは北半球と南半球、どちらも行く末を見ながら今後についてゆっくり考えたいな」
日向子は出されたお茶に口をつけながらそう答えた
「なるほどね、良かったら僕と同じ様に多次元世界を見守る役目を手伝ってみるってのもあるからね、無理強いはしないから候補に入れておいてよ」
「うん」
《主!北半球で大規模な地震が!》
「分かった、直ぐ向かうわ」
《頼む!》
日向子はキメの緊急連絡に応えて神域を離れようとする
「ヒナちゃん」
カズヤはそんな日向子に声を掛けた
「え?」
「今幸せかい?」
何で今こんな事を聞かれたのか、日向子には理解が出来なかったが答えは1つしかない
「幸せかどうかなんて分からないけど…それどころじゃないわ!」
日向子は北半球の危機を救う為に時空間転移によって急行した
残されたカズヤはそんな慌ただしく消えた日向子を見送ってクスッと笑う
「悲しむ間も無く人助け、これが案外救われるんだよね…自分自身が」
人との別れ
これは神となった今でも心が引き裂かれる様に辛い
悲しみに囚われるよりも救いを求めている人々を忙しなく救っていた方が悲しむ間を与えない
矛盾しているが今の日向子にはそれが救いでもあったのだ
こうして数々の危機を救った日向子は北半球・南半球の両方で「救いの女神」として崇められその功績は神の御業として史書に記されていく事となる
死んでゾンビとして異世界に転生し、数々の出会いを経てついには神となった異色の女性神
人々はそんな日向子の事を「天女神」として末永く信奉したと言う
。。。。。。。。。
。。。。。。
。。。
「なぁ~んてね⭐」
《主。。。》
「ピポ?今の話は架空の未来ですか?」
〈我は今勝手に国を興して勝手に寿命を迎えていたのだが?〉
『ワシはチョイの間で片付けられていたが…悪意なのか?』
そう、さっきの話は日向子の妄想が生み出した「身勝手ハッピー(?)エンディング」だった
今はやっと北半球を救って南半球に戻って来たばかり!
これからどうなるかは誰にも分からないのだ
《かぁ~っ!主の性格に振り回されるのは大変だぜ》
キメの言葉通りこれから使徒達は日向子のハチャメチャ行動に頭を悩ませながら協力「させられて」いくのだろう
『だが…それも良いではないか!』
平々凡々な日常よりも刺激的な生活が日向子の周りには沢山転がっている
楽しい時間はあっという間に過ぎていくが日向子と一緒なら終わりがないのだ
〈さっきの妄想では我と番になっていた設定であったが…望みか?〉
「えっ!?アハハ、それはまぁ…その方がハッピーエンドになるかなって」
「ピポ!主様は神になられてからよりアバウトな性格にクラスチェンジをしたと判定されます!」
「ま、まあ何でも良いじゃない?ほら、早速事件が起こってるからレッツゴー!」
ビキニアーマーに特徴的な手甲剣を携えた魅力的だけど異様な存在、日向子の活躍はこれからもずっと続いていく…のか?
「おしまい」
さて、如何でしたでしょうか?
今作は自身の体調不良等が重なりかなり筋が怪しかった部分も出てしまいました。
次回作は既に出来ておりますので後日読んで頂ければ幸いです
それではまた☆




