345 終結への布石
初戦を終え、拿捕した兵器の調査を開始して直ぐにキメから緊急通報が入る
《主‼敵の大軍が此方に向けて進行中だぞ‼》
「あー、やっぱり先行部隊だったみたいね」
〈そうだな、次はどうする?〉
「うーん…さっきと同じパターンで良いんじゃないかしら?どうしてかは分からないけど司令塔が潰れると自律行動取れなくなるみたいだし数の問題じゃないよね?」
〈うむ、恐らく兵器毎に自律行動を許すと制御が利かなくなるのであろうが…頭を潰してしまえば脅威にもならぬな〉
万の兵器よりも千の兵の方が余程脅威になる
こんな事が言えるのは日向子と始祖の戦闘力が他を圧倒しているからに過ぎないのだが実際建物内で解析作業を進める識者達は2人の力を信じ何の恐怖も感じなくなっていた
《敵が正面に布陣し始めたぞ‼》
キメの警告に2人は早速作戦を練る
〈どうする?〉
「さっきと同じで良いんじゃないかなぁ?新種は数体確保の他は排除で」
〈そうだな。では遠距離攻撃をさせぬ様に一気に中央突破といくか〉
キメは2人のやり取りを聞いて流石に無謀なのでは?と冷や汗を流すが当の本人達は全く普段と変わらない
「キメちゃんとみんなは引き続きこの建物を防御しておいてね、多分一時間掛からないから」
〈…まさか…〉
〈いやいや…?〉
日向子の言葉尻にあった「一時間」という言葉に識者達も疑いの目を向けるが始祖と日向子のこれまでの戦闘を見ていると(もしかしたら…)という空気も流れている
「じゃあ行ってきまーす‼」
明るい日向子の言葉に若干の悲壮感を漂わせていた識者達は救われた様に見送った
ー1時間後ー
〈…信じられん〉
〈本気で1時間掛からす戦闘を終わらせて来るとは…〉
識者達は目の前に積まれた兵器を眺めながら呆れている
今回の戦闘で拿捕した機体は30種に及ぶ
しかも司令塔らしき機体は今までの兵器と違い思考回路が備わっている様で内部構造の緻密さにピエール達も舌を巻いている
〈これらを解析して民間に還元などしたらあらゆる分野で革命が巻き起こってしまいそうだ…〉
兵器としての還元は考えていなくともその技術の中には民間に転用出来るモノが多分に含まれている
だがこれらを全て還元してしまえば生活が一気に変化してしまい失業者も相当生まれると判断したピエールであった
拿捕した機体の解析には少なくとも10年以上は掛かるとの報告に日向子はその全てをバンパイア族の識者達に丸投げした
一応他戦力の存在も考慮して司令塔と思われる機体を最優先に解析する事を決定した上で
元々の問題であるドラール王国の兵器問題に取り組む事にした
〈…やはり外部から何らかの工作が行われているな〉
ドラール王国にあった兵器工場や兵器は元々自律行動を取れる状態にはあったのだが
一部、例えば地震発生兵器等は誰かが操作して武装化・行動をプログラミングし直された形跡が見受けられた
「でもドラール王国って鎖国状態で何処からも干渉されていなかったんですよね?」
今回スラストア共和国、アイン王に要請しオブザーバーとして信頼の置けるアーチ王を召喚して貰っていた日向子は早速南半球事情をアーチ王に訊ねる
「ああ、古くからドラールとは国交はおろか住民に至る迄交流を禁じられていた
…まさかとうの昔に滅んで機械しか活動していないとは思わなかったがな」
全ての交流を断っていた筈のドラール王国、その破壊兵器が何故今活動を始めたのかが問題なのだ
〈日向子様‼〉
そんな会話をしていると管制室を調査していた識者が2人の会話に割り込んで来た
「そんなに慌ててどうしたの?」
〈そ、それが…今制御盤の解析を行っていた所何者かが操作した形跡を映した映像を発見致しました‼〉
「えっ⁉監視カメラとか付いてたの?ならそれで犯人丸わかりじゃない‼」
「…カメラ?」
アイン王は聞き慣れない言葉に首を傾げていたので簡単に説明する
「カメラってのはその場の風景とかを映像で記録出来る機械よ」
「…映像とは何だ?」
「だぁ~っ‼もうっ‼見せた方が早いわ‼早速見せてくれる?」
堂々巡りしそうな質問責めに日向子は早々に見切りをつけて報告をしに来た識者に案内を頼んだ
。。。
「!!??…これは…」
管制室の大画面に映し出された映像にアーチ王は腰を抜かさんばかりの衝撃を受ける
「もしかして…知り合いなの?」
日向子はそんなアーチ王の様子を見て知人である可能性を示唆する
「あぁ…こいつは…いや、この人は先王の第8王子、アハト王子…だった方だ…」
アーチ王は信じられない、と言った表情で画面を見つめている
「「だった」?」
日向子はアーチ王の言い回しが気になって更に詳しく説明を求める
「アハト王子…いや、アハト叔父は15年前スラストア共和国の王位継承争いに負け失踪、その後ゴスピア国に亡命途中で死亡した筈なのだ…」
突然浮上した過去の政争話に一気にきな臭さが増した管制室であった




