37 大会の再開
ー2日後ー
「大変お待たせしました、本日より大会を再開します‼」
ワァァァァッ‼
会場と防護壁の補修が終わり武闘大会の再開が告げられた
「では準々決勝第1試合、居合いのエモン、鋼鉄の騎士マール‼」
「始めっ!」
マールとエモンは各々の間合いを取る
「ふんむっ‼」
ーブゥーン‼ー
マールは背中から大剣を抜く
エモン(居合い)に勝つには彼の間合いに入らない事が第一条件だ
だが間合いに入らないと言う事は自分の間合いにもエモンがいない、と言う事に等しい
だとすればどう勝つ?
マールの出した答えがコレだった
ーガチン‼…ジャラララ…ー
マールの大剣は柄を捻るとまるで蛇腹の様に伸び無数の刃となる
1枚1枚の刃を留めるのは一条の鎖だった
「うぉりゃあっ!」
マールが雄叫びを上げ柄を振るとそれに釣られて無数の刃が蛇の様にうねりながら弧を描く
ーブンッ‼ジャラララ‼ー
「エモンよ、我の間合いに入れるかな?」
マールは鞭の様にしなる蛇腹剣を振りながらエモンとの間合いを詰めていく
「…シッ!」
ーキンッ‼バラララ…ー
それまで無言でマールの攻撃を躱していたエモンが短く息を吐くと刀を一閃する
エモンは蛇腹剣の繋ぎ目を正確に斬りその連結を解いてしまったのだ
「な…バカなっ⁉」
「居合い奥義鼻緒斬り。」
マールは蛇腹剣を断ち斬られた反動とその動揺で尻餅をついてしまう
ーチンッ…ー
マールが次に見たモノは甲冑の首筋、隙間に当てられたエモンの刀だった
「…参った…」
「勝者、エモン!」
ウォォォォォッ!
会場は剣と刀の闘いに興奮して地鳴りの様な歓声に包まれた
「次‼準々決勝第2試合、戦鎚の覇者ゴメス、投剣のミジン!」
「始めっ!」
ーシャッ‼シャッ‼…キンッ、キキンッ‼ー
「フハハッ‼そんなモノか効くか!」
ミジンとゴメスの相性は最悪に近かった
ミジンの放つ短剣はゴメスの重装甲に阻まれ高い金属音と共にパラパラと床に落ちる
「クソッ‼敗けだ‼降参するよ‼」
「勝者ゴメス!」
ブゥーーーーーッ‼
先程の闘いで興奮していた観客は余りにも呆気ないゴメス戦を見て一斉にブーイングを浴びせる
「ええぃっ!勝ちは勝ちだ!文句があるのかっ!」
ゴメスは観客を恫喝する様に吠え退場していく
「なぁ、なんかゴメスの対戦だけおかしくねぇか?前回も相手の武器と言い有利過ぎるだろ」
「そう言えば緒戦が弓で次が投げナイフだもんな…あの装甲じゃ弾かれちまう」
「次の相手はエモンか…刀が通用するのか?あの装甲に」
「…何か出来レース臭くなって来たな…」
観客の間ではこんな噂がちらほら聞こえだしていたのだ
「準々決勝第3試合、日向子、音速の貴公子ビューア!」
ウォォォォォッ!日向子ちゃーん!
ゴメスのイカサマ臭い試合に盛り下がった会場も日向子の登場により一変した
腐っていた会場内の野郎共が心踊る程の破壊力、それを日向子のビキニアーマーは保有していたのだ
「日向子ぉー‼俺の前でそのビキニを脱いでくれぇ~っ‼」
「何だと‼日向子が惚れてんのは俺だっ‼」
「…ブラになりたいっ⁉」
観客の中で一部暴動が起こった為一時試合の進行がストップする程観客の目は日向子に注がれていた
「…恥ずかしい…(///」
日向子は恥ずかしそうに身を捩ったがそれが余計に野郎共の興奮を煽ってしまったのだ
ー数十分後ー
「…えー、一部騒乱が起こり中断しましたが試合を再開します」
進行役が宣言するとビューアが高らかに言い放つ
「男性諸君‼残念だが日向子に勝って彼女のハートを射止めるのはこの私、音速の貴公子ビューアだっ!」
「何だと‼てめぇ!」
「貴様なんぞ日向子ちゃんに滅多打ちにされて消えちまえっ‼」
「最後に揉む(?)のは俺だー⁉」
ビューアの挑発で再び暴動が起こりそうになるが見かねた審判が両者に厳重注意をする
「ビューア殿!観客を刺激する言動を続けるなら失格処分にする!観客側もこれ以上騒動を起こすなら退去処分にするぞ!」
「何だと‼日向子ちゃんが見られねぇんじゃ楽しみが減っちまうぜ‼」
「む、失格になっては参加した意味がない。…やむを得ないな」
ビューアも観客も冷静になり行動を慎む事を約束した
「…ってか私は置き去りだったのね」
日向子も男性達の身勝手な言動に呆れていたがそもそもの原因が日向子の格好にある事を本人は気付いていない
「おほん!では…始めっ!」
こうして日向子対ビューアの闘いが始まったのだった




