370 北半球を救え!part1
神として目覚めた日向子は意識を失っていた間の記憶を思い出していた
細かい部分は分からないが日向子が改変を進めていく間崩壊をカズヤがずっと防いでくれていたのを感覚で記憶していたのだ
だから北半球の件に着手する前に先ずはカズヤにお礼を言う為に神域に出向く事にした
…スッ…
「おや?日向子ちゃんいらっしゃい」
「先日はお世話になりました。そのお礼を言おうと思って」
「そうなんだ…うん、肉体も魂も定着してるみたいだね。良かった」
カズヤは日向子を見て無事神としての力、存在が融合した事に安心した様だ
「そうみたいです…何かこう…力の在り方が今までと違ってるのが感じられます」
「そうだね、日向子ちゃんは僕よりも馴染むのが早かったみたい」
「え?そうなんですか?」
「うん、これにも向き不向きがあるからね。不向きだと器(肉体)が神気みたいなのに耐えられなくて崩壊しちゃうんだよ」
「け、結構綱渡り的要素が強いんですね…」
「あはは、まぁね。何しろ肉体を持ったまま神様になろうって良い所取りだから。これどうぞ」
カチャ…
カズヤは話ながらお茶を淹れて日向子の前に置いた
「ありえそうございます」
「リリスが居ればもう少し美味しいお茶が出せるんだけどね、ごめんね」
「そう言えばリリスさんって何処に行ってるんですか?」
カズヤはマグカップに口をつけてホッとため息をつく
「話してなかったっけ?今リリスは大神様の所に行って修行みたいなのをしてるんだよ」
「え?修行…ですか?」
「あー、うん。追々分かってくると思うけど神様も不滅って訳でもないし格みたいなモノで多少寿命みたいなのがあるんだ」
「へぇ…」
「ちょっと前の説明とは矛盾しちゃうんだけどね、神達は明確な寿命ってのはないんだけど…」
日向子が興味を示して身を乗り出す
「…「何となく」死んじゃうんだよ、ある日突然ね」
「へ?」
「あはは、ちょっと端折り過ぎたか。正確には自分自身の「存在意義」みたいなモノが分からなくなったりすると突然死みたいに死ぬんだ」
「そか、肉体の寿命は関係ないけど精神体としての寿命は存在する事を自覚する事で維持されているんですね?」
「まぁそんな所。ちょっと複雑ではあるんだけど地上で知的生命体に奉られるとかでまた微妙に差が出るからね…一概には基準があってない様なモノだし」
「奥さんは…それを改善するとかで修行を?」
「そうそう、日向子ちゃんは理解が早くて助かるよ」
「誉めて頂いて光栄です」
「あはは、まだ返事が固いけど普通に話してくれて良いからね?」
「はい!…ところで質問しても良いですか?」
「勿論」
「北半球を救う為にも実際行ってみたいんですが…どう行けば良いんですか?」
「へ?」「へ??」
。。。
2人の間に暫しの沈黙が流れた
「…あのクソジジイ…ナンパに勤しむ余り肝心なヤツ渡してなかったのかよ…」
「え?」
「あぁ、こっちの話。ジジイは後でシバくとして…日向子ちゃんには渡さなきゃならないモノがまだあってね」
そう言うとカズヤは突如現れた冷蔵庫をゴソゴソしはじめて何かを手に取る
「はい、これ」
「え?…リンゴ?ですか??」
「うん。これはほら、地球で言う「知恵の実」だよ。聖書とか物語とかにも出てたからボンヤリは分かるでしょ?」
「…アダムとイブの?」
「あー、そうそう!別にリンゴである必要はないんだけどね」
カズヤの説明ではこの実は神の叡智、簡単に言うと宇宙の全ての記憶が記録されたスーパーコンピューターに常時アクセスして必要な知識を即座に得る為の端末みたいなモノらしい
「これを食べると知りたい、と思えばすぐに答えが返ってくるからね。後で食べて、また倒れるだろうから」
「あ、やっぱり倒れるんですか?」
「多分ね。人として、と言うか生命体として固定観念を持ったまま「知識の渦」に直接アクセスすると入ってくる情報が膨大過ぎて最悪廃人になっちゃうんだ」
「え?」
「だから本当は神に昇格した時に一緒にやっちゃうんだけど…大神様がど忘れしてたみたい」
「…はぁ…じゃあまた倒れるとして…どの位掛かりますか?」
「それは日向子ちゃんの体と精神、魂次第になるね。えっと…あ、以前の「記録」を辿ると最短は一瞬、最長は数千年経ったけどまだ…ってのがいるよ」
「え、ダメじゃないですか」
「まぁね、でも日向子ちゃんは2週間程度で体の方は進化出来たからその時間程度じゃないかな?
さっきの数千年ってのは体と知恵、いっぺんに変わったら植物状態に、ってパターンみたいだし」
「…リスクは覚悟で、って事ですね?」
「うん、全てに於いて因果はあるからね。あとひと踏ん張り、頑張って!」
日向子はカズヤに改めて礼を言って伸域から去っていった
…スッ…
「ピポ。オカエリナサイ」
デバちゃんは日向子の気配を察知して出迎える
《主、また神の所に行ってたんだろ?何かあったのか?》
キメは心配そうに訊ねる
「大丈夫、北半球を救う為にもう1つやらなきゃいけない事があってね、ああ、また意識が飛ぶかも知れないから体、見ててね」
2人に後の事をお願いすると日向子は寝室に入り再び意識を手放したのであった




