359 デバちゃん大活躍
ピポ、ピポポポ…
日向子達が食事を終え解析を行っているフロアに移動するとデバちゃん(デバインシステム)がアースベイカー製の兵器に繋がれたケーブルから技術情報を抜き出している最中だった
「主様」
日向子の姿に気付いたデバちゃんが声をかける
「あ、邪魔しちゃったかな?」
「ピポ、大丈夫デス。思考ヲ並列化シテイマスノデ会話モ可能デス。」
「あ、そうなんだ?」
思考の並列化って…要は同時に幾つもの事が考えられるって事よね?…何か羨ましい…
そんな事を考えつつ応えると日向子は早速本題へと話題を変える
「デバちゃんはアースベイカー国の歴史とかって記憶させられているの?」
「ピポポ。ハイ、ワタシノ媒体ニハ建国前後カラ今マデノ全テノ歴史ガ記憶サレテイマス。デスガ…ワタシハスタンドアローン状態デ基地内ニ待機シテイタノデ最後ニ創造主ガインプットシテクレタ数百年以降カラノ新規情報ハ入手シテオリマセン」
…なるほど。
恐らくアースベイカー国の人間が滅亡してからは初期設定に従って兵器のメンテナンスや地下基地の維持だけに従事していたのだろう
今回は新しい記憶は関係ない
「新しいのは良いの。聞きたいんだけどアースベイカー国の国民って普通の人だったの?」
「ピポ。質問ノ意味ガ分カリマセン」
「あ、そうね。えっと…例えば開発された技術で精神だけを切り離して存在出来る方法とかを開発していたり不老不死になってたりとか?」
「ピポ。ワタシノデータベースニハソノ記憶ハ入力サレテオリマセン。国民ハ普通ノ人類デ寿命モ現在ノ人類ト然程差異ハアリマセン」
「そっか、じゃあドラールの方はどうだったのかな?」
「ピポポ。同ジデス」
うーん…そうなるとあの不思議な声は両国の関係者ではないって事なのかな…?
日向子はもう1つ疑問に思っている事を訊ねてみる
「ドラールの兵器達の動力源って魔物を使っているけどそれはアースベイカーでは使われなかったのは何故?」
「ピポ。ソレハ明確ナ理由ガアリマス。敵国デハ初期ニ強力ナ魔導師ガ複数存在シテオリ人材ヲ保有シテオラズ兵器開発ヲ進メタ我ガ国ト互角ノ争イヲシテオリマシタ。
年月ガ経過スルト共ニ魔導師達ノ力ガ弱マリソレヲ危惧シタ敵国ハ兵器開発ヲ始メ遅レタ分ヲ動力源ニ魔物ヲ核トシタ魔導核ヲ開発スル事デ優位性ヲ保トウトシタノデス」
「魔導核で優位性を?」
「ピポ。ハイ、我ガ国ノ全テノ兵器ハ動力源ニ充填可能ナ魔結晶ヲ搭載シテオリマス。コレハ効率的・出力的ニハ敵国ノ魔導核ヨリ優レルモノノコマメな充填ト定期的ナメンテナンスガ必要トナリソノ為ノ施設ガ必須トナリマス。
魔導核ハソノ点起動サセレバコア内デ自己完結シテオリ補充モメンテナンスモホボ必要ガアリマセン」
「魔導核って永久機関に近いって事ね?」
「ハイ。我ガ国デモ模倣シヨウト試行錯誤シマシタガ魔導核ノ開発ニハ膨大ナ魔素ト魔法ノ禁忌ヲ犯サネバナラズ優秀ナ魔導師ヲ保有シテイナカッタ我ガ国デハ開発不能デシタ」
「なるほどねぇ…」
最初から魔法に頼れず近代兵器を開発していたアースベイカー、初めは魔法に頼っていたが衰退の一途を辿り途中から対抗する為に禁忌を犯してまでも兵器開発を進めたドラール
無理をしたのはドラールで禁忌を犯した分何か暴走する危険性を孕んでいたのかも知れない
「ピポ。主様ハ何カゴ懸念デモオ持チナノデスカ?」
うん。此処はデバちゃんにも話して何かヒントを貰おう
「実はね…」
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「ナルホド。敵国ノ兵器ヲ解析シヨウトシタラ謎ノ声ニ警告サレテシマッタ、ソウ言ウ事デスネ?」
「うん。どう思う?」
「ピポポ。…可能性トシテハ禁忌ヲ犯シタ事ニヨリ上位ノ存在カラ危険視サレテイタ。
ソレヲ主様ガ解キ明カソウトシタ為警告ヲ発シタトイウ事カモ知レマセン」
「…一理あるかもね」
「他ニモ可能性ハ幾ツカ想定サレマスガ主様ノ精神ニ直接作用スル程ノ存在トナルト殆ド否定サレマス」
「確率論みたいになっちゃったけど確かに言われてみればドラールにそんな力があったのならデバちゃん達は相当苦戦してたろうしね…」
「ピポ。主様ノ精神ニ直接作用スル技術ヲ保有シテイタト仮定スレバ我ガ国ハ既ニ敗北ヲ喫シテイタト思ワレマス」
存在するどの生物よりも上位の存在…神様とか?
まさか、ね?そんな存在がいるのならもう少し世の中良くなってる筈よね??
日向子は腕ヲ組んで考えに耽る
「ピポ。主様ハ現在上位ノ存在ヲ「神」ト仮定シテ否定シタ様ニ思エマスガ「神」ハ実在シテオリマスヨ?」
「あっそう。………えっっ???」
神の存在を真っ先に否定してもおかしくない科学の結晶、デバインシステム(デバちゃん)からまさかの神仏肯定発言に日向子は面食らった
「古ヨリ神ノ存在ハ認メラレテオリ実際史実ニモ時折登場シテオリマス。我ガ国ノ技術モ数千年前ニ降臨シタ神ニヨリ伝授サレタトノ事デス。」
「え?って言う事はデバちゃん達を創造したのは厳密に言うと神様がって事になるの?」
「ピポ。我ガ国ノ技術水準カラ考察スルト超越シタ存在ノ介入ガナイト説明ガツカナイノデ主様ノゴ考察ハ正シイト思ワレマス」
神が設計したアースベイカーの兵器、禁忌を犯して開発されたドラールの兵器…どうやらこの辺に答えがありそうな気がする
「ありがとう、デバちゃん!」
「ピポ。オ役ニ立テテ何ヨリデス」
そっか、良く考えたら魔法や魔物なんてファンタジー要素が存在する世界だもんね、神様だって普通に存在する可能性はあるのか
だとしたら何でドラールの兵器を解析してはならないと警告されたのか、未だ謎は多いままだった




