368 Road to God part6
言葉は悪いが色ボケ発言を繰り返す大神様と上位の存在に遠慮なくツッコむカズヤのやり取りに日向子はこれまでになく動揺していた
そんな状況を察したのか大神様は軽く咳払いをすると手遅れ感のある威厳を前面に纏わせ始めて日向子に語りかけた
「カズヤから事情は聞いておる。ヒナちゃんや、この短期間で神格を得るなど苦労も多かったじゃろ?その努力は報われ晴れて神の1柱として認めるぞい」
「ありがとうございます」
「これからの事はこのカズヤによーっく教わって世界を見守っていくのじゃぞ?」
「はい、至らない部分もあるかと思いますが…宜しくご教授下さい」
「あはは、そんなに畏まらなくても大丈夫だよ。俺なんかが神様やれる位だからね」
「あ…はい…」
「とりあえず日向子ちゃんは昇格して神になったんだけどお付きの魔物とかはどうする?」
「魔物…キメちゃんとかですか?」
「うん。あのキマイラは本来なら魔物だから使徒としては仕えさせる事は出来ないんだけど
どうやら日向子ちゃんの細胞も取り込んでるから日向子ちゃんが望めば使徒として昇格出来る可能性があるんだよね」
「じゃあ…本人に確認を取ってみます」
「うん、それが良いね。それとあのデバインシステム…デバちゃんだっけ?
あれは具現化能力を持っていない日向子ちゃんには相性の良い機械だから「作喪神」みたいな扱いで使徒になれるんだけど
それも合わせて本人に確認しておいてね」
「分かりました」
「おや?ヒナちゃんはキマイラの細胞を取り込んでおるのじゃな?」
カズヤとの会話に大神様が入って来た
「あ、そうです。キマイラのキメちゃんとシルグ…竜族の細胞、そしてバンパイア族の細胞を取り込んだ事によって九死に一生を…」
「なるほどのぅ。カズヤもそうだが日本から転生したヤツは何と言うか…変わったヤツばかりじゃの」
「…大神様、そんな無駄話はもう少し落ち着いてからでも良いでしょ?
全く…ちょっとタイプの娘だからってちょっかいが過ぎますよ?」
スッパーーーンッ‼
「いちちっ⁉万物の創造主であるワシをスリッパで叩くとか…いずれ天罰が下るぞい?」
「あー、そんなの良いですから。とにかく日向子ちゃんには未だに救わなくてはならない世界が待ってるんですからね?
とにかく神格を更に上げて力をつけさせないと」
「むぅ…ワシ、ちょっとスネちゃうぞ?」
急にしゃがんで地面にのの字を書こうとした大神様にカズヤはスリッパを構える
「ちょっ⁉冗談じゃて‼本当にカズヤはウィットに富んだ会話も出来んのぅ」
「ん千兆歳のジジイがスネるとかをウィットとは言わないんですよ?」
「…年齢はヒミツだったのにのぅ…ヒナちゃんに嫌われるじゃろうが…」
「あはは…」
「さ、日向子ちゃんが完全に引く前に大神様は他の世界の視察にでも出掛けて下さいね
僕は少しアドバイスしたらリリスの所に戻りますから」
「リリス?」
「あぁ、僕の奥さん」
「結婚してるんですか?羨ましいなぁ」
「リリスは僕を神様にしてくれた女神様だよ。他にも結婚はしてたんだけど…死なれちゃってね」
「それは…寿命で?」
「うん。日向子ちゃんも今後は大切な人達と別れを重ねる事になるよ
それはきちんと心の整理をつけておいてね」
「はい…」
「まぁそれは追々整理をつければ良いさ。じゃあ大神様、日向子ちゃんを送って来ますね」
「ふむ、ヒナちゃん。またな」
「あ、はい!大神様」
カズヤは日向子を伴って南半球に転移した
…スッ…
《おわぁっ⁉》「ピポポポッ⁉」
睡眠の必要がないキメとデバちゃんが寛いでいる居間に突然男を連れた日向子が転移してきた
「あー、驚かせちゃってごめんね?」
機械であるデバちゃんですらカズヤという存在の神威に混乱し生物であるキメは更にカチンコチンに固まってしまっていた
〈日向子‼どうしたのだ‼…!?〉
居間の異変に気付いた始祖とラクルが飛び込んで来たのは良いがやはり神であるカズヤの姿を認めた途端石化した様に固まってしまう
「あ…ごめんごめん。日向子ちゃんが全然普通だったから神威を抑えるの忘れてたよ」
そういうとカズヤは自らの神威を抑えたようだ
《…ハァハァ…い、息が出来なかった》
「ピポピポ…システムガ正常化シマシタ…チェックヲ開始シマス。」
〈もしや…神なのか?〉
混乱する最中、流石年の功というか始祖が素早く立ち直りカズヤに質問した
「うん。初めまして、この世界のバンパイアの始祖さん」
〈…おぉ…余も長き時を生きてそれなりに力を得たつもりだったが…井の中の蛙だったな…〉
「あはは…そんな事はないよ。始祖さんは年上だしね。それと…君が日向子ちゃんの許嫁さんかな?」
〈は、はい。バンパイア族のラクルと申します〉
「なるほどね、これからも日向子ちゃんを支えてあげてね」
〈勿体無いお言葉、心に刻みます…〉
「っていうかそんな仰々しくしないでよ?お互い疲れちゃうだろ?」
カズヤは重苦しい雰囲気が苦手な様で皆に気楽に接する様に求める
まぁ突然顕現した神にフランクにしろ、と言われて出来る奴はそうそういないのだが
「まぁそれは追々慣れて貰うとして…皆さんにお知らせがあります
日向子ちゃんが一定の信心を得た事で「神見習い」迄昇格しました」
おお~‼と皆の間から漏れる歓声を聞いて日向子が照れている
「日向子ちゃんが神に昇格した事で顕能とかも増えていくと思うんだけど一応神には御使いというか使徒というか…要はお手伝いさんが必要になるんだよ
そこで御使い候補を選んで欲しいって事なんだけど」
カズヤはキメとデバちゃんに視線を移して問う
「御使い、やってみる?」
《主の側で仕えるのは当然です》
「ピポ。主様ヘノ忠誠ヲ誓イマス」
2人は躊躇わずにそう答える
「そう、良かったよ。じゃあとりあえずは2人を御使い認定しておくね
御使いはある程度なら増減可能だから日向子ちゃん、その時は相談して」
「あ、はい」
「それと…ラクル君、日向子ちゃんを幸せにしてあげてね」
〈は、ははっ‼〉
一通り言いたい事を言うとカズヤは神域に転移…しないでこの世界を少し観光してから帰るそうだ
「天上から見てるのと地上で見るのとでは迫力が違うからね♪」
等と言いつつカズヤは何処かに転移して行ってしまったのだった




